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有文舎だより#0 「有文舎だより」を発行しました

「有文舎だより」は、有松遼一の活動情報をまとめた紙の通信です。
講演の時や、名刺がわりに紙の制作物として配っていますが、ここでは、そのデータと掲載エッセイを公開しています。


有文舎とは…

有文舎は、
能楽師・有松遼一が案内人をつとめる、「古典を味わい、文化で心を耕す学び舎」です。
国文学者としての専門性と、生きた古典に日々接する舞台役者としての経験、どちらもあわせもった解説が人気です。
オンライン講座(和歌、古典作品、小謡を鑑賞する講座があります)
謡(うたい)のお稽古
を楽しむことができます。
https://yubunsha.arimatsu-noh.com/

有松遼一エッセイ#0 
"0のはじまり、1のはじまり"

 有文舎から通信を出すことになった。

 あるジャズピアニストの方と知り合ったとき、一色刷りの、公演予定がダダダッと書いてあるDMを頂いて、静かな強い衝撃を食らった。手書きで、勢いがあって、思わず各々の手帳を開かせる力があった。

 いいな、真似しよう、と思った。せっかくなら有文舎のブランドコンセプトに沿って、デザインや、内容にもこだわって作ってみよう。

 そう思っているうち、やがて月日は流れ、いよいよ億劫になり、「いつかやる」という透明で厳重な包みのその案件は、机のどこかに埋もれてしまった。

 みんな、いつかはやりたいと思っていることを、胸のうちに2、3は秘めていると思う。「0のはじまり」とも言えるだろうか。このキラキラした夢のような思いは、私たちの日々の生活に見えない力を与えてくれている。

 しかし、0には2を掛けても、100を掛けても、0以外の実体になることはない。土から芽を出し、増やし、広げていくのには、コペルニクス的でナイアガラ的な断絶がある。崖上の人は「大丈夫、早く上がってこい!」と言うかもしれないが、下からの切り立つ眺めは、なかなかのものなのだ。

 妻が、有文舎の通信をデザインしようか、とある日言い出した。こだわりのうるさい夫が、崖下でうろうろしているのを見かねたらしい。

 世間様の目にふれるものなので、有文舎ブランドとして、なにか貫くものを保ちたかった。妻という人は、突破力は人並みはずれたところがあるが、継続力に心配な点がある。

 でもそれも含めて、丸投げしてみることにした。おもちゃの片付けも、細かなところはともかくまずガサッと箱へ投げ入れろ、とか言うし。怒られるか。

 そしてこの通信が生まれた。これは「1のはじまり」。
 
 無限を感じる0もいい。だが1も、かけがえのない愛おしい数字だと思う。
 有文舎の、この小さな1のはじまりを温かく見守っていただければうれしい。よろしくお願いします。

有文舎だより
2024年9月発行分(PDF)

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