議員は有権者の代理人 みんな騙されてる――選挙制度の真実
日曜日の衆議院選挙、凄い事になったわけですが、まあ、多くの人は自公政権にブチ切れていたので、当然の結果だよなあ、としか思いません。
が。
立憲民主党と国民民主党、日本維新の会の獲得議席を合計すると、214議席で、191の自民を圧倒するんですよ。しかも野党に投じられた票は自公政権への反対票である上、小選挙区制なのに、上述の3党は候補者調整すらせずに選挙戦に突入してこの数字なのですから、候補者調整して選挙戦となった場合、恐らく野党側の議席は更に増えます。
つまり自公はぼろ負けしたんですよ、実際は。
にもかかわらず小選挙区なんて欠陥だらけの制度をいつまでも放置しておくから、有権者の意思によってとどめを刺せなかったわけです。
ホント、馬鹿みたいですよね。
だってね、この数字、見て下さいよ。
小選挙区オンリーなら289の過半数だから144.5なので145ですよ。
自民132+公明4で136、議席占有率は47%です。
比例代表に限ったら、176だから過半数は88。
自民59+公明20で79、議席占有率は44.9%。
しかも比例はブロック制なので、全国区にすると数字が変わる。
自民48+公明19で合計67、議席占有率はたったの38%。
立民38、国民20、維新16、れいわ12、共産11、参政6、保守3、社民3、みんな0、安楽死0。
ちなみにこのブロック制、自民の議席をより大きくする為に導入されてます(笑)。政治学で言うところのゲリマンダーと同じで、自党に少しでも議席が多くする為に採用されているのがこれです。ブロック作る事で各ブロックで死票を生み出して、その死票の山を築く事で、全国区の比例での獲得議席と比較した時に、自党の得票が一番多く出るように小細工してる制度がブロック制の正体です(笑)。
これを見てもまだ小選挙区を支持する人達は「比例代表は糞。完全小選挙区制にしろ!」等と言うのだろうか?
いい加減、政治家と御用学者に騙されてる事に気付いた方がいいよ。
それにしても全国比例だったら議席占有率がたったの38%になる有権者から丸で支持されてない政治勢力が平然と政権握り続けてるこの国ってなんなんでしょうね。
比例代表制を否定する人がよく言うセリフに「比例代表だと落としたい奴落とせないだろ!」とか「当選させたくない奴が当選しちまうんだよ」とかと言ったものであるわけだが……。
選挙は人気投票ではありません。
こういう事を言う人は、選挙と民主主義と議会の本質を理解していない。
本来の議員のあるべき姿というのは、有権者の代理人です。
本来の民主主義は国民一人一人が政治に参加して、政治的な決定を下して、統治権者としての責任と義務を果たすものだが(直接民主主義)、そんな事やってる暇なんか皆ないし、政治を行う為の知識もないし、非効率的。
そこで自分の代わりに議会に出席する代理人・代表者を決めて、その人に自分の代理をして貰う形を取っているわけです(間接民主制)。
その為の「代理人・代表者を決める」行為が、選挙なんですね。
だから民主主義体制下における議員は、厳密には権力者ではありません。
有権者から代理人・代表者としての権限を付与されて、議会に出席して政治的決定権を行使しているだけの人間という位置づけになります。
これを理解していない人が多すぎるんですよね。
もっともこのあたりの話は、大学生が受講する政治学の入門書に「代議制」とか「代議員」みたいな用語が出てきて初めて知る知識だろうから(高校レベルの公民の政治・経済で辛うじて出てくるくらいかね)、まあ、知らない奴が多いのは仕方のない話でもあるわけだが。
そして議会というのは国民の代理人達が議員として政治を行う場であるというので、政党の議席は民意に沿ったものが好ましいとされていて、だから多くの国で比例代表制が採用されているんですよ。
本当は代議制なので、自分と全く同じ考えの人を議会に送り出すのが最善なわけですが、そんなことはできるわけがありません。また、議会で政治をやろうとすると、政治は多数決なので、どうしても党を組んで活動するしかない。そうである以上、自分の考えに一番近い政党に投票して、その政党に代理人として動いて貰う以外にない。また、政党の議席配分を、得票割合に可能な限り近づける事で、議会と民意を近づける事ができる。
これが間接民主主義の現実です。
選挙制度の議論してる人達を見ると、本当に、嘘だらけで、話を聞いていると噴飯物なんですよね。
やれ「国民は馬鹿だから衆愚政治になる」だとか、「大卒の学歴を持つ人間に限定した制限選挙をやるべきだ」だとか、「被選挙権は大卒以上に限定すべきだ」だとか、「賢い政治家が物事を決めた方が上手く行くから、完全小選挙区制で白紙委任状を渡すシステムが最善である」、「政治にはダイナミズムがいるから、完全小選挙区制で白黒つけた方が、決められる政治を実現できて優れている」とか、あとは政治家が優れた決断と判断力で責任を取りつつ政治を行うのが最善、みたいな意見もありますね。
正直、
馬鹿馬鹿しい。
まず衆愚政治批判から行きますか。
衆愚政治衆愚政治言いますけど、それ、馬鹿にされている愚かな大衆って、その発言をしているあなた自身の事だって事、自覚してますか?(笑)
あなた自身が馬鹿にされているんですよ。
政治家と御用学者に。
そういう言動を取る政治家と御用学者を、悪い事を考えているのか、それとも自分が賢い人間だと思い上がっているだけのただの馬鹿なのかはわかりませんが、どっちだったとしてもろくでもない人間だという事はわかります。
どんなに賢い人間だって、選択を誤る事はあるんですよ。
判断を間違える時だってある。
衆愚政治批判をしている人達は、賢い人が絶対に選択を間違わず、判断を間違えない事を前提として語る傾向がありますよね。
絶対に間違わない人、常に最善の選択ができる人、そんな人、この世に存在しません。
衆愚政治というけど、そもそも、この部分が間違っているのです。
ブレインストーミングは御存知でしょう。
大勢の人間が意見を出し合うことで、一人で考えた時よりも優れた意見を出せる確率を高められるってあれです。
選挙も同じものだって事が理解できませんか?
一人一人は、馬鹿な人もいれば賢い人もいて、千差万別でしょう。
でも馬鹿な人でも正しい事を言ったり、正しい判断を下す事もありますし、実は何から何まで駄目で、本当に完全な馬鹿、まるで役に立たないような人間って、実際には殆どいないと思いますよ。
一人一人が真面目に考えて、自分が最善だと思う候補に投票する。この投票行為の積み重ねで導き出される結論が、得票数です。これは正に集合知(集団的知性)以外の何者でもないわけです。
人気投票で入れる人、宗教団体から指示されて入れる人、当然いますが、集合知は、そういった人達の存在も含んでいても問題なく発揮されますので大丈夫です。
つまり衆愚政治なんてものは、賢いと周囲から持ち上げられているが、本当は中身すっからかんのどうしようもない輩が、庶民を馬鹿にする為に作り出した机上の空論って事ですよ。
衆愚政治の一例として、ナチスが台頭してきたのは比例代表制だったとか、ファシズムを引き起こすとか、現在の欧州の極右台頭を挙げる人がいますが、ナチスが権力を掌握したのはワイマール共和国の制度の欠陥に起因するもので、比例代表制に原因があったわけではありませんし、選挙結果で極右が台頭するような政治情勢の時は、国内政治そのものが混乱期に面している時なので、誰が政治をやったとしても、上手く回すことは困難です。
大体、衆愚政治を挙げたり、政治のダイナミズムがどうのと言う人達は、政治家を過度に信頼していたり、美化していたり、愛国者や民族主義者のようなものを想像して語っているわけですが、実際の政治家がそんな人間達の集まりじゃない事はニュース見てたらわかるじゃないですか(笑)。
裏に回ると悪い事ばっかやってる人、大勢いるでしょ?
流石に全員悪人だなんて言いませんけど。
そして権力を持ってば持つほど悪人度が増していく。
それに最悪の独裁者として有名だったジンバブエのムガベだって、元は筋金入りの愛国者ですよ(笑)。民族主義者や愛国者、理想主義者が権力握ってから変質して、独裁者になって私腹を肥やしたとか、権力維持する為に大虐殺を働いたとか、そんな話、歴史上には掃いて捨てるほどあるじゃないですか。
みんな揃いも揃って政治に幻想を抱きすぎなんですよ。
政治なんて一院制にして全国区の比例代表で政治家選んで、あとは集合知の結果として議席配分の決まった議会と政党、政治家達にやらせておけば、少なくともその時々での最善の結果に近い成果は得られます(二院制を支持する人がいるのは知っているので、この点が暴論である事は認める)。
小選挙区制を推している政治家や学者に関して言えば、彼らがこれを支持する本当の目的は、自分達が権力に握って悪さをしたいからです。学者はそういった悪い政治家に媚を売ったり、あるいはそういう政治家をアシストする世論を作る為に、そういう言動を取っているだけです。
あと政治だけど。
政治は基本的に悪い方向に進むようにできています。
例えば官僚が汚職塗れの酷い重税国家があったとします。
それを利用して反乱を起こして、王朝ぶっ潰して、反乱起こした奴が王朝を開いたとしましょう。
どうせこいつ、王様になった途端、自分も悪い事を始めます(笑)。
お隣の中国の歴史なんかはこの手の手合いばかりですよね。
笑っちゃうくらいに。
クーデターだろうが革命だろうが全部一緒です。
殆どの国の歴史で、この点は同じだと思います。
勿論例外的に高い理想を掲げてそれを忠実に実行して、強烈な自制心で自立し、欲望を押さえて、国や民の為に政治をやり抜いた政治指導者や革命家、志士と呼ばれるような極端な理想主義者が全くいないとは言いませんし、そういう集団が出来て政治が行われる特殊な時期というのもあるのでしょうが、やっぱり基本は、国民の不満が高まるとそれを利用して権力を握って、いざ権力を握ったら、権力に魅せられて悪い事を始めて、政治がよくならない、寧ろ悪くなる、こんなのが歴史の常なんだと思いますよ。
だからこそ、国民は常に政治を監視していないといけないし、政治に対して要求を突きつけないといけないし、今までここに書いてきたような、政治家の嘘、政治家の為に政治家に都合のいいプロパガンダをそうと気づかせずに拡散している様な御用学者共の言に騙されて、判断を見誤るようなことをしちゃいけないって事なんです。
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