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戦争

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考える

考える

 戦争が語られるのはいつだって8月で地名は広島長崎、そして沖縄である。1945年8月15日は終戦記念日。6日は広島へ、9日は長崎へ原爆が落とされた。6月23日は沖縄慰霊の日。語られるのは何故1941年12月7日ではなく、ノモンハンでも南京でもなく満州でもないのだろう。
 私たちは8月になると戦争はいけないと平和を願う。2度と繰り返してはいけないと誓う。それは誰が主語なのだろう。なんだか被害者の立場

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分からないということが分かった。ー戦争についてー

  大学生の頃に森達也を知りました。彼はトピックにアプローチし、紆余曲折を経た後「分からないということが分かった」とよく言っていました。死刑制度についてもオウムについても結論はそうでした。これは私にとって村上春樹が「やれやれ」というのと同じようなものです。当時仲の良い人と「分からないということが分かった」と言えば「森達也みたいだね」というほど彼を象徴するフレーズでした。「分からないということが分か

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アンネの日記、戦争、アメリカとロシア

 小学生の頃、祖母と駅前にある本屋さんに行った。偶然『アンネの日記』が目に入る。パラパラ立ち読みすると一気に引き込まれ買ってもらおうとしたが祖母は読まない方が良いと言って買わなかった。次の日も立ち読みしに行ったのだか、結局買ってもらったのか、自分の親に買ってもらったのか、とにかく何らかの方法で読んだ。アウシュヴィッツやホロコーストを知らない年齢だったのでショックを受けた。
 当時私が受けた小学校教

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私は祈れない

 2022年3月11日14時過ぎ。中央線に乗っていた。すっかり春の陽気で上着が暑い。腕をまくり少しでも涼しくする。アナウンスが流れる。イヤフォンから流れる音楽の向こうで東日本大震災と聞こえる。地震発生時刻に訓練をします、予めご了承ください。列車は久我山を通り過ぎる。吉祥寺までもうすぐ。その時間には下車しているだろうと安堵した。
 私は今でもあの日を上手く振り返れない。辛くて怖い。テレビが苦手になっ

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ずっと考えてはいるけれど

 高校2年の4月。新しいクラスに一歩入ると窓際に座っていた女の子が「おはよう」と声をかけてきた。廊下側の扉と窓側の席とはそこそこ距離がある。初めは自分に言われていると思わなかった。知らない子だし。いや私は彼女を知っていた。この学年唯一のベトナム人だったからだ。名前も知っている。彼女をLとする。Lは何故か私に挨拶してきた。普通挨拶しないだろう。今まで話したことがないのだから。戸惑いながら会釈するとL

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