【詩】 不眠症
彼はいわゆる「不眠症」とやらで
日々彼を苛立たせる問題の数々は
ほんの数時間の逃避にすら水を差す。
だから
彼の悩ましい現実は
いつまで経っても記憶にならず
生々しい体験のままである。
その苦悩
問題とやらに目を瞑り
深い呼吸をいくつかすれば
不眠は解消するのだろうが
如何んせん
目を瞑れなくなるという事こそが
不眠の症状であるため
彼は夜の静けさと騒々しさを
同時に意識しながら
浅い問答を繰り返すほかない。
次第に明瞭さを増してゆく闇の中で
昼間に取り逃してしまった睡魔の囁きを
理性的に再現しようとしている哀れな男
彼を嘲るように
鳥の囀り
自動車の排気
眩しい光線
その他
様々な輝かしい活動が
彼の意識になだれ込んでゆく。
窓の外
街が色づいてゆくのを
微かに感じ
起こす身体は
より重い。
谷川俊太郎、辻征夫、吉野弘……僕の好きな詩人です。
有名所ばかりだけど、有名になるということは、それだけ多くの人の心に響く作品を生み出しているわけです。
いわゆるライトバースが好きです。
僕の頭があまりよろしくないのも関係しているのでしょう。
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