見出し画像

『原発再稼働』と『報道の自由度ランキング』

原発が再稼働するようです。

 
私がこれまで生きてきた中で忘れられない『事件』はいくつかありますが、福島の原発事故は中でも一番の衝撃であったかと思います。
それは事故自体もそうですが、自分が原子力発電、ひいては電力という当たり前にあると思っていたエネルギーについての構造に関し、無知であったからです。
 
地震や津波は自然災害ですから、『事件』ではありません。
しかし、原発事故は『事件』です。
ただ、個人的にはオウム真理教が起こした一連の事件が、それに匹敵するくらい衝撃的でしたが、影響力を考えると『原発事故』は規模が違います。
 
私が制作した自主映画には、原発事故によって映し出された社会のほころびを、直接的、間接的に表現している部分がありますが、それが制作モチベーションの一つであったことは確かです。
なぜ創作をするのか、という根源的な部分です。
 
 
日本のエネルギー自給率は、12.1%でOECD諸国(2019年当時)36か国中35位だそうです。
環境問題を含むSDGsの理念などで、化石燃料からの脱却が世界的にトレンドになっているかと思います。
ということは、今後再生可能(自然)エネルギーが重要になるのはずいぶん前から分かっており、世界はそれに向けて技術や制度の改革を進めていました。
日本は既得権益者が”現状維持”に拘るために、産業構造改革が思うようにできませんが、それはエネルギーにおいても現状の構造を大きく変えられずに今日に至ります。
2011年の東日本大震災、そして起きてしまったレベル7の原発事故には、ある意味で大きな改革を促すきっかけになったはずです。
民主党政権が継続できていればその可能性はありましたが、利権の絡む自民党に戻ったために結局それが出来ず、機会をうかがっては原発を動かそうとしてきました。
 
電力のひっ迫問題は、いろいろと書かれていると思いますが、本質はピーク時の供給問題、であると思います。
そこに、『ベースロード電源』という言葉で原子力発電の必要性を主張する言説が、もっともらしく聞こえてきます。
しかし、要するにピーク時に柔軟に電力を調整できればいいわけですが、それは本当に出来ないことなんでしょうか。
かつては欧州でもベースロード電源という概念があったようですが、この20年間でその考え方は大きく変わったようです。
それを可能にしたのが、技術革新と垂直統合からの脱却のようです。
発電、送電、売電などが一つのグループ会社で統合されていることで、その柔軟な管理や供給が出来ないと言われています。
 
◆下記番組参照

 
太陽光や風力は自然変動型電源であって、“安定供給”には向かないと言われます。
一見もっともらしく聞こえますが、それもIT技術と電力の完全なオープン化によって、柔軟に需給バランスをとることが可能になっているようです。
ドイツやデンマークはそれに成功し、自給率を上げているとのこと。
 
日本は今30年間賃金がほとんど上がらない、ということがデータで示され、先進国とは呼べないほどの凋落ぶりが指摘されています。
しかし、それがあまり大っぴらにテレビや新聞で報道されていないようです。
日本人凄い!系の番組や報道は良く耳目を賑わせていますが。
 
つまり、電力が足りなくなるのはベースロード電源がないからではなく、単純に構造の問題であることが、欧州の取り組みの結果から分かっています。
その構造にメスを入れることが出来るのは、やはり政治しかありません。
 
垂直統合というのは、検索してみるといろいろと分かりやすい説明が書いてあります。
メリットとデメリット、もちろん両方あります。
しかし、電力に関してはマイナスでしかないことが理解できます。
 
日本はその垂直統合によって国民が不利益を被っていることが他にもあります。
それが、報道の自由が著しく制限されていることです。
新聞とテレビは垂直統合されており、新聞は再販制度で自由競争から除外されています。
その結果、『報道の自由度ランキング』は2022年では71位(180か国中)となり、先進国では最下位です。
 
◆下記参照

 
先の電力問題についても、その本質に迫れないのは、仲間内の利権構造が出来上がっているためで、国民の知る権利に応える機能を有していないのが現状です。
その構造の恩恵を受けるのが政府で、容易にメディアをコントロールすることが可能です。
電力利権の闇、というと大げさですが、電力もメディアも権力と結びつきやすくなっているため、誰も何も言えないし、できなくなってしまうのです。
抵抗すれば左遷でしょうから、本当に必要な有能な人材は他業種へ流れ、忖度がうまい人間だけが権力の中枢へと出世するのが日本社会の闇と言えるでしょう。
 
欧米なども問題を山ほど抱えているでしょうが、その構造においては希望がもてるため、プラットフォームへの信頼によって正義や善を行える環境にあると思います。
日本にはそのプラットフォームへの信頼が、すでに、かなり落ちていると思います。
制度や構造が酷くても、倫理的に振舞うことが美徳であると信じられた時代は、その闇が希望を覆いつくすことはなかったと思います。
 
今は損得勘定の優劣が、未来の自分や家族の生活水準にダイレクトに関係してくるため、より一層モラルの低下が起こっていると思います。
これらの幾重にも重なった利権構造にメスをいれることを避け続ければ、未来はディストピアへ一歩一歩近づいていく気がします。
 
かつて『報道の自由度ランキング』11位まで登った、民主党政権時代には、その点で希望がありました。
冒頭で述べた通り、福島の原発事故については自主映画を作る関係もあり、いろいろと調べました。
結論としては、民主党政権でよかったし、菅直人氏が首相でよかったと思っています。
 
つい最近Netflixで『メルトダウン:今語られるスリーマイル島原発事故』というドキュメンタリーがアップされ、見ていますが、いろいろと符合が重なります。
スリーマイル島の事故の際、アメリカの大統領はジミー・カーターで、彼は第二次大戦後、アメリカ海軍の原子力潜水艦の開発推進プログラムの担当者となり、試験原子炉の事故処理で被爆した経験を持っていました。
菅直人氏もまた理工学部で物理学を学んでおり、原子力について無知ではありませんでした。
そして、この二人とも現地を視察しています。
 
菅氏が現場へ行ったことは賛否両論あるようですが、なぜ行かなければならなかったのかを考えてほしいです。
先に書いた通り、電力会社は垂直統合企業で、原発に関しては国策もあってとても大きな利権が絡んでいます。
正しい情報が、知りたい情報が政府に降りてこない、情報を持ってくる電力会社の担当者が原子力について無知に近い、ということで菅氏は現場に行くことを決意しました。
 
これが、自民党政権だったらどうでしょうか。
 
コロナでよく分かったと思いますが、医療利権にメスを入れられず、検査数や病床を柔軟に増減するコントロールが出来ませんでした。
原発事故当時の民主党も、例のごとく確実な情報が上がらなかったことで、結果被爆者を増やしてしまったと思いますし、当時の会見にはイライラさせられました。
 
テレビ報道からは重要な情報が知らされないことが分かったので、ネットで原子炉設計者等の記者会見を見てようやく現状の一端を知ることが出来ました。
その後、菅氏は東電社内に対策本部を設置し、ビデオ会議で現地とコミュニケーションをとりながら対策や指示を行いましたが、これは凄いと思います。
威圧的だ、という人がいますが、こういった構造の中で確実な情報を東京で得るための最良の手段であったと思います。
 
私は、これが政治家の責任の取り方ではないかと思います。
もちろん、現場視察も一応民間会社である東電社内に踏み込んだのは批判される部分はあります。
しかし、彼が第一に考えていたのは誰のことでしょう? 国民の命や健康であると、行動から察せられます。
自分の身体が心配なら現地に行きませんし、利権構造にメスを入れたくなければ東電に乗り込んだりしませんよね。
 
さて、コロナ対策で政府は誰を一番に考えているでしょうか?
そういうことです。
 
『報道の自由度ランキング』が低い、ということは知る権利が阻害されているということです。
真のジャーナリストに敬意を払えるような民度を獲得できなければ、それが上がることはないでしょう。
既存メディアが垂直統合の中でぬくぬくしている限り、それは難しいでしょう。
メディアは独占企業の電力会社からたくさんの広告料をもらっていました。
 
企業側に自浄作用が期待できない以上、政治が手をつけなければならないでしょう。
今の自民党では残念ですが無理でしょう。
自民党は小泉純一郎氏の登場で、本当にぶっ壊れたように思います。
その後は派閥間による自浄作用が効かず、独占的に一部の人間に権力が集中するようになったと思います。
 
民主党系もかつてのような勢いも理念もなくなり、暗中模索のようです。
立憲民主党はそもそも保守的傾向があるので、いっそのこと自民党と連立して日本を立て直す、大きな構造改革を行えないかと微かに期待してしまいます。
自民党だけではできないことも、他党が混ざればできることもあると思います。
かつてケネディとフルシチョフがキューバ危機を回避したように、一端休戦し、国が抱える大きな問題に政治家が文字通り”一丸”となって取り組むくらいの、政界再編をしてほしいと思います。
それをやってのけることが出来たのは、かつての小沢一郎氏だったのだろうと思います。
非自民連立政権(細川内閣)なんてものを現実化してしまった人ですからね。
日本に今欲しい政治家は、ポスト小沢、ではないでしょうか。
 
あ、私が原発再稼働に反対する理由を書けませんでしたが、長くなるのでまたの機会に。