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市内RPG

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福井丘県子郡市。市役所発の魔王討伐に、高校生勇者がゆるーーく挑む。不定期連載中。
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記事一覧

市内RPG 64 攻・防 

「始め。」 審判のおじさんが戦闘開始を告げた。 その言葉と同時に、ぼくらは飛び下がった。 最初の攻撃は、魔法使いヒラだった。 「メチャアツッ!」 強力な火の魔法が、相手の戦士井上を襲う。 ヒラの手のひらから巨大な火柱が、相手の戦士井上に向かって放たれた。 ところが、シューーン。 火柱は一瞬で熱い水蒸気に変わった。それもすぐにかき消され、井上のスパイクに吸収されてしまった。 「ふふん、、、これは炎のスパイク。火の魔法を吸収する。」 井上が余裕の表情を見せた。そして、僧侶カ

市内RPG 63 闘技場に立つ 

戦士ヤスと魔法使いヒラ、僧侶カナ、勇者のぼくは、闘技場に立った。 闘技場は、体育館の半分。バスケットコートと同じ広さである。 いや、バスケットコートである。 白い帽子をかぶり、紺のスーツを着たおじさんたち4名が、審判のようだ。 3名以上が戦闘不能とみなした場合に、退場が告げられ、全員が退場すれば負けである。 「こちらに並んでください。」 主審のおじさんが、紅白の旗で、整列する場所を指し示した。 ぼくらは、少し緊張しながら、整列した。 馬場たちと対面して、並ぶ。 「あほ

市内RPG 62 副賞は退魔の剣

小原合戦武道大会の開会式。 紺のスーツ、七三分けの男の人が会を進める。 「それでは、加治山沙織市長からのご挨拶です。」 うすいピンクのジャケットにパンツ。メガネのフレームもピンク。そしてピンクの口紅。 そのピンクまみれの女の人は、マイクの前に立った。 「ご紹介に預かりました加治山にございます。小原武道大会の開会にあたり、一言ごあいさつ申し上げます。ここに集まりし勇者諸君、魔王の力は絶大です。ぜひとも、仲間と力を合わせ、力と技を磨き、子郡市の安全と平和のため、力を尽くして

市内RPG 61 小原合戦武道大会、始まる

小原合戦。 今から、1000年ほど昔、響都にあった牟呂町幕府が北朝と南朝に分かれて争っていた。遠い場所での争いのはずだったけれど、その火は、ここ子郡にも飛んできたそうだ。 子郡の豪族だった大朋氏と菊智氏。2つの豪族はそれぞれ北朝と南朝につくことになった。そして、北朝についた大朋氏と、南朝についた菊智氏が、筑五川沿岸のこの子郡の地・小原で戦ったのだ。 戦いの末、菊智氏が大朋氏を破って、この地方を制覇することになる。 その古い史跡にちなんだ武道大会が「小原合戦武道大会」である

市内RPG 60 カッパ4人衆

「これがカッパかーーーー」 戦士ヤスが、おかっぱ頭の4人を見て、拍子抜けした声を出した。 「失礼ね。これは、ボブって言うのよ。」 1番背が高い女性が応えた。180cmくらいはある。30代かな、40代かな。母さんよりは若く見える。 「こちら、背の高い順に、白烏ダンススタジオの白烏さん、黒鈴目さん、青木字さん、黄和士さん。」5cmずつ、小さくなっている・・・。 「よろしくーーーーー。」 4人は、声をそろえて言った。 「・・・・よろしくお願いします。」 ぼくらも、おそるおそる

市内の魔王に挑む、RPGはいかが?

あらすじ ぼくは、福井丘県子郡市に家族4人で平和に暮らしている16歳。毎日、隣町の来目市の明仙高校に、二師鉄電車で通学する。何にもない町と何にもない日々。ある日、家に届いた回覧板で「魔王討伐」の記事を知った。同じ高校の仲間ヤス、ヒラ、カナと、町の平和のために、魔王討伐の冒険を志す。子郡市役所で勇者の登録をした。保険にも入った。活動の手引きも読んだ。ケータイで、武器と防具と呪文を登録すると、攻撃力や防御力が上がったり呪文が使えたりする。まずは、スライムを退治して、レベルを上げ

市内RPG 59 カッパに出会う

早いもので土曜日になった。 いつもの二師鉄子郡駅前に集合した。 「大穂駅の改札にこいつが引っかかって、大変だったーー。」 戦士ヤスは、ベリービッグコンパスを担いできた。 「どんどん武器が大きくなってるから、気を付けないとね。」 魔法使いのヒラは、6色ペンの杖を振り回しながら言った。 「そう、そう、周りにも迷惑だから気を付けてよね。」 僧侶のカナも、それに同調した。 4人、そろったので、今日の行き先を決めることになった。 「もう来週が武道大会よ。装備も新しくなったし、力試

市内RPG 58 ライバル再び

ぼくら、レベル16の、勇者、戦士、魔法使い、僧侶の高校生パーティー。子郡市役所で勇者登録をして、魔王討伐のために、子郡市内をうろうろしている。 今日は、「シックスバリュ」でお買い物だ。 装備を買い終えたところで、声をかけられたのだ。 「装備ばっかり立派でも、魔王にゃ勝てないぜ。」 振り向くと、4人組が立っていた。 背の高い馬場、カリアゲ女子のルミ、日焼け坊主の井上、太っちょメガネのライト。 コイツらも勇者一行なのだ。 「あら、あんたたち、まだ勇者やってたの?」 ル

市内RPG ①回覧板と魔王

ざっくり言うと 「魔王を倒してください」 という回覧板が、ぼくの家に届いた。 ぼくは福井丘県子郡市に住む16歳。性別は男。職業は高校生。教員の父と専業主婦の母、それに中学生の妹と暮らしている。 子郡市は、今はさびれた来目市のベッドタウン。人口6万人。田んぼと小麦畑と住宅地、そして築五川と華立山しかない平な町。何の特徴もない退屈な町。ただのんびりしたところが魅力?かな。 回覧板は月1回。 いつもは読まない回覧板だが、何故か目に止まったのだ。 「母さん、魔王だってよ」

市内RPG ②仲間

二師鉄電車と二師鉄バスに乗って、明仙高校へ行く。夏休みなのに、補習があるなんて。進学校だからしかたないが、つまらない。 大穂駅からヤスが乗ってきた。 「おはよう」 「おぃーす」 ヤスのテンションは朝はこのくらい。いつものことだ。本人曰く、低血圧らしい。ひくいテンションのヤスとはなかなか盛り上がれない。無言で、電車に揺られている。ぼくらは電車の一番前に乗る。混まないし、乗客の先頭にいるということは何かうれしい。 次の足坂駅からはヒラが乗ってくる。いきなりヒラが尋ねてきた。

市内RPG ③市役所

9時に子郡駅前集合。 家を出ようとすると 「こんなに早くから、バイト探し?」母が言った。 「まあ、そんなとこ。行ってきます」 ヒラはもう来ていた。 「説明会は市役所の第3会議室であるってよ。15歳以上ならいいらしい。」 「たくさん集まるのかな」 「さあね。まあ、行ってから決めればいいさ」 話していると、ヤスが来た。 「さて、行こうか」 子郡市役所は駅から歩いて10分のところにある。レンガ造りの3階建て。ぱっとしないただの四角い建物。エントランスは暗くて、心細くなる。案内

市内RPG ④魔王討伐説明会

「主な説明は私、尾林がいたします。企画の目的、活動、評価と報酬の順に説明します」尾林さんは話し始めた。 「まず、この企画の目的は、魔王を倒すことです。魔王は世界の破滅を目論んでいます。邪悪な魔物を従えて虎視眈々と世界を狙っているのです。しかも、魔王はどこにいるかわからない。丁寧な探索が必要です。魔王を見つけ、そして、魔王を倒すことがこの企画の目的なのです。」尾林さんは少し興奮気味に言った。 「次に、活動を説明します。先ほど述べた探索と戦闘と報告の3つがあります。探索は、魔

市内RPG ⑤勇者登録

池木下さんは青いファイルを開いて、登録用紙を取り出した。 「3人がパーティー?」 「そうです」ヒラが言った。 「名前、住所、連絡先、希望職業を書いてね。高校生?なら、保護者と連絡先もね」 「名前、住所、連絡先、、、希望職業?これ何ですか」ぼくが尋ねると、池木下さんは 「勇者、戦士、魔法使い、僧侶、盗賊、武闘家から選んでね。あ、パーティーに一人は勇者が必要だから、相談してね」と言った。 ヤスを見ると「戦士」を選んでいた。「ヤス、戦士なの?」「オレ、剣道部だから。やっぱ戦士でし

市内RPG ⑥勇者誕生?

次の日、郵送で通知が届いた。 封筒には3枚の書類と木の棒が入っていた。書類は、勇者登録通知書、活動と報告の手引き、保険加入のお願いだ。 勇者登録通知書は、あなたは今日から勇者ですと書いてあった。少し立派な紙に市長の名前と印鑑が押されてあった。 活動と報告の手引きには、バーコードがあってケータイで読み取るように書いてあった。読み取ると、すぐに登録確認画面にログインさせられ、本人を確認した後認証されたようだ。ケータイには勇者としての身分証明書が送信された。魔物を倒したら写メ