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シロクマ文芸部参加

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シロクマ文芸部参加のショートストーリーです。
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2023年4月の記事一覧

ミィとのレリビーな日常 :  「凍った星をグラスに」

ミィとのレリビーな日常 : 「凍った星をグラスに」

「凍った星をグラスに。」入れる。
今日の凍った星は、オレンジジュースで作ったから、オレンジ色だ。
アップルジュースにオレンジ色の氷。

ミィは、グラスに手を突っ込んで、オレンジ色の星を取り出した。
袖口はジュースで濡れている。

「コラ‼︎
そんなことしちゃダメでしょ!」

「だって、おほしさま、おれんじいろだよ。」

ビックリして声が大きくなったけど、そんな仕草が本当は可愛くて仕方ない。
叱られ

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#「透明な手紙の香り」

#「透明な手紙の香り」

「透明な手紙の香り」を、私は確かに嗅いだ。

それはフィレンツェのレターセットを売る店の、瓶に入ったターコイズブルーのインクの匂いだ。

ターコイズブルーのインクでガラスのペンを使って、いつも手紙を書いていた。

フィレンツェの陶器に憧れ、陶芸を勉強するため、会社を辞めてフィレンツェにいた。

自分で決めた事なのに、言葉もままならず、心細くなったりして、行ったばかりの時は一人でよく泣いたものだ。

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短編 : とぉさんと かぁさんと ボクの本

短編 : とぉさんと かぁさんと ボクの本

「一冊の本を埋める」のは、あっという間だった。

だってボクはまだ字が書けなかったから、ミミズののたくったのや、ほとんど落書きの絵だったから、直ぐに次の一冊に移って行った。

ボクがこの世に生まれて、最初の記憶。
とぉさんは、呼んでも返事をしなかった。
かぁさんに、
「とぉさん、返事してくれないよ。」
って言ったら、
「もう、返事は出来ないんだよ。でも、手紙を書いたら返事をくれるから。」
って、言

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短編 : 一冊の本を埋める

短編 : 一冊の本を埋める

「一冊の本を埋める」
そんなの簡単だ…と、思ったけれど、さっぱり何も浮かばない。
毎日、仕事をして家に帰るだけの毎日に、書くことなど何もなかった。

朝の朝礼で、
「毎日、周囲を見渡して改善出来ることに気付いて下さい。気付いたことは一緒に話し合って行きましょう。」
と、毎日言うのだけれど、気付いたことを報告すると必ず叩かれていて、ホントは黙って仕事しろって事だと気付き、ただ時間が過ぎるのを待つだけ

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