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最近読んだ本

「最近、空を見上げていない」

 本が好きな人にお勧めしたい作品群。
「美しい丘」は胸が詰まりました……北海道の自然の美しさと若さと切なさに溢れていたので。
ラストがまたね……雪華さんの夢ってなんだろ? と思ってたところに。
あの後浩志青年と幸恵さん再会できてたらいいな。
はらだみずき先生の作品は「ありふれた生活を送るどこにでもいる普通の人」を描かれていることが多いと思うのですが、主人公の営業マン作本さんもその一人でした。
個人的にナカムラくんに親しみを覚えたのですが……
熱血じゃない少し頼りない普通の青年なんだけど、漫画家になるという夢を諦めたというひとつの挫折経験があるというので。
「最後の夏休み」だけは本にまつわるというか作本さんの学生時代のお話なのですが。
こういうモラトリアム期を経験したからこそ、就職してめっちゃ働いて大人になっていけるんだろうなあと思う。
本人はそんなこと忘れてしまって、それこそ空を見上げることなんかなくなっても。
マサカズいい奴ですね……しかも同郷なので親しみを覚えました。
確かに就活しないで遊んでる(わけじゃないだろうけど)友人を見てイライラしたことはある。
漠然と将来への不安でいっぱいになってる時だったし。
掃除機を100個売る、ザリガニを100匹捕まえるなんて今後二度とないであろう、だからこそ貴重な経験だった。
それにしても、掃除機のカタログを読み込んで勉強して販売戦略(?)を立てて実際に100個売ってしまったり、創意工夫して手作りのスケートボードを完成させたり、父の遺した家と仕事を継いでビジネスを始めたり、凡庸に見えて意外なことを実現させてしまうはらだ作品の主人公たちが好きです。
やりたいと思ったことはなんでもやってみなきゃね。
(2021/11/9読了)

「熱帯」

森見登美彦作品って高密度というか文章がぎっしり詰まってる感じがするので、私はさらっと読むことができなくて行きつ戻りつしながら読むのですが。
だから一気に読むのがもったいなくて毎日時間かけて大事に少しずつ読んでたのに、いつもみたいに感情移入した読書感想文が書けない。
東京→京都→熱帯の島と海へどんどん舞台が移り変わって混乱する楽しさ。
前半のリアルな現代日本のパートが特に好きです。
沈黙読書会、暴夜書房等本好きの心をくすぐるワードや、芳蓮堂、龍の根付、柳画廊等ファン歓喜の要素もあり。
「熱帯」と千夜さんの謎を探っていくドキドキ感がたまらない。
後半の『どこの誰の話なんだっけ?』となる感じももちろん楽しかったけど、ネモが帰ってきた場所が元の世界じゃなかったのが少し淋しい。
千夜さんも今西さんも白石さんも池内氏も別人だったので。
ネモって佐山尚一なんだよね?
観測所の島にいた佐山尚一(李徴・石像含む)は誰でもない学団の男たちってだけ?
池内氏が消えたあと今西さんとマキさんはどうなったのか気になるし。
いや、謎は謎のままにしておいた方がいいのですけど。
謎が解けてそういうことだったのかー、っていうすっきりした読後感はなかったです。
「宵山万華鏡」も「きつねのはなし」も「夜行」も読後爽快感系ではないですが。
今の作風もおもしろいけど、個人的には冴えない京大生の頃の方がどちらかというと好きでした。
「熱帯」に限らず、森見作品の街の描写が好きです。
播磨坂のマンションとか先斗町のバーとか。
特に京都の描写は京都の街歩きをしている気分になれるので。
蝋燭の島の塔は京都タワー?
五つの島に五山の送り火がなぞらえてあるのも好き。

世界を創り出す(=小説を書く)って本当に魔術ですね。
続きが気になって仕方なかった大好きな小説ですが、読むのにかなりのエネルギーを要したので何度も読み返したい! とはならない不思議な作品です。
(2021/11/27読了)

「けむたい後輩」

樋上公実子さんの装丁に惹かれてジャケ買い。
栞子さん……サブカルアーティスト気取りしたいだけの普通の女の子ですよね。
著名な親のもとに生まれて自分を客観視する機会に恵まれなかったのと男運の悪さには同情しますが。
本当、蓮見先生といい伊佐夫といい黒木といい、しょうもない男ばかりとつき合わなければ栞子さんも別の人生があっただろうに、まあ本人が好きでつき合ったんだから仕方ない。
特に蓮見先生がやばすぎる、30過ぎて親にたっぷりお小遣いもらってってのは本人たちがいいならそれでいいけど学生に堂々とラブレター出したり手を出しまくったり、そこまで普通じゃない人物とは思わなくておもしろすぎた。
真実子が何故そこまで栞子さんに傾倒するのか分からなかったけど、実はずっと煙たい、煙草消してって思ってたんですね。
節ごとに視点が真実子→栞子さん→美里と移っていくのに慣れるまでは第三者視点なのか人物視点なのか分からなくて読みにくかった。
けっこう悪意に満ちた表現とか出てきて、著者の口が悪いのかキャラがそうなのか両方なのか。
ミスコンの対抗馬の小島真由さんに関してはそこまで言わんでもな罵詈雑言で笑ってしまった。
学外の人に自分を売り込むのは悪いことじゃないのに媚びるとか、それと巨乳けっこうじゃないですか。
全体的な文章のノリからして50代くらいの作家が大学生をメインにした小説を書いてるのかと思いきや、本作執筆中の作者が30代前半というのも驚いた。
なんか散々disってしまったけど、若い女の子のキャットファイトが見たいという下衆心で読み始めたので文句はないです。
横浜とその周辺を散歩している気分に浸れるシーンもたくさんあったし、むしろそこが最大の魅力だったかもしれません。
(2021/12/3読了)

「ようこそ、わが家へ」

ドラマは魔改造されてるみたいなので原作だけ拝読。
今まで小説は文学作品ばかり読んで大衆小説は食わず嫌いだったけど、本当におもしろかった。
あたおかには関わないに限る、そう言ってしまえばそうなんだけど、嫌な世の中だよなー。
自分が迷惑を被っても相手がどんな人間か分からないから泣き寝入りするしかないなんて。
やりたい放題やった者勝ちなんて。
作中にも出てきた言葉だけど、神様なんていない。本当に。
でもだからこそ一矢報いてほしいというか、ストーカーがどうやって制裁されるのか見たくて一気に読んでしまった。
長男健太くん、学生にしとくには惜しい鋭い奴ですね。
学生ながらテレビ番組の構成ライターなんてやってるくらいだから頭の回転が早い子なんだろうな。
間瀬さんはまあ……気の毒だけど自業自得だし、なんとかするでしょこういう人は。
池井戸作品は初めて手に取ったのですが、倉田さんは最弱ヒーローと表現されてたのを何度か見ました。
『うちのお父さん』ぽいキャラクター像が生々しく、同じことが自分の身にいつ起こってもおかしくない感じがして怖い。
ひとつひとつの手がかりを頼りに少しずつ犯人に近づいていく、ミステリのおもしろいところですね。
ところで『茶髪のシングルマザー』って本文中にも解説文にも繰り返し強調(?)されてたけど、茶髪とシングルマザーって一般的にそんなに眉をひそめられるようなものなんでしょうか。

ドラマは未見と言いましたがネタバレありのレビューをチラ見するに、バッドエンドだったらしく?
これを先に見ちゃったので、まさか原作も? どういうバッドエンドになるの? まさかストーカーが家に放火しにくる?
とヒヤヒヤしながら読みましたが、そんなことはなくて安心しました。
真面目に生きてる市民が踏みつけにされる展開なんて見たくない。
実際はほとんどが、真面目に普通に生きてる市民ですよね。
代々木駅で最初にストーカー編集者を咎めた時も賛同してる人いたし。
次は何を読もうかな……「シャイロックの子供たち」と「アキラとあきら」もおもしろそうだし、「MIST」も読みたい。

関係ないけど、ウィキペディアの池井戸潤氏の項に『お笑い芸人の「井戸田潤」とは異なります』の文があって笑ってしまった。
本人もネタにしてたような。
出身地域的に両人とも勝手に身近に感じてます。
本当関係なくてごめんなさい。
(2021/12/20読了)

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