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【紹介記事】深刻化する教員不足問題をどうすれば解決できるか/質の高い教師の確保のために

日々報じられる様々な媒体の教育関連情報から、今後教育業界への影響が高いと思われる内容について、それぞれの私見を述べます。

教育・学校・入試について関心がある方々にとって、考えるヒントとなりましたら幸いです。


🔽深刻化する教員不足問題をどうすれば解決できるか

▼【メディア掲載】4/9(火)文科省にて #教員不足をなくそう 緊急アクションとして記者会見を実施 多数のメディアに取り上げられました!(School Voice Project・4/12)

特定非営利活動法人 School Voice Projectは、2022 年に設立されました。
役員は教員、元教員であり、多様な方面で活動する教育研究者・実践家がアドバイザーになっています。

「学校現場が変われば社会が変わる」を掲げ、自分の声を発信し、他者の声も尊重しながらよい変化を生み出そうとしています。

学校をボトムアップで変えていくプラットフォームなのです。

4 月 9 日、「#教員不足をなくそう 緊急アクション」は、昨年の 12 月から今年の 2 月にかけて実施したアンケート結果を公表し、文部科学省で記者会見を行いました。TVや新聞など多くのメディアでも取り上げました。

アンケート及び提言資料

アンケートには、教員不足実態調査、学生・若手教員/社会人向け調査、教員不足解消に向けた実態調査があり、数字及び生の声から危機的な状況が浮かび上がります。

教員一人当たりの授業時数が多くなり、時間的、精神的な余裕がなくなります。「終日自習ばかり」という事態も起きています。

数年前から教員不足、採用試験倍率低下のニュースは加速度的に増えています。足りなければ現場の負担はより大きくなり、児童生徒に皺寄せが行きます。

日本国憲法第 26 条において、「すべて国民は・・・、ひとしく教育を受ける権利を有する。」と定められていますが、その権利を損なう事態が生じています。

国も学校の設置者も手をこまねいているわけではありません。文科省の中教審において議論され、様々な手を打とうとしています。

しかし、現在のところ、明るい見通しは立ちません。


文科省は、教員採用試験の早期化を要請しました。

▼25年度の教員採用試験、5月に前倒し 文科省要請へ(日経・4/25)

しかし、早期化が特効薬にもならなければ、真の教員不足の解消にもならないという声が強いです。

教育評論家の妹尾昌俊氏は、従来より、一ヶ月早めても、民間就職と比べて内定時期が遅いことを指摘しています。
また、5 月試験となれば、忙しい時期に学校で講師等を務めながら試験対策をするのは厳しいため、教員不足、講師不足を助長するマイナス面が大きいと言います。

▼教職のやりがい発信するよりも「不安解消」が先決、誠実さと行動力が必要 学生や社会人の本音「4つの抵抗」なくすには(東洋経済・4/24)

妹尾氏は、ロレン・ノードグレン、ディヴィッド・ションタル『「変化を嫌う人」を動かす:魅力的な提案が受け入れられない4つの理由』(2023年、草思社)を参考に次にように述べます。

 教職に就くことについて、教員の魅力を発信することも大切だが、4つの「抵抗」を克服しなければよい変化は起こせないのではないか。

 第一に、自分がなじみのあるところにとどまろうとする欲求、「惰性」。

 第二に、変化を実行するために必要な努力やコストの回避、「労力」。

 第三に、提示された変化に対する否定的感情、「感情」。

 第四に、変化させられるということに対する反発、「心理的反発」。

 こうした抵抗を乗り越えられるような「よさ」を示す必要があります。

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【研究員はこう考える】
何よりも、教職に就く可能性がある若者はどう考えているのでしょうか。

愛知県の大学生に対する調査では、とにかく、長時間労働と職務に対する不十分な待遇に対する不安が大きいです。

それは一朝一夕に解決できる問題ではありません。
また、そうした問題は教育における教員不足以外にも多々あります。

大事なことは、課題を認め、ビジョンや覚悟を示し、今後の方針や取組み、進捗状況について丁寧に伝えていくことではないでしょうか。


🔽質の高い教師の確保のために

▼教員給与上乗せ 10%以上に引き上げの案盛り込みへ 中教審部会(NHK・4/13)

中教審初等中等教育分科会「質の高い教師の確保特別部会」(第12回)が
4 / 26 に開催されました。

資料は文科省のWebサイトにあります。

内容は「教師を取り巻く環境整備」「働き方改革」「学校の指導・運営体制」「教師の処遇改善」と幅広いのですが、「処遇改善」に注目が集まり、会議に先立ち、各メディアに取り上げられました。

「処遇改善」のポイントは、超過勤務手当(残業代)です。

1972年(昭和47年)施行された教員給与特別措置法(給特法)に基づき、教職の特性上、正規の勤務と残業との線引きが難しいことから、超過勤務の対価ではなく「教職調整額」が支給されることになりました。全ての教員に、一律、月額給与の4%です。

4%の根拠は当時の調査による月の平均残業時間であり、約8時間です。
約 50 年前の決定であり、時代も学校教育のあり方も大きく変化しています。

2022 年度の調査では、小学校で 64.5 %、中学校で 77.1 %の教諭の超過勤務時間が「上限」とされている月 45 時間を超えています。
50 年前に比べ、5 倍以上になっています。

超過勤務を減らせばよい話であり、教員の職務の見直し、働き方改革、本務ではない部活動の地域移行などが推進されていますが、容易ではありません。

超過勤務に応じた手当を支給することとし、勤務時間を守るよう管理する道もありますが、児童生徒を扱う教育の営みの特性や定型的ではない業務の不規則性を考えると、管理も難しいです。

また、時間管理の徹底は、学校で山積する様々な課題への対応を不十分にする可能性をもたらします。

不登校やいじめへの対応。
教育DXへの推進。
勤務時間外の児童生徒や保護者、地域への対応がなくなっても構わないでしょうか。

退勤前に児童生徒を下校させる、希望する顧問がいない部活動を全てなくす。それでよしとするでしょうか。

結果的に、特別部会では超過勤務手当支給するのではなく、教職調整額を4 %から 10 %程度に引き上げる案を示しました。

さて、そうすると、今度は「超過勤務に本腰を入れて取り組まないのか」「定額働かせ放題を放置するのか」といった批判の声が上がるのは当然のことです。

▼月給1〜2万円を増やして解決…?どうなる学校教育、国の [審議まとめ案] に向けた会見!(YouTube:内田良の学校カエルちゃんねる・4/23)

4 / 23 、名古屋大学・内田良准教授、立教大学・中原淳教授、現役教員、現役大学生が記者会見に臨みました。

「月給 1 , 2 万円で解決しようというのか」という言い回しは、決してもっとお金が欲しいということではありません。お金をいただけるのはありがたい。

しかし、お金よりも働き方改革を真に進め、残業をなくすことの方が大事。教員のウェルビーイングなしに、生徒のウェルビーイングはない。
つまり、日本の未来が危うい。
そもそも、まずは持ち帰り業務を含めた労働時間を適切に把握するべし。
労働時間とお金のリンクがなければ、長時間労働に歯止めがかからない。
こういった内容の批判です。

記者会見では当事者である教員志望の学生の発言や学生アンケートの声も紹介していました。

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【研究員はこう考える】

私が大切だと思うのは「対話」です。

教員の確保、教育の質の保証は大切なことです。
学校教育なしに社会に出ていく人間はいません。
人は歳をとっていつか去って行き、新しく生まれ育った人が社会をつくっていきます。

未来は今の子どもたちの手にかかっている。そう誰もが言います。
しかし、教員不足という大ピンチを迎えています。

少子化・人口減少・消滅危機自治体問題と同様、一朝一夕に解決できる問題ではありません。だからこそ、オープンで、ざっくばらんに対話をするべきではないでしょうか。

現在、運転手不足の問題があり、バスは減便しています。
人ができる労働量に合わせて仕事を決めています。
労働力に応じてサービスが決まるのです。

現場を知る私としては、単純に教員の仕事量に対し、人の数が少ないと思っています。

外から見るのではなく、中に入り、実際の仕事、働き方を見て、問答すれば、わかります。学校に限ったことではありません。
どのような職場でも人が余っているのか足りないのかはわかるはずです。

 学校には、必要な人数がいません


よろしければ vol.03-2 もご覧ください📓

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