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真実こそ嘘の中に 『アメリカン・フィクション』

55点/100


基本的には、これぐらいの点数だと思って欲しい。

フェイブルズマン方式をとっている。

面白いものは、面白く。

つまらないものは、つまらない。

x軸が点数、y軸が満足度なら、S字を書くような点数表をイメージして欲しい。


ペイントで、適当に書いたイメージ


今作は、普通より、やや面白い程度だったので、55点という点数になっている。


アフリカンアメリカン


昨日のアカデミー賞作品賞にノミネートされていた『アメリカンフィクション』。

日本では、劇場公開もなく、アマプラでの独占配信となっている。


本作の話は、ジョーダンピールの『GET OUT』のコメディ版といえる。

"黒人だから、貧乏だろう"

"黒人だから、頭が悪いだろう"

というぼやっとした先入観に対しての話だ。


偏見なく話そうと努める大学教授で、アフリカンアメリカンの主人公 モンクが

ニ〇ガ(黒人を指す言葉)をホワイトボードに書いてしまう

ドイツ系の生徒に"お前の祖先は、ナチだろ"と言ってしまう

を起こし、大学を強制休暇処分になる。

そんな彼が家族やお金の問題に直面し、白人にうける黒人(スタッグRリー)になりきって、本を書いて、ベストセラーになってしまったことが本作のあらすじ。


Roe v Wade


モンクの妹のリサがジョークを言う。

「あなたは岸から数メートル離れたボートに乗っていて、高価なスニーカーを履いていますが、Uber が止まっているのが見えたので、急いで岸に着く必要があります。なぜこれが法的な問題なのでしょうか? それはロウ対ウェイドの問題だからだ。」

気になったので、調べてみた。

row 漕ぐ。
wade 徒歩。

高価な靴を汚さぬようボートを漕ぐか、靴を汚してでも、浅瀬を歩くか。
選択を余儀なくされる。

roe v wadeは、米国裁判所が中絶を受ける権利を保護する判決を下した事件の名称。

中絶医のリサが言うから面白いジョークなのかなと思われる。


コミュニティーによって変わる価値観


実家にモンクが帰宅し、家政婦のロレインと話すシーン。

モンク
「俺は、太っただろ」

ロレイン
「そんなことないですよ。アーカンソー州ならミスコンに出れます。」

モンクのママ
「あら、あなた太ったわね」

これは、

コミュニティーによって、存在価値が変わる。

ことを表している。

このような皮肉が随所にある。


ロレインが結婚し、引っ越しをする際、黄色いエプロンを持って行かないのもモンク一家を出たら、一人の女性だからだ。

モンクの本がアフリカンアメリカン文学の棚にあるのも、カテゴリによる決めつけだ。

モンクが兄のクリフを原始人と言う。白人から黒人に言ったら、差別用語だが、家族同士だと、リサが言ったように、モンクが兄弟に対して、ただ、見下す会話になっている。

老人ホームで、モンクのママが老人と思われたくなくて、暴れる。


多民族国家では、職場や学校、家庭などで、これが頻繁に起こりうるのだろう。


バンクシー展


観ていると、何かに似ていると既視感を覚える。

バンクシーっぽい。


バンクシーの作品の芸術的な部分だけを純粋に評価出来る人間がいるのだろうか?


誰も顔を知らない。

各国で、壁に政治的なメッセージを残す。

その落書きがサザビーズのオークションで、何億の値がつく。

彼は、資本主義的なものを嫌っている。


という非常に皮肉なイメージと作品が合体して、商品化されている。

今作のスタッグRリーと重なる部分が大いにある。


私事だが、以前、バンクシー展に行ったことがある。

そこで、お土産ショップに行った時に、ふと感じた。

"このTシャツの利益は、誰の懐に入るのか?"

彼の映画作品に『exit through the gift shop』がある。

直訳したら、"土産ショップを素通りして、出てけ"

スマホで、調べたら、運営しているのは、バンクシー本人ではない。

まぁ、当然なのだが。

大手広告代理店やテレビ局などがスポンサーになって、コレクターなどから預かり、展示している。

お土産ショップには、

"バンクシーTシャツ"

"バンクシーメモ帳"

"バンクシーゴフレット"

などが並び、たくさんの人がレジかご片手に買っている。


”しまいに、バンクシー饅頭まで、あるんじゃないか?"

と思いながら、店の中で、一人、大笑いしてしまった。


周りから見れば、奇々怪々かもしれない。

自分も周りを奇々怪々と思っている。

今作は、そんな変なねじれ構造を感じられる映画だなと思った。


感想


最後の撮影所のシーンで、ピースサインを送る奴隷の黒人。

多様性は、先入観と共に生きるしかないというメッセージを感じる。


今作がアカデミー賞作品賞にノミネートされたことが最大の皮肉。

アカデミー賞は、数年前に、多様性における審査基準を設けた。

本作に登場するプロダクションのアーサーが

"白人は、真実じゃなく、免罪符が欲しいんだ。"

と言う。

チャイルディッシュガンビーノの"This is America"すら、皮肉に聞こえる。


ここまで、読んで頂き、ありがとうございます。
愛してるぜ!!

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