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【モンゴル南部】ドンドゴビライフ最終日

 今朝は9〜10時に出発すると言われて11時くらいかなぁと予想したけど、下手をすると10時くらいに起きてしまう可能性もあるから8時にアラームをかけた。

 起きたけど、周りはみんな爆睡。

 準備する必要のあるチンギスが最後に起きたので、結局は11時前に出発した。
 どうせ当たる予想だったなら、その通りに行動しておけば良かったと後悔。


 プーチェさんが買出しへ行くついでに町まで送ってくれて、奥さんと3人別の車でウランバートルへ。

装蹄するゴムシート。日本みたいに鉄を履く馬もいるけど、レースの時だけ(?)これを蹄に合わせて切り取って着ける馬もいるらしい



 私はこの時、ヤンジッドルマさん手配でチャーターした車に相乗りしているんだと思っていた。
 しかし、ウランバートルのマンションに着いたら運転してくれていた彼も部屋に上がって来る。

 奥さんと彼は私達を残してすぐに出て行ってしまったので、チンギスに「もしかして彼も親戚なの?」と尋ねたらそうだという返事。
 挨拶し損ねたと気を落としていると、チンギスは「自分もよく知らないからいいよ」と言う。

 そういう問題じゃないんだけどなぁー!



 チンギスは、というかもしかしたらモンゴルの人は?他人の家でも自分の家のように遠慮なく使う。
 またしても冷蔵庫や全ての戸棚を開けて食べ物を漁って残り1つになってるアイスを食べ、私には梅干しに見える辛いドライフルーツっぽい物をくれた。

ゴビで獲れる実らしい



 テーブルと床にたくさんの食べカスを散らかして、ソファに移ってでかいテレビでYouTubeを見ながらくつろいでいる。

窓のすぐ下にはサッカースタジアム、ビル群の向こうにはランドマークを臨む眺望

 高層マンションかつエレベーターにモニターがあった時点で高級マンションかなーという想像はしたが、やっぱり部屋も立派だったのでモンゴルの経済事情について質問してみた。 

 以前チンギスはプーチェさん一家を「田舎の億万長者」と評していたが、国内で一番儲けているのは金や銅などを掘る鉱業に携わる人達で、トラック輸送も盛んとのこと。
 その人々は他のお金持ちとは比較にならないほど裕福らしい。

 話を聞いたなんとなくな私の中のイメージだけど、調教師は日本でいう力士とか野球選手みたいな存在なのかな?

 「最高の調教師が雨や植物が豊かなトゥブ等でなく、なぜドンドゴビを選んで滞在しているのか」と尋ねたら、チンギスは「彼はその土地の出身だから、その土地から成果を出したいんだ」というような事を言っていた。
 だからお金は後からついてくる物で、彼らが求めるのは地元にもらたす名誉なのかなぁと思った。



 仕事を辞める前の私の収入についても話したが、ウランバートルで働く人達と比較し同情された笑

 ついでに荷物が多すぎてあまり手土産を持って来られなかった事を謝って、帰国したら残った貯金で贈り物をすると伝えた。
 私が低所得者である事実を信じるしかなくなった彼は、少し遠慮しているみたいだったけど…!



 ジーパンだけ替えがなかったから、シャワーして上半身のみ着替えて出て来たら「まだ臭いが残ってる!」と言って高そうな香水をたくさん噴射してきた。

 1人きりの過酷な修行をするつもりで来たから、自分がどう見られるかなんて気にかけず、装備は機能性に振り切って最小限で来たからなぁ…
 でも主にチンギスと旅する事になった今は、年頃の彼にとって隣にいる人間がダサイのは気になるよね。

 次に会う時は髪の長さも戻して、女性らしい服装で会いたいと思った。


 彼がシャワーを浴びている間に散らかってしまった部屋を掃除して、近くのショッピングモールへ夕食に出かけた。

初めてのショッピングモール!チンギスいわく「星5つ中1が付けられてるダメなモール」らしいけど
多くのチェーン店も入っている。市民の生活を身近に感じられて、旅行者の私は充分楽しかったけどなぁ
フードコートで夕食。ポテトとフライドチキンで800円くらい?

 久しぶりのサラダや食べ慣れた味に幸せを噛み締めていたら、唐突にチンギスが「調教師に僕の羊が殺されたんだ」と言い出した。
 どういう事か尋ねると、滞在中に出た丸焼きの羊は彼が昔拾った子羊が育った?ちょっと英語が細部まで理解しきれなかったけど、そういうようなことらしい。

 彼はジョークで済む嘘も冗談にならない嘘も平気で話すから今回もどちらかわからなかったけど、もし本当なら不安定な気持ちにもなるよね…

 それを私達が嬉しそうに食べていたから、とても不愉快になったんだと言われた。
 冷静に思い返せば彼が不機嫌になり始めたのはラクダの家を出てすぐで、羊は取ってつけたような理由だとは思ったが…


 たとえ嘘でも「僕の羊はあいつらの排泄物に変わってしまったんだ」とか過激で無益なこと言うから、せっかく日本から来ている大人として、大切な事は伝えておこうと思った。

 「それは違う!
殺された動物を食べる事で彼らの命は私達の血とか肉になって生き続ける事ができるし、食事を拒否すれば逆にその命が無駄になってしまう。
大人になって何を食卓に乗せるか自分で選べるようになったら、食肉を避ける事で殺される動物の命を減らす事に繋がるかもしれないけど…
私も訪問先のゲストとしてただ提供される物を食べるしかない今は、食事を残さず食べる事が大切な命を差し出してくれた家人と家畜への礼儀だと思ってる。
だから日本では、命を捧げてくれた彼らに敬意を表して食事をとる前に"いただきます"と言うんだよ」という話をした。

 どう思ったかわからないけど、彼は目の前のフライドチキンを食べながら何度か「いただきます」って呟いていた。



 食事が終わると「モンゴルのバブルティーを試してよ!」と繰り返す。
 その"バブルティー"とやら、説明を聞けばどう考えてもタピオカが入った飲み物だ。

 「日本でも一昔前に流行ってたくさん店舗あるからいいよ」って言ったのに、首都に戻ったから郊外では口にできない物が欲しいみたい。

美味しかったけど、やっぱりタピオカだった

 物価は出国前に想像してたより日本と変わらなかったけど、チンギスがバブルティーだと言って譲らなかったタピオカドリンクは500円前後で日本より安かったかも?


 ワルガキのチンギスは、行きたいと思ったらどこにでも侵入する。

 帰り道、ナーダムの準備に追われる会場にも勝手に入って行ったから一緒になって見学した。

またしても野良犬に残飯を食わせるチンギス

 見た事ない楽器とか華やかないろんなデール、たくさんの馬や人がいて、まだナーダムは始まっていないのにもう楽しい気持ちになった。


 真ん中の芝生にバブルティーことタピオカドリンクを飲みながら寝転んだ。

 郊外では毎日同じルーティーンで居る人も大体同じで、のんびりできるはずなのになんか気忙しかった。
 でも今は賑やかな首都の忙しい人に囲まれて、なぜかモンゴルへ来て一番ゆとりを感じている。

 寒くも暑くもないちょうど良い気温の中、郊外より狭い空を見ながら久しぶりに短くもゆっくりした時間を過ごせた。

 しかし私達はヤンジッドルマさんが待つ家に帰らねばならないし、その前にマンションでは奥さん=彼の叔母さんが待っている。
 本来の私なら待たせるのが申し訳ないから急いでしまうんだけど、モンゴルの人達と過ごしていたら、そんな事はあまり気にしなくて良いのかなーと思うようになって、満喫して帰る事にした。


 最近あまり私と居たがらなかったから、チンギスとこんなに長く一緒にいるのも久しぶりな気がした。


 チンギスは、公式クラブっぽい子達が使っている最中のサッカーグラウンドにも平気で忍び込む。

 やっと帰宅かなーと思ったら「あれヴィニシウスJr.じゃない!?」って誰か知らんけど、興奮してプライベートレッスンぽい事してる柵の中へ勝手に入って行った。 

 サッカー好きなチンギスは、転がってきたボールを蹴り返したらありがとうって言われてさらに大興奮。
 「彼がJr.かどうかわからないけど一緒に写真を撮って確かめたい」って言い出して、そろそろ本当に帰りたくなってきたのに譲らない。

 反面、私がチャンスを見つけて背中を押すのになかなか行かない。

 やっと決心がついたのか、グラウンドの端へ移動して彼のもとへ走って行った。

 結局は別人だったみたいだけど、とても良い人で一緒に練習するためにメッセージのやり取りもしてくれるっぽくて、チンギスは喜んでいた。

彼が背筋を伸ばして正座してる所、初めて見た



 奥さんの待つマンションへ戻ったら、チンギスは「こいつのせいで遅くなりました」みたいな事を言いながら私を前に押し出して後ろに隠れた。
 いつも、悪い事をしているという自覚はあったのか…


 モンゴルではタクシーをとめる時、手を上げず斜め下に降ろして合図するみたい。
 日本の自転車での手信号みたいだなーと思った。

 ヤンジッドルマさんの待つ家に着いたが運転手は「お釣りがない」と言い、チップ文化は基本的にはないと知りながらもそのまま渡した。
 高額紙幣じゃなく、ちょうど良く出したんだけど…珍しく笑顔でたくさん挨拶してくれるお兄さんだったから、チップになってもちょうど良かったかもしれない。


モンゴルのマンションはどこもドアが分厚い。防犯のため?

 ドアを開けると、今回も笑顔のヤンジッドルマさん。

 はじめは慣れなかった彼女の家も、今は戻って来るとすごく安心する。

 ただ「滞在はどうだった?」と聞かれても英語の語彙が少なくて、大体シンプルな同じような事しか言えないのがとても悔しい。

 チンギスはサッカーのコーチを見つけてご機嫌だったし、久しぶりに母親に会えた嬉しさもあって興奮が止まらない。
 私のiPhoneを奪って、玄関で彼女に「とりあえず入ろう」みたいに言われてもずっと写真を見せていた。

 が、奥に見知らぬ男性がいる。


 タクシーの中で彼女と電話で話した時、台湾の女性ライダーを空港へ迎えに行くとは聞いていたけど男性の話は出ていない。

 彼に気づいた私が先に挨拶へ向かうと、香港から観光に来たヤンジッドルマさんの友人だと言う。
 2日間ほど滞在するらしい。

 チンギスもやっと入ってきて彼と談笑していたが、ヤンジッドルマさんに「私は空港へ行って1時頃に帰るから、チンギスと彼がリビングで寝てね」っぽい事を言われたらテンションが地に落ちたようだ。
 彼の目の前で母親と言い争いを始めた。

 当然、彼は申し訳なさそうにしている。

 彼が「僕はソファでブランケットも使わず寝るから、君は布団で寝るのも嫌かな?」ってチンギスに尋ねてもチンギスは真顔。
 返事も母親に返して言い争いが続く。

 私も気まずいし、人の良さそうな彼も気の毒だ…

 結局、なぜか「空港に誰かついて行った方が良い。あなたが行って」みたいな事を言われ、彼は悲しそうな顔で空港へ連行されて行った。


 洗濯しながら寝る準備をしていたが、1時を過ぎても彼らが帰って来る様子はない。
 明日はモンゴルへ来て一番早い7:30の出発だというのに、チンギスも動画を見てまだ起きているみたい。

 そりゃあね、久しぶりに自宅へ帰ってきたんだからゆっくりしたいよね。
 彼は同行し続けたいと言ってくれるけど、その点も気になるんだよなぁ。

 長期にわたって不便な生活をする事になっているし、退屈な移動も多い。


 せめて少しでも彼がゆっくりできるように、彼が放置している洗濯物の下着以外、乾きにくそうな物を先に私が干しておいた。

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