見出し画像

S4U - 自主制作映画の世界を楽しむ

「YOYOさんならきっと楽しめると思うよ」
と久しぶりに連絡をくれた友人が薦めてくれたのは、自主制作映画7作品のオムニバス上映会だった。
友人はその一つに出演をしていたのだが、まさか映画で演技をすることになるなど予想もしていなかっただけに、それだけで興味をそそられた。
といっても劇場がなんと『ユナイテッド・シネマ アクアシティお台場』であり、チケット代が5,000円……
そんなに有名なのか!
S4Uとは何のか!
更にスクリーン2つを貸し切っているだと!
映画作品そのものよりもその謎のイベントの正体にも興味を抱き、5,000円を投資することにした。

12月2日、『S4U FILM Galaxy』と題された上映会が、師走のイルミネーションが眩しいお台場アクアシティの劇場で催された。
公式サイトはこちら

事前情報としては、とりあえず配信で有名な方が集まってそれぞれ映画を作ったことと、現在ジャンプ+で連載している漫画家の方も参加しているということくらいだった。
私はライブ配信は見る習慣がなく、漫画もほとんど読まないため当然ながら誰も知らない人たちだった。
とはいえ、私も高校時分は漫画家を目指して持ち込み投稿をしていたし、20代後半からは自主制作映画を作ったり、音楽を作っていたので、どんな作品が集まっているのかとても楽しみではあった。

そうして始まった映画祭。
オープニングは現役漫画家コウノスケ氏による一人制作アニメーション作品『HOPELESS』
短い作品でオリジナルの楽曲が流れる中で、激しく動く迫力の格闘アニメーションが展開された。
言葉はない(歌はある)がパワー溢れるダイナミックな活劇は圧巻であった。
友人によると、コウノスケさんという方はかなり多才な方で、何をしてもハイレベルな作品を作るようだ。
それでも、これだけのものを一人で作るというのはよほどの熱量がなければ出来ない。

2作目は『竹内、目を覚ませ』(監督:たけっち)
友人が出演している作品である。
自主制作映画!という感じが懐かしくも清々しい。
自主制作映画は誰かのためというより自分自身の楽しみを優先させる方がきっと面白い。
賞を狙う、プロを目指す、という目標を持つと、その輝きはなくなってしまうことが多いと思う。
やりたい、伝えたいと思うことをやりきる、それが自主制作映画の、作り手としても視聴者としても楽しさの最たるものではないかと思う。
この作品にはそれがあった。
そして今回、他の作品にはない特徴の一つとして、ファンタジー的コメディ展開の中に、恐ろしいまでの(人間的)リアリティがあった。
それについて詳細は書けないのだが、そのリアリティがあることで、ある種の『キングオブコメディ』(映画の)的狂気が感じられたのだ。
それがなければ、それほど心に残る作品にはならなかったと思う。
私は今『機動戦士ガンダムSEED』のHDリマスター版を見直しているが、この作品におけるフレイ・アルスターというキャラクターが、まさにそのリアリティに相当すると言える。
初見ではフレイを疎ましく思っていたのだが、彼女がいることでこの荒唐無稽なSF世界にもとてつもない(人間的)リアリティを持ち込むことに成功している。
彼女がいなければファンタジー以上にはなりえなかったのではないか。

3作目の『パンだいすき』(監督:鬼山田)
ああ、これおもろいわ。
個人的に一番面白かった作品。
ショートストーリーのコントをつなげてしっかりオチる。
中でもヤバかったのはYouTuberのコントシーン。
彼らが配信者の集団であることを踏まえると、このある種の自虐ネタはそれだけでメタ的で面白い。
テンポも良く、違和感はほとんどなかった。

4作目は『旅たち』と『・家・』(監督:ロマニウス)
おお……
この監督には私と同じ匂いがする、そう感じた。
視聴者を試すような意味深なストーリーと構成。
分からなくてもいいんだぜ、だって俺が分かっているしそして最高だと思っているんだから。
そんなナルシシズムも感じさせる最高で独りよがりな作品は、意味が分からなくても惹かれるものだ。
やりきるエゴは世界の方を変える。
『・家・』の方はロケハンしてから撮り直して完全版で公開して欲しい。

5作目は『私が舞台に立った理由(わけ)』(監督:日常演舞)
なんじゃこりゃ!
え?
何これ?
お、
おお、
ええー!
すげー!

これは唯一無二ですね。
いい意味で2度見たくない。
一度で満腹である。
これもメタ要素がこれでもかと散りばめられ、こそばゆいオモシロさがあった。

6作目は『エビチリ』(監督:ソイソース醤油)
どこかで見たようなあのカット、統一感があるようでないバラバラなシーン。
でもそこには愛がある。
アンバランスな集合体の危うさが、自主制作映画という魔法の瓶の中で上手にミックスされたことで和む作品に仕上がっていたと思う。

7作目のトリは『夕焼けは、何かを諦めるのにちょうどいい』(監督:しもやか)
最期を飾るにふさわしい、王道のラブコメ展開で安心して見られる、いい意味で普通の作品。
映像やカット割り、演技、歌、どれをとっても完成度が高い。
他の作品が濃すぎたため、最後に口直し的に機能し、わだかまりをもったまま劇場を去ることを防ぐ効果が絶大であった。
いや、これは褒めているんですよ!
このレベルの作品がゴロゴロしていたら、きっと疲れてしまったかもしれない。
映画祭はバランスも大事で、今回の7作品は個性がありありで、飽きることなく3時間超を過ごすことが出来た。

とても楽しい時間をありがとう。


最期に、私の自主制作映画の宣伝をして感想文を終わろう。

21世紀の活動写真弁士(2021年制作)


龍神祈祷 ~あなたとわたしの未来~
(2014年制作)


自己事故 Suicide
(2013年制作)


影煩ひ
(2006年制作)