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映画とワインのペアリング #01「GREEN BOOK」

運転席の男性、誰かわかります?なんとヴィゴ・モーテンセン(ロード・オブ・ザ・リングのアラゴルン役)なんですって。人相違いすぎるだろ……役者ってすごい。

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あまりの衝撃で、いきなり話が逸れてしまったので本題へ。

映画にあう飲みものといえば何を想像する?やっぱりコーラ?炭酸よりもオレンジジュース?家で観るならビールやハイボールなんて人もいるのかな。ポップコーンやピザなんかと合わせたら、もうたまらない。

でも、僕がここでオススメしたいのはズバリ、ワイン。なにもワイングラスを片手でクルクル回し、大人の優雅さを堪能してる自分に酔っ払いながら映画を観ようと言ってるわけではないし、「タンニンが〜」「ミネラルが〜」とウンチクを述べながら観ようと言ってるわけでもない。

ご存知の通りワインはやたら種類が多い。だからこそビミョーな味わい(と言ったら詳しい人に怒られそう)が全然違う。ハリウッドのアクション映画のような大味でわかりやすくウマい!と思うものもあれば、青春映画のように甘酸っぱくて繊細なものもあるし、渋〜い中にほんのり包み込むような甘さが共存する成熟した大人を感じさせるものもある。そう、個性豊かで誰とも違う種類があるワインこそ、さまざまな人間の人生を追体験する映画に相応しいのではないか。

というわけで前置きが長くなったが、このページでは観た映画の感想&観ながら飲みたいワインのペアリングを超主観的にご紹介。あ、高額なワインはそもそもお金ないので紹介するつもりはないです。僕みたいな一般人でも気軽に飲めるものを紹介していきますので気楽に読んでもらえたら。

さて、今回の映画は「GREEN BOOK」。(※ぜひ映画を観てほしいのでネタバレは極力控えてるつもり……)



第一印象は、バイオレンスありの少し怖そうなヒューマンドラマ。

(C) 2019 UNIVERSAL STUDIOS AND STORYTELLER DISTRIBUTION CO., LLC. ALL RIGHTS RESERVED.

だって見てよ。ヴィゴ(運転席)の鋭い眼光とマハーシャラ・アリ(後部座席)の真顔。やわらかなフォントとポップな色の車にアンマッチな空気感と威圧感。「あ、これ暴力ありのちょっと怖くて重めなやつかな」と思うでしょ?なんとジャンルは『コメディ/アドベンチャー』。(びっくり)
アカデミー賞3部門(作品賞・助演男優賞・脚本賞)受賞作品で、実話を基にした人間ドラマらしい。あらすじは以下の通り。

時は1962年、ニューヨークの一流ナイトクラブ、コパカバーナで用心棒を務めるトニー・リップは、ガサツで無学だが、腕っぷしとハッタリで家族や周囲に頼りにされていた。ある日、トニーは、黒人ピアニストの運転手としてスカウトされる。彼の名前はドクター・シャーリー、カーネギーホールを住処とし、ホワイトハウスでも演奏したほどの天才は、なぜか差別の色濃い南部での演奏ツアーを目論んでいた。二人は、〈黒人用旅行ガイド=グリーンブック〉を頼りに、出発するのだが─。(C) 2019 UNIVERSAL STUDIOS AND STORYTELLER DISTRIBUTION CO., LLC. ALL RIGHTS RESERVED.

Amazonプライムビデオ「GREEN BOOK」のあらすじより

「用心棒」「ガサツで無学」「腕っぷしとハッタリ」ってやっぱり怖いやつっぽいけどジャンルはコメディ。それが逆に興味をそそらない?

2回続けて観るほど、最高だった。

先ほど述べた通りネタバレは避けたいからフワッとしたことしか言えないし、あらすじをサラッと見て、実際に鑑賞してもらうのが一番いいので劇中の詳しい内容は紹介しない。ただ、この映画、最高だった。観たことがない人には絶対に観てほしい。僕は観終わったあと、この物語の余韻に浸りたくてYouTubeのインタビュー映像などをひたすら掘ってしまった。(※コチラは鑑賞後に見ること推奨)

ほぼ、おじさんふたりのシーン。

登場人物はたくさんいるけど、演奏ツアーに出発してからは「車の中のふたり」「演奏会場のふたり」「宿泊先のふたり」と映画の中心どころか、尺のほとんどはこのおじさんふたりのやりとり。だけどそこがいい。人種差別が当たり前のように横行して人々の価値観として根付いている時代。それはトニー(ヴィゴ)だって例外じゃない。最初は金のため・家族のため(トニーは家族大好き)に運転手を引き受ける。シャーリー(マハーシャラ)は天才ピアニストで超金持ち(カーネギーホールの上に住んでる)でありながら人種差別を受け、心を閉ざし、人と距離を置くための壁を作っている、もしくは好意を拒絶されることを怖がっているように見える。そんな境遇の違うふたりだから「仕事として、たまに会う」だけじゃ信頼関係どころか友情なんて絶対に生まれない。2ヶ月間、一緒に過ごすツアーが必要だったんだ。

(C) 2018 UNIVERSAL STUDIOS AND STORYTELLER DISTRIBUTION CO., LLC. All Rights Reserved.
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切ない笑顔と、ガサツな優しさ。

シャーリーは普段ほとんど笑わない。劇中で何度か笑顔を見せるが、その大半は演奏会の主催者や列席者、要は黒人を蔑視している白人たちへの笑顔だ。僕はこんなに切ない笑顔を見たことがない。嫌われてる人に、それでも仲良くしてと願うような笑顔。シャーリーはもう何年も心から笑っていなかったんじゃないかと感じさせる。上品な身なりや言動も、蔑まされないための処世術として身につけたもののように映った。天才ピアニストたる、繊細で豊かな感受性が、より人からの印象を受け取ってしまうのかもしれない。

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対して運転手のトニーはガハハと豪快に笑い、割とすぐに暴力を振るうし、ハッタリだらけ(本人曰く嘘つきではない)でガサツ。常にタバコを咥え、そして食べ方がなにしろ汚い(笑)
でも、面倒見がいいし、人の気持ちを汲み取れる優しさを持ってる。もうね、トニーも最高なんだよ!思い出したらうるっときた。劇中ではシャーリーは、トニーの運転手経験と腕っぷしを見込んで雇ったような描写だったけど、本当は自分が作ってしまう壁を、遠慮なくぶっ壊してくれるトニーのような人を求めていたんじゃないかな。いい風にとらえすぎ?

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シャーリーはなぜ差別の色濃い南部で演奏ツアーをするのか。その狙いはなんなのか。そして、トニーとシャーリーの出会いが、お互いにもたらすものとは。本当はもっと語りたいことがあるんだけど(トニーの奥さんに手紙を書くところとか!)僕からの紹介はここまでに留める。2ヶ月の演奏ツアーの中で変化していくトニーとシャーリーの人間模様を、ぜひ実際に観てその心で感じでほしい。クスッとするところも満載で最高だから。

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変わりゆくふたりの気持ちに寄りそうワインが心地いい。

さて、映画の感想を簡単に伝えたところで、もう一つの本題「ペアリングするワイン」について。ここはやはり映画の舞台である1960年代のヴィンテージワインがオススメだぜ。なんて口が裂けても言わない。あと、この映画にはさまざまな食べ物が登場する。ケンタッキーフライドチキン、サンドウィッチにパスタやピザ。それらと合わせるワインもいいんだろうけど、僕としては食べ物ではなく映画を観て感じる気分と合わせたい。

ということで、今回「GREEN BOOK」とペアリングしてぴったりだと感じたワインはコチラ。

©Vinos Yamazaki Co.Ltd. All Rights reserved.

【シャトー・レゾリュー 赤ラベル(赤ワイン)】
産地:フランス ラングドック地方 ACコルビエール
品種:カリニャン45%、グルナッシュ40%、シラー15%
買ったところ:ヴィノスやまざき

最初こそ少し渋みを感じるけど、すぐに果実の旨みがふわ〜と広がってくる、普段あまり飲みなれない人にもオススメできるワインだった。おじさんふたりの物語で果実味?と少々アンマッチな気がするが、ポイントはそこじゃない。マッチしたのは飲み込んだ時にほのかに残る甘み。(※決して甘口ワインではない。あくまでも口当たりだけ)

このほのかに残る甘い口当たりこそ「GREEN BOOK」にぴったりだと僕は思う。「GREEN BOOK」は何度も述べている通りコメディだが、一定の苦味も含んでいる。人種差別があることを理解している当のふたりでさえ「は?」と目と耳を疑うような出来事が繰り返される。「うわ、ひどい……」の連続だ。

そうした苦味があるからこそ、ふたりのユーモア溢れるシーンや変化していく関係性が際立ち、なんとも言えない優しくて温かい気分になるのだが、このワインのほのかな甘みはまさに「あったかいな〜」という気分を盛り上げてくれるものだった。世の中は嫌なやつも多いけど、そのぶん、いい人だって多いんだ。そんなことを思うひと時にしてくれた。(ただ、果実味と甘い口当たりでゴクゴクいけちゃうので、飲み過ぎにはご注意を)

まだ「GREEN BOOK」を観てない人は、AmazonプライムビデオやNetflixなどの動画配信サービスで配信中(2024年10月現在)なので鑑賞してみてはどうだろうか。その際はご紹介したワインと、ぜひ一緒に。


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