市内RPG ④魔王討伐説明会
「主な説明は私、尾林がいたします。企画の目的、活動、評価と報酬の順に説明します」尾林さんは話し始めた。
「まず、この企画の目的は、魔王を倒すことです。魔王は世界の破滅を目論んでいます。邪悪な魔物を従えて虎視眈々と世界を狙っているのです。しかも、魔王はどこにいるかわからない。丁寧な探索が必要です。魔王を見つけ、そして、魔王を倒すことがこの企画の目的なのです。」尾林さんは少し興奮気味に言った。
「次に、活動を説明します。先ほど述べた探索と戦闘と報告の3つがあります。探索は、魔王について聞き込みをしながら居場所や情報を探すことです。街にはカゲと呼ばれる探索員が密かに放たれています。勇者をサポートすることがカゲの仕事です。カゲは勇者に接触し、情報を提供します」
「勇者だって」ヤスがニヤニヤしながら小声で言った。
「勇者にもたらされる情報をもとに魔王を探し出していただきたいのです」
「そして、活動の2つ目は戦闘です。戦闘は魔物や魔王と戦うことです。倒した魔物によって経験値が与えられます。レベルアップすると強くなります。」
「レベルアップだって」今度はヒラがニヤニヤ笑った。
「しかし、傷ついたり、下手したら命を落としかねないこともあります。ご注意ください。」
ニヤニヤしていたヤスとヒラの顔が少しひきつってた。
「活動の3つ目は報告です。報告は本部へ提出する書類があります。これが、レベルアップや報酬に関係していきます。おろそかにすると、報酬が支払われない可能性があります。また、登録抹消も手続きが必要です。登録を抹消せずに不適切な活動を行うとノラ勇者となり違法となる場合があります。手続きは忘れずに行ってください」
「ノラ勇者、、、」ぼくらは顔を見合わせた。
「最後に、評価と報酬です。提出書類には倒した魔物の種類や数を書いて環境推進課に届けてください。また、探索した結果なども報告すると、探索慰労手当がつくこともあります。魔王を倒せば、、、最高報酬を手に入れることができます。」尾林さんは、最高報酬に力を入れて話した。
「大まかに説明しました。質問はありますか?」そう言って、尾林さんは全体を見渡した。
しばらくして、ヒラがつぶやくように言った。
「ぼくらでも魔王は倒せますか」
尾林さんは、メガネのズレを直しながら言った。
「それはわかりません。魔王の力がどれくらいかもわからないのです。倒せるかもしれないし、倒せないかもしれない。それは勇者次第です」
続いてヤスが言った。
「勇者っているんですか」
「正確に言うと、なるのです。登録していただけたら、誰でもなれます。ただし、パーティーに一人です」
そこからは、質問の連続だった。
ひとしきり質問を出し尽くしたところで、黙っていた池木下さんが言った。
「登録しますか」