市内RPG 63 闘技場に立つ
戦士ヤスと魔法使いヒラ、僧侶カナ、勇者のぼくは、闘技場に立った。
闘技場は、体育館の半分。バスケットコートと同じ広さである。
いや、バスケットコートである。
白い帽子をかぶり、紺のスーツを着たおじさんたち4名が、審判のようだ。
3名以上が戦闘不能とみなした場合に、退場が告げられ、全員が退場すれば負けである。
「こちらに並んでください。」
主審のおじさんが、紅白の旗で、整列する場所を指し示した。
ぼくらは、少し緊張しながら、整列した。
馬場たちと対面して、並ぶ。
「あほ面がそろったな。」
馬場がわざと聞こえるように言った。
「何よ、泣きっ面になるのは、そっちよ。」
カナが、素早くカウンターを放った。
「口をつつしんで。」
コートの角にいた審判のおじさんが注意した。
ぼくらは、黙って、相手をにらみつけた。
馬場は、勇者だ。青龍刀を両手で握りしめている。防具は、青龍シリーズだ。青龍のパーカー、青龍のパンツ、青龍の靴。どの防具にもかわいい青龍のイラストが施されている。
日焼け坊主の井上は、戦士のようだ。炎のホームランバットを右手に持ち、左手にはミラーシールドを構えている。魔法を跳ね返しそうだな。野球のユニフォームにスパイク。スパイクは炎のマークが書かれている。きっと炎のスパイクとかいうのだろう。
カリアゲ女子のルミは、魔法使いだな。黒い魔法使いハットに、黒のふわふわ毛皮コートを着ている。足元は赤いハイヒール。
太っちょメガネのライトは、僧侶だのだろう。柔道着を着て、水玉模様のパラソルを持っている。ちょっとどんな効果があるのか、想像もつかない。
「勇者は主人公みたいだけど、本当はみんなが主人公なのよ。勇者は、それをまとめる引き立て役だと考えた方がいいわ。出しゃばらず、周りをよく見て、判断することが大事よ。そのための優しさと勇気をいつももたないといけないわ。」
カッパ4人衆の元勇者、シロカラスさんが話してくれた言葉が、頭をよぎった。
みんなと一生懸命に戦ってみるだけだ。
ヤスを見た。ヒラを見た。カナを見た。
みんな、力がこもっている。
「始め。」
審判のおじさんが戦闘の開始を告げた。
(続く)
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