グッディバッディ·ダイナミクス〜ヒトがつむぐ物語が「善人 VS. 悪人」の構図に囚われる生物学的理由。 #Fictus ⑶ |エボサイマガジン
前回 #Fictus ⑵ からの続き────。
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# ホモ・サピエンスが語る物語はなぜ〈善悪構造〉を有するのか?
映画『ロード・オブ・ザ・リング』のなかで、ホビット族の長老ビルボ・バキンズが、子供たちにせがまれて物語を語るシーンがある。
ビルボは、持ち主をことごとく利己的な欲望に染める力がある指輪を所有しながらも、悪事をはたらくことなく、長い時間を過ごしてきた。
指輪に近づき、指輪をはめると、誰もが──とくに人間族は──指輪の強大な力を使ってこの世界を自分の思い通りにしたいという悪の欲望に飲まれてしまうものなのだが、ビルボには悪に対する耐性があり、力を行使したいという思いに打ち勝つことができていた。
とはいえ、そんなビルボといえども、魔法使いのガンダルフから指輪をビルボの孫であるフロドに譲るように言われた際には、ふだんの穏やかな表情から豹変して、指輪に対する強い執着心を示してしまう。
────だがビルボは、みずからの内なる欲望との葛藤の末、指輪を手放すことに成功した。
ガンダルフによれば、己の意志で指輪を手放すことができたのは、長い歴史の中でも彼一人だけだという。
長旅を終えて村に帰ってきて、子供たちに物語を語るようにせがまれたビルボ。
この長老は、子供たちに向けて、どんなストーリーを語ったのだろう?
────おそらく、"善と悪" の物語だろう。子供たちの人生をこれから襲いくるもの、子供たちがこれから打ち克つべきものに関する物語だろう。
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