[読書]キッチン風見鶏

だいぶん前、色々あって、祈るような気持ちで娘の教科書を買いに神田の三省堂まで出掛けました。その際、出会った本です。
ちょっとばかり辛い毎日だった私には、とても優しいお話でした。

舞台は神戸とおぼしき街のレストランです。主人公はウェイターをしながら漫画家を目指す翔平くん。レストランには、オーナーシェフの絵里さん、その母の祐子さんという、心正しく、働き者でおそらく二人とも女優さんのようにきれいな母娘がいます。それから、絵里さんの気になる男性、手島さんとその息子歩くん、翔平くんの運命の人寿々ちゃん。以上が主な登場人物で、ゆったりと人生の歯車が回っていきます。

レストランが舞台とあって、お店の食事はどれも美味しそう。再現レシビがあったら、お休みの日に試してみたい位にそそります。
なにしろ、章立てもお料理の名前。

第一章 和牛の熟成肉
第二章 なんでもぎょうざ
第三章 国産レモンのクリームパスタ
第四章 約束のカレー

そして温かく、主人公たちの未来を後押しするのは二人の母。私はまだ子供に手こずる現役母ですが、子供たちが大人になった頃には、こんな素敵な大人に近付いていたいです。

手島さんのお母さんが、手島さんと亡くなった妹さんの言葉を語る場面。

「人生に『正解』なんてないんだよ。自分で選んだ道を自分の努力で『正解』にするだけ」

そして絵里さんの母祐子さんは、余命宣告を受け、きちんと娘に伝えます。

「そのなかでも、わたしのいちばんの幸せは、やっぱり絵里が生まれてきてくれたこと」

勇気の湧いてくるお話です。

☆☆☆
著者 森沢明夫
刊行 角川春樹事務所
刊行年 2018年
http://www.kadokawaharuki.co.jp/book/detail/detail.php?no=4679

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