パーツに乗っ取られた状態で話すのではなく、パーツの代弁者として話す
内的家族システム(IFS:Internal Family Systems) もしくはパーツワークという言葉を聞いたことがありますでしょうか?
今年「No Bad Parts」の日本語版「「悪い私」はいない 内的家族システムモデル(IFS)による全体性の回復」が発売になり複雑性PTSD、発達性トラウマの症状改善だけに限らず、セルフリーダーシップもはぐくむことが出来るIFSはこれからますます日本でも海外のように人気が高まっていくのではないかと思います。
因みにIFSのコンセプトは非常にシンプルなのですが、パーツという意味が分からなかったり、コンセプトは理解できてもしっくりこなかったり。私自身も何を隠そう、IFSを理解して、しっかりと実践できるようになるまでに4年程の時間がかかりました。なので今すぐに全てを理解しようと焦ったり、なかなか実践することができなくても全然大丈夫です!
今回の記事が「私たちの中には色々なパーツが同時に存在しているんだ!」そして、「私たちがパーツの代弁者になることで私たちの周りの人とこれまでとは違うコミュニケーションを取ることができる可能性があるんだ」ということを知っていただくきっかけになれば最高です!
私たちの中にはいくつものパーツが存在している
海外のセミナーに参加するとトラウマは玉ねぎのようであると表現されています。それは、トラウマが玉ねぎのように何層にもなっていて、一番外側の皮(トラウマ)を剥く(癒す)ことができても、その中には私たちが崩壊してしまわないように一番外側の皮という安全装置に守られていた深い傷つきや向き合いたくない感情や思いが私たちの準備が出来るまで隠されているということがあります。
トラウマの比喩と対比させて、IFSでいうパーツ(複数の人格)たちは私たちの中にニンニクのようにいくつも同居しています。
映画「インサイド・ヘッド」/「インサイド・ヘッド2」をもう観られたことがある方はイメージしやすいかもしれませんが、もう少し具体的な例をあげると、私たちは例え好きだったり愛している人に対しても怒ったり、非難したり、イライラしたり。そして、もしかしたら怒りに任せて本当は思ってもいない事を言ってみたり、後でなんであんな言い方をしてしまったんだろうと後悔してみたり。
詳しくは、「「悪い私」はいない 内的家族システムモデル(IFS)による全体性の回復」で読んでいただけるといいのですが、
ここで「心は1つ」であると考えると
「⭕️⭕️のこと本当は好きなのに、気付いたらもう怒りが止まらず、本当は思ってもないことを言ってしまった。私なんでこんなことしてしまうんだろう」
でも、「心は複数ある/複数の人格が私たちの中に存在している」と考えると
「また怒りのパーツが私を乗っ取ってしまった。でも、怒ることでこのパーツは私の何を守ってくれようとしてくれたんだろうか?怒りで私を守ろうとしてくれたパーツに意識を向けて寄り添ってお話を聞いてみよう」
この例を考えて書いている最中も、「心は一つ」という視点で書いているときは起こした行動に対して恥や自分をコントロールできない不甲斐なさ、そしてその結果の自己不信。言葉に出来ないモヤモヤを感じました。
その一方でIFS的な視点「心は複数ある」で書いているときは、怒りのパーツに対してセルフコンパッション(思いやり)のエネルギーを向けることができて、身体が少しだけゆるんだような感覚を感じました。
パーツの代弁者になる
では、「パーツに乗っ取られた状態で話すのではなく、パーツの代弁者として話す」とはどういうことでしょうか?
激怒という方法でアナタを守ろうとしているパーツ「プリプリさん」がいるとしまします。
①はプリプリさんがアナタを完全に乗っ取ってしまっている状態です。だから、アナタから出てくる言葉はナイフやダイナマイトのように周りの人や結果的にはアナタをも傷つけてしまう言葉になってしまう可能性があります。
「⭕️⭕️なんて…(勢いで相手をただ罵倒したり、理詰めで相手を非難して責め立ててしまう)」
(具体的な言葉をあげることで、似たような同じ言葉で過去に傷つけられた記憶が活性化してしまう可能性が心配されたのでトラウマインフォームドケア的な視点から、具体例の記載を控えさせていただきました)
でも、②のようにアナタがプリプリさんの代弁者として話しているときはアナタ自身が先ずプリプリさんが抱えている激怒の理由を理解や納得することが出来たり。プリプリさんもアナタから理解されたと少し冷静さを取り戻ることが出来たり。相手に感じたことを伝えるときも、より相手に届きやすかったり理解されやすい言葉を選択することが出来たりするようになったりします。
「⭕️⭕️の言葉に私の中のパーツが反応してしまった。❌❌だと言われると、とても傷つくしどうしても過去にあったことを思い出して反応してしまうんだよね。」
(トラウマは過去と現在が分からなくなってしまうことが多いため、この例のように過去に似たようなことがあってその時の傷つきを思い出して反応してしまうこと自体に気づくのに時間がかかってしまう場合があります。だけど、IFS的なアプローチを実践していくことでパーツとの関係を構築したり、パーツが過去の傷つきをシェアし、重荷を降ろすことができるようになるとより「今ここ」という感覚を自然と感じられやすくなっていったりします。)
おわりに
改めて、自分の中にある理解をこのように言語化するというのは難しいですね。実はこの文章を書きながらも、
「なんでもっと上手く書けないんだ」
「こんな文章ではちゃんと伝わらないよ」
「わかったつもりでいるみたいだけど、全然ダメじゃん」
と私の中の色々なパーツたち(「失敗したくない」「完璧じゃなきゃダメ」「何やってもダメ」)が各々騒いでいたりしました。でもそれは、彼らが今現在も傷つきを抱え、批判することでしか私を守ることが出来ないと信じて起こしている行動でもあったりします。
一見私を傷つけているような言動の裏には彼らなりの良い意図が隠れていて、私を守ろうと頑張っているとわかっている。だからこそ、私に冷たい言葉をかけてくるパーツたちにも
「わかっているよ。守ろうとしてくれてありがとうね」
って伝えることができる。
否定的だったり批判的なパーツたちを、
黙らせたり消したりするのではなく、
彼らに乗っ取られるのではなく、
彼らに近づき、寄り添い、お話を聞いてみる。
1人でも多くの人が内的家族システム的なアプローチを実践していくことで、優しく慈愛と思いやりに満ちた世界が私たちの内側から外の世界に広がっていく事を願っています。
お知らせ
2024年9月28日(土)朝 9時30分 〜 10時30分に
「第3回【Sentur協賛】自分の内側とつながり、パーツに寄り添う ー 内的家族システム(IFS)」を開催します。
こちらのイベントは、パーツたちの情報を記録することが出来たり、IFS瞑想をすることができるアプリSentur(🇬🇧のみ)の日本語版を参加者の皆様からのフィードバックをもとにブラッシュアップし、日本語版を参加者の皆さまと一緒により良いものを作っていく目的で定期的に開催しています。
毎回違う内容のIFS瞑想を取り上げていく予定です。また、IFSが初めてという方も参加されていらっしゃるため、取り上げる瞑想に沿った内容のミニ講義を瞑想の前に行う場合もあります。
詳細はこちらのリンクよりどうぞ。
最後まで読んでくださってありがとうございます。
では、またお会いする日まで!
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーEri Blue (エリ ブルー)
1983年生まれ。イタリア・ミラノ大学大学院卒(生化学博士)。管理栄養士。トラウマ回復コーチ。外資系企業勤務を経て独立。ACE*スコア7のACEサバイバー。
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