
【オトナになることのうた】mao●大人になったら忘れちゃうの?「夢をかなえてドラえもん」
まさか3月になって今冬で一番の寒さとなるとは。うちの周りですけど。
というか、まだ春じゃないのかっ。
お米も野菜もどんどん高くなるしで、困ったものです。
お米は先日しこたま送ってくれた実家に感謝。
このところは、小室等のイベントに行ったり(レジェンド揃い、名曲ばかり)、浦小雪 vs Sundae May Clubの対バン(気鋭の若手のみ、ギターロックの嵐)を観たりしてました。なかなかの年齢差。
そして再来週末からのMLB東京シリーズのチケット入手は混迷を、いや、困難を極めております(泣)。
これについて何かいいお話があれば、ぜひわたくし宛にお願いしますっ。ライヴレポートの仕事とか(ねーよ)。
さて、今回はアニソンについて書きます。しかも、ドラえもん。
アニメ版『ドラえもん』2000年代の代表曲「夢をかなえてドラえもん」
ドラえもんのアニメに関する歌は、たくさんの人たちが認識していることと思う。なにせもう50年以上もテレビ放映されている作品なのだから。
早々に脱線するが、ドラえもんのアニメ版は、最古では1973年に放映されている。この時のネットは日テレ系列で、すぐに終わってしまった覚えがある。そう、僕はこれをリアルタイムで、ちょっとだけ観ていたのだ。
そして現在も続くテレ朝でのドラえもんは、1979年からスタートした。
こうしたアニメ版ドラえもんの歴史における、一連のアニメソング主題歌を張ってみる。
映画の主題歌などもあるのだが、そちらも含めて、かなり省略している。悪しからず。
最初はさっきの1973年版。
ここから1979年以降。旧世代に親しみがあるのは、この歌だろう。
そして、これが現代の代表曲。
星野源も唄っていたのは記憶に新しいところ。
長寿アニメだけに、『ドラえもん』はたくさんの主題歌が作られてきた。
この中で取り上げたいのは、2007年から主題歌になった「夢をかなえてドラえもん」である。
歌詞の中に、大人になったら、というフレーズがあるからだ。
この曲については、番組がリニューアルされた2007年当時のホームページに、エピソードがいくつか載っている。次は、そのアーカイブである。
『ドラえもん』のオープニングが変わる!!
5月11日(金)から新テーマ曲登場&
のび太たちが“イメチェン”だ!
5月11日(金)は、『ドラえもん』のオープニングに大注目!!
期待の新人アーティストの歌『夢をかなえてドラえもん』が、新オープニングテーマに大ばってき!!
なんと、のび太たちも今どきのファッションでイメージチェンジ!?
(中略)
新しいオープニングテーマは、作詞作曲:黒須克彦さん、歌:maoさんという期待のコンビによる『夢をかなえてドラえもん』。
ちょっぴりノスタルジックなほのぼのとした歌で、親子2世代、3世代にわたって愛されている『ドラえもん』にピッタリな曲です!
この新テーマにあわせて、『ドラえもん』のオープニングは、やわらかい手描きタッチの夢あふれるアニメーションに変身します!
★大ばってきされた期待のアーティストとは!?★
この新テーマを決めるにあたり、スタッフは、昨年8月から半年以上にわたって、プロのアーティストを対象とした楽曲コンペを開催。
集まった1000以上の曲の中から、黒須さんの作品が選ばれました!
そして、黒須さんがコンペに参加したとき、デモテープで歌っていたのが、新人ボーカリストのmaoさん。
彼女のやさしくのびやかな歌声をスタッフも気に入り、この『夢をかなえてドラえもん』で、メジャーデビューすることとなりました。まさに、ドラえもんに“夢をかなえて”もらったシンデレラガールなのです!
maoさん、黒須さんのよろこびの声を大紹介するよ!!
■maoさん
「小さいころから大好きなアニメなので、本当にオドロキとよろこびでいっぱいです。初めてテレビでこの曲が流れる5月11日の夜は、泣いちゃうかもしれないですね。みんながハッピーになれる歌にしようと心がけながら歌いました。歌を聴いて幸せな気持ちになってもらえたらうれしいですね!」
■黒須克彦さん
「選ばれたときは信じられませんでした。今でも信じられませんね。大人が聴いても子どもが聴いても“良い”と思える曲にしたかった。ドラえもんという存在と同じような、普遍的な魅力を感じていただければうれしいです」
作者が、大人にも子供にも響くような歌を作ることを念頭に置いていたのがわかる。
黒須克彦はアニソンの制作も多いが、それだけではなく、何年か前にはUNISON SQUARE GARDENのメンバーとコラボもしているクリエイターである。
以下は彼の、後年のインタビュー。
上記のインタビューなどを見ても、「夢をかなえてドラえもん」の歌詞のことは、深くは語られていない。
ちなみに、アニメのドラえもんはこの2007年の数年前にすでに改編をしていて、作画や設定、声優に至るまで、いくつかの変更がほどこされている。おそらく、今に至るまでにも、少しずつ変化をしながらOAが続いているはずだ。
僕は子供がいる関係でこの2000年代(ゼロ年代)後半のドラえもんに(あらためて)接したものだが、先のように主題歌が新しくなったこと以外にも驚きがあった。
とくに大きかったのは、ジャイアンが弱い者いじめをしなくなっていたことである。現在の彼は、相変わらずガキ大将的な存在ではあるものの、むしろたくましく、実は思いやりもある男の子のイメージのほうを持っている。これは時代的に(また、ここまで普及している作品ということもあり)、登場人物のひとりが友達をいじめるような表現はNGということなのだろう。
このことを、解析している人がいた。
夢は、大人になったら忘れてしまうもの?
「夢をかなえてドラえもん」は2007年に主題歌になって以降、さまざまなバージョンが発表されてきている。
僕がこの歌を聴くたびに心に残っていたのは、先ほどの歌詞である。一番、二番、それぞれのサビ前の<大人になったら忘れちゃうのかな?>と<大人になっても きっと忘れない>という言葉がある。
大人になって何を忘れるのかというと、これはそれぞれが子供の頃に持っていた<夢>であると解釈できる。<大人になっても きっと忘れない>のほうは、その夢も含んだ上での(この後に続く)<大切な思い>ということだろう。
この歌はコンペによって選ばれたようだが、記事を見ても、歌詞については特段どういうものかという指定はされなかったように感じられる。そのへんははっきりしないものの、いずれにしてもアニメ制作側(おそらくは原作サイドも含めて)は黒須によるこの詞を受け取ったあとに、そのままOKとしたのではないだろうか(手直しもあったかもしれないが)。そしてこの歌はドラえもんの主題歌として、見事にハマっている。シンガーのmaoのピュアでまっすぐな歌声も素晴らしい。
今の大人世代はどうかわからないが、この19年近くのうちのほとんどの時期はこの歌が主題歌として君臨していることを鑑みると、若い世代は「夢をかなえてドラえもん」こそがドラえもんのテーマ曲だと認識しているはずである(「ドラえもんのうた」ではなく)。僕もこの曲が、現代のドラえもんの歌だということに違和感はない。
ただ、ふと思うのが、この歌の主人公が、大人になった自分に思いを巡らせていることである。
たとえば、あなた自身が幼かった頃、まだまだ子供だった頃を思い出してみてほしい。自分が大人になった時、いったいどうなっているか、どんな人間になっているかなんて、どのぐらい想像できたものだろう。
僕は、とてもじゃないが、想像できなかった。たいていはそんなもんじゃないだろうか。
いや、未来の自分を想像した、想像できた人だって、いるとは思う。どんな方面に進んでいくのか、どんな仕事をしていたいのか。それはその子が、将来の進路とか、未来に携わりたい仕事としてどんな理想があるかに関わってくる。そして実際にそれを叶えた人もいるだろうし、そうでなくても、社会に出る頃にどんな自分になっていたいかという理想を、漠然とでも持っていた人はいるに違いない。
ただ、ここが大事なのだが……この歌で唄われているのは、子供が、自分の<夢>や自分にとっての<大切な思い>を、大人になってしまったら忘れてしまうかもしれない、いやでも、きっと忘れたりしない! と。そこまで思う気持ちなのである。
大人になったら、夢や大切な思いを忘れてしまうかもしれない、という危惧。その心配は、たとえば小学生であるのび太たちがどこかに抱えている、ということなのだろうか。この歌においては。
大人になることは、それだけ自分が変わっていってしまう、今のような自分じゃなくなってしまう。そんな前提が、ここにはあるように思う。
そこでの、でも自分の夢は忘れないよ、大切な思いを忘れたりはしないよ、という意志。
僕はここに作者の願いを感じ取る。子供たちにはこうであってほしい、ということを。大人になっても、夢や大切な思いを忘れないでほしい、という祈りを。
これは先ほどの、作者である黒須克彦の「大人が聴いても子どもが聴いても“良い”と思える曲にしたかった。ドラえもんという存在と同じような、普遍的な魅力を感じていただければうれしいです」という言葉を重ねながら、思うことでもある。
子供たちに、そんなふうに……その夢を忘れないような大人になってほしい。そして育てる側の大人たちは、子供たちがそんなふうに成長するよう見守ってほしい。こうした気持ちが込められている歌ではないだろうか。
現実には、子供の頃の夢を忘れないまま大人になっていく、そんな大人になっていける人は、そうは多くないと思う。大人になることは、夢を見なくなることだと考えているような人だって、いるような気がする。具体的に誰がということではないが、僕個人の経験則で。
でも、中には、いる。大人になっても夢を持ち続けている人は。
<大人になっても><忘れない>人だって、いるのだ。
そして、あらためて、思う。
幼い子供たちが「夢をかなえてドラえもん」を当たり前のように聴いていたとして。その中には、夢を持ち続けることの大切さを抱えながら大人になっていくことができた子たちが、きっとたくさんいるだろうな、と。そして『ドラえもん』がOAされ続けている今の時代も、それはずっと続いているんだろうな、と。
これもまた音楽が持つ素敵な可能性のひとつだと、僕は思う。

親子御前、1980円。
味がしみ込んだ親子丼をメインに、
昼下がりを上品に過ごすことができました
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