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【#1-5】 エネルギーってなんやねん

この記事では、エネルギーがどのようにして作られるのか。について説明していこうと思います。

「お米食べて、力つけやー!」

これってどういうことか、少し専門用語も交えて、でもできるだけわかりやすく説明していこうと思います。ちょっと難しいですが、頑張ってみてください!

ちなみに、某小さくなった名探偵漫画でなぜか頻出するシアン化カリウム(青酸カリ)は、電子伝達系を阻害する毒物です。ある話で、某関西弁の探偵がドヤ顔で説明していますが、今回の内容を理解すれば、そういうことかと納得できるはずです。(どの話のことか分かった人、話合いそうですね。)


どうしても難しい人は、2. ATPを作り出すまで、を把握しておくだけでもいいかもしれません。


1. エネルギーの正体

エネルギー、エネルギーって言うけどなんか何?パワー?

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Fig.1 なかやまきんに君

                  (なかやまきんに君Twitterより引用)

正体はなんでしょう。。

結論から言うと、アデノシン三リン酸 (ATP; Adenosine Triphosphate)がエネルギーの正体です。ATP (エーティーピーと読みます) は三リン酸と言う名前だけあって、三つのリン酸がくっついた分子です。このリン酸の結合が切れる時に生じる力によって、生き物、もっと言えば細胞、は活動しています。つまり、我々が食事をするのも、息をしているのも、全てはこのATPを作り出すために行なっている作業です。

2. ATPを作り出すまで

ではざっくり概要を見てみましょう。

ATPを作り出す元になるのは他でもなく、食事。です。
具体的に言えば、食事によって摂取するグルコース (ブドウ糖)や脂質です。
これら物質からATPを作り出すことを広義に代謝と言います。

脂質代謝に関しては、脂質を扱う章で取り上げることとし(ダイエットには重要ですよね)、本記事では、グルコースからの代謝について扱います。簡単に言えば、お米からエネルギー(ATP)を作るまで。と思ってください。

これまでの章で、お米はグルコースでできていることは述べましたが、
お米(などの炭水化物)を食べる理由は、美味しいから。プラス、細胞へのグルコースの調達です。エネルギー(ATP)を作る出発点は、このグルコースになります。そして、その反応は、


①解糖系
②クエン酸回路
③電子伝達系

と言う、3つのstepで構成されています。

ヒトの、一つの細胞の中には数多くのミトコンドリアと言う細胞小器官が存在します。重要なポイントは、ミトコンドリアでエネルギー(ATP)は作られる。と言うことです。

また、ミトコンドリアは二重の膜でできた細胞小器官で、内側の膜を内膜、外側の膜を外膜、内膜と外膜の間の隙間を、膜間腔と言います。

反応の流れとしては、①解糖系で、グルコースをミトコンドリアに持っていくために適した形にかえ、ミトコンドリア内の②クエン酸回路で材料調達し、同じくミトコンドリア内の③電子伝達系で、ATPを生み出します。

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Table.1 ATP合成過程

3. 解糖系

では第一ステップ、解糖系を解説します。

まず、解糖系の反応は、ミトコンドリア、で行われるのでした。(細胞質と言います)

そこではどのような反応が起こっているかというと、

1個のグルコースから、2個のピルビン酸を作っています。
この時、酸素があれば(好気条件と言います)ピルビン酸はミトコンドリア内へと運ばれ、②のクエン酸回路で使われます。

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Fig.2 解糖系

※補足


酸素が少ない(嫌気条件と言います)と、ピルビン酸は発酵に回されます。
発酵には、図中a:乳酸発酵や図中b:アルコール発酵などがあります。
乳酸菌による乳酸発酵を利用したのがヨーグルトです。また酵母菌による、アルコール発酵ではアルコールが作られます。お酒造りがまさにこれで、ビールの泡はこの時に生じる二酸化炭素の泡なんですねー!

話は少しそれましたが、ヒトはしっかり酸素を吸って生きているので、グルコースからピルビン酸を作り、きっちり②クエン酸回路に回しています。

もっとも、高強度の無酸素運動(短距離走など)では、単純な①の反応をたくさん繰り返し、早くエネルギーを得ようとするため、処理しきれず乳酸が生成することがあります。(乳酸溜まるわーって言いますよね。この場合、乳酸菌というより、ピルビン酸と乳酸では乳酸の方が安定に存在できる物質なので生成するみたいです。)

解糖系はこんな感じです。いかがですか、難しいですよねー。でもこれでもだいぶ噛み砕いてる方なんです。ご了承ください。ガチで細かく知りたい人は、生化学の教科書あたりをご覧になるといいかと思います。。。

4. クエン酸回路

第二ステップのクエン酸回路では、解糖系で送られてきたピルビン酸が出発になります。

ミトコンドリア内膜の内側のことをマトリクスと言います。

ピルビン酸はマトリクスまで送られ、まず、アセチルCoAと呼ばれる物質に変化します。このアセチルCoAは非常に重要な物質で、脂質代謝においても最終的にアセチルCoAの状態まで脂質を分解することで、このクエン酸回路に取り入れてエネルギーとして使うことになります。

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Fig.3 クエン酸回路

アセチルCoAはクエン酸回路で姿を変えながら反応します。
アセチルCoA→クエン酸(クエン酸回路の名前の由来です。)→α-ケトグルタル酸→コハク酸→フマル酸→リンゴ酸→オキサロ酢酸→クエン酸…(中略)というふうに姿を変えながら再びクエン酸に戻ってきます。(だから回路って言うんです。)

じゃあ、こんなにぐるぐる回って姿を変えてまた戻ってくるなら一体何をしているんだという疑問が生じますよね。。
このとき、クエン酸回路を回しながら、水素イオン(H+)の調達をしています!!これはこの後の電子伝達系(水素イオンを使うので水素伝達系とも言います。)で使われることとなります。
前述したように、ここでは電子伝達系のための材料調達をしているんですね。

ここまでを少し整理します。
解糖系ではグルコースをピルビン酸という物質に変えました。(ミトコンドリアに持っていくのに適した形に変える)
クエン酸回路では解糖系から来た物質が、形を変えながら水素イオンを調達しました。
そう、全てはこの水素イオンの調達が鍵になります。


5. 電子伝達系

いよいよ、ATPを作っていきましょう。
クエン酸回路で調達したものは水素でした。調達された水素イオンは一度、膜間腔(Fig.3参照)に蓄積されます

※ここは覚えなくてもいいですが、水素イオンが膜間腔にためられる間、
電子(e-)が内膜上に存在するシトクロム酵素(群)というタンパク質の間を伝達します。(電子伝達とはこれのことです)この駆動力で膜間腔に水素イオンをためます。

膜間腔に貯められた水素イオンは、内膜上にあるATP合成酵素を通ってマトリクス側に戻ってきます。このとき、ADP(アデノシン二リン酸)という物質にリンが1つくっつけられて、ATPがつくられます。(これを酸化的リン酸化と言います。)
ではマトリクスに戻ってきた水素イオンはどうなるでしょうか。

私たちはATPを作るために、酸素を吸っていると述べました。
このとき、吸った酸素は、放出された水素と出逢い、水(H2O)が生成されます。
逆に言えば、酸素を吸って水を作る反応をすすめることで、それ以前の反応を進められることになり、ATP作りが可能となります。息しないと死にますよね、そういうことです。

Fig.4 電子伝達系とATPの合成

いかがでしたかー!ちょっとややこしいかもしれませんが、ざっくりエネルギーの説明をしてきました。何度も読み返してゆるりと理解してみてください!

※補足


今回のATP合成は糖質からエネルギーを作る反応でした。
みなさんも聞いたことがあるであろう植物の光合成は、その逆の反応です。
植物は光というエネルギーからCO2とATPを使って糖質を作ります。稲で言えばデンプン(お米)という糖質がつくられます。

この章までで、DNAに刻まれた遺伝子の情報からタンパク質を作り(RNAのお話は端折っています。いつかまた詳しくお話しできるといいなーと。)、それを使ってエネルギーを生み出すところまで流れを説明してきました。

次の章では、ダイエットやボディメイクの天敵、贅肉についてお話しします。脂肪を燃やしてエネルギーを取り出すとはどういうことなのか、この章で学んだことをが活きてくる内容になっていますので、お楽しみに。

ではでは。


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