100%メインで面白すぎる!【嵐が丘】岩波文庫チャレンジ85&86/100冊目
読む手が止まらなかった。
つまらない所もなければ、読みづらい所もない。
100%ストーリーで100%面白い!
誰かに「面白い本ある?」とか、あまり本を読んでない人に「何読んだらいいかな」と聞かれた時、これからは「嵐が丘」をおすすめする。
モームの十大小説に挙げられている古典の名著。今年の一括重版対象のようなので、発売されたらモームの感想もぜひ知りたい。
岩波文庫の古典といえば、堅苦しくて、いかついイメージが離れないけれど、本訳はとても読みやすい。こんなに読みやすい岩波文庫があったんだ!と驚いた。
最高の構成
本作は、屋敷を訪れたロックウッドが、語り手である家政婦の話を聴きながら、登場人物の「謎」、最初に登場する亡霊の「謎」の答えを追っていくようにできている。
読者(自分の場合)は、その「謎」が気になってページを捲る手が止まらない。先に書いた「読みやすさ」もノンストップ理由の一つだろうが、100%ストーリーというのも大きな魅力。
つまり、
無駄な部分が全くない。
「無駄」と言っては小説家の人には失礼だろうが、大半の場合「知りたい事の”答え”」とは直接関係ない文章も多い。いや、それが物語全体を豊かにしているんだよね、という見方もあるだろう。
中には、散々読者にぐぬぬ、ぐぬぬと我慢させておいて、ようやくきたー!真実が分かる瞬間!がとても一瞬、という名作もある。
「嵐が丘」のラインは全てがメインストーリー。それを思うと、とんでもない量のあらすじと構成。並々ならぬ作品だと思った。
あらすじを少しだけ
ではどんな話かというと、「嵐が丘」というタイトルが如実に語っているように、かなり激しい人間模様が展開される。いじめ、暴力、ヒステリー、狂気。
「ぼく」として登場するロックウッドが、スラッシュクロス屋敷の家主ヒースクリフと、それを取り巻く人物の過去に迫っていく。この「ぼく」と語り手の家政婦以外は全員どこかまともでない。
精神や身体が弱々しい家系と、狂気じみた家系。
案外良い役割を果たしていると思うのは、中心人物ではないけれど、それぞれの登場人物と関わっている語り手の家政婦。
自分の正義をちゃんと持っていて、家政婦という立場ではあるものの、主人に対してちゃんと意見が言える人。読んでいて心強いし、楽しい所でもある。中心人物以外の人が心の中心になるという不思議な感覚。
登場人物の過去を紐解くのはやや、ややこしいので、メモを取りながら読む事をおすすめする。自分は、特に海外小説を読む際は必ず、誰がどういう名前で(覚えられないから)、誰と誰が関係しているのかメモをする。この小説ではこれらがポイントでもある。
なんとなれば、2人のキャサリンが登場する。分からない内はそれだけでややこしいし、結婚すれば名前が変わり、子供が産まれればさらにややこしくなる。親子3代に渡る壮絶な人間模様が繰り広げられる。
ややこしさは「そうか!」と後で分かる楽しみでもあるので、そのためにも、登場人物はごちゃごちゃにならないようにしておくのが良い。
文章を味わう小説ではなく、物語を味わう小説の類である。だがこの物語が半端ない、物語の構成が半端ない!というのが名著である所以だろうか。
天才ブロンテ姉妹
海外小説でブロンテ姉妹といえば、シャーロット・ブロンテと本作著者のエミリー・ブロンテ、もう1人アン・ブロンテも小説を書いているらしい。
シャーロット・ブロンテは「ジェーン・エア」という作品で有名。新潮文庫で読んでしまったのだが、こちらも面白い。天才姉妹と言われる訳は、読んだら分かる。
姉もすごいが妹もすごい。アンはまだ未読で、上の2人ほど有名作は残していないようだが、いつか3姉妹を読み比べたい。
小説で有名なのはこの3姉妹だが、家族としては1男5女。姉2人が早くに亡くなってしまったため、ブロンテ3姉妹と言われるようだ。かくいう「嵐が丘」著者エミリーも、30歳という若さで早逝しており、本作が唯一の長編。もっと読んでみたかったと惜しまれる理由が分かった。
未読の方にはぜひ楽しんでもらいたいので、ここで詳細は述べませーん!
(もう少し詳しく知りたい方向けにYouTubeを貼ろうとしたらうまくいきませーん!笑)
岩波文庫100冊チャレンジ、残り14冊🌟