監査法人からスタートアップへ転職した感想
こんにちは!よしともです。
監査法人からスタートアップに転職して2年半が経ちました。
転職時に入社エントリも書きましたが、当時からまた違った景色が見えてきたので改めてnoteにしたいと思います!
今回は「監査法人からスタートアップに転職したメリット・デメリット」という観点から書きたいと思います!
1.メリット
1-1.キャリアの幅が増える
監査法人のキャリアは、通常、会計監査の専門性を深めることに特化しています。専門性の深化とトレードオフにキャリアパスは比較的狭くなりがちで、基本的にパートナー(最上位職)を目指すことになります。
一方、事業会社ではキャリアの幅を大きく広げるチャンスがあります。例えば経理、財務、経営企画、内部監査、IRなどいろんな業務(職種)があります。
例えば、私は「経理責任者」としてスタートアップに転職しました。当社は月次決算などの経理業務に注力していましたが、今は財務(資金調達)、経営企画(事業計画の作成)、IR(株主とのコミュニケーション)、上場準備など会社の成長フェーズに応じていろんな業務に携わっています。もちろんこれらは監査法人で経験したことはなく全てが初めてでしたが、1つずつクリアしていく中で自分のスキル(武器)が増えているのを感じます。
また事業会社に転職する会計士はCFOを目指す方が多いですが、最近は営業責任者へキャリアチェンジするケースもちらほら聞きます。
1-2.事業会社の業務を深く知れる
監査法人はクライアントが作成する財務諸表(決算書)に基づいて監査を行います。このプロセスでは、財務諸表が会計基準に準拠しているかどうかを確認することが中心であり、その数字がどのようにして導き出されたか、その背後にあるビジネスの実態まで深く掘り下げるのは困難です。結果として、ビジネスの背景やそれがどんな意思決定に基づいているかまでは見えにくいのが実情です。
一方で、事業会社ではどんなプロセスで作り上げられていくかを肌で感じることができます。特に、私は全ての会計仕訳を承認しているため、その数値がどのような取引に基づいているのかを俯瞰的に見ることができます。また取引の裏側にはいろんな戦略があり、営業やプロダクト責任者と話すことでその背景も理解することができます。つまり「会計」だけでなく「事業」を理解することができ、結果的に戦略的思考やビジネススキルもついたと実感しています。
1-3.自分の意思で進められる
監査法人はクライアントに指導、提案することが主な業務ですが、これらが実行されるかは、最終的にはクライアントの意思決定に依存しています。私自身、この点にフラストレーションを感じていたもの転職理由の1つです。せっかく提案したとしても実行の過程や結果に直接関与することができないことにもどかしさを感じていました。
反対に事業会社では、単にアドバイスするだけではなく、「自分の意思」で仕事を進めることが求められます。経理処理の判断から資金調達の交渉、事業計画の作成に至るまで、全てにおいて主体的に関与し、実行することができます。当然責任もついて回りますが、自分の頭で考えたことが直接会社の成果につながるため、大きなやりがいを感られます。
また役職者であれば日常業務にとどまらず、会社の事業方針や組織文化といった、より大きなテーマにも関与することができます。この「経営の関与」は監査法人では絶対に経験することができない領域です。
2.デメリット
2-1.経験がn=1になってしまう
監査法人の良いところはいろんなクライアントに携われることです。ビジネスモデルに始まり、会計処理や開示など他社事例を知る機会がたくさんあります。これはスタートアップに転職して改めて感じました。
一方で、スタートアップ(に限らず事業会社)はn=1、つまり自社しか経験値として溜まらないため、違う業界へキャリアチェンジした時に役立たない可能性があります。例えば自動車会社で経験を積んだとしても暗号資産会社でそれが活きる可能性は低いでしょう。また日常業務においても自社のやり方が当たり前になってしまうため、ベストではないやり方を(気づかずに)続けてしまう可能性もあります。
この点、私は副業でカバーしています。n=1にならないよう、いろんな会社と接点を持ち、本業、副業それぞれのノウハウを還元するようにしています。また定期的に勉強会や交流会に参加し、人脈作りはもちろん、他社事例の収集にも努めています。
2-2.専門性を発揮する場面が限られる
スタートアップやビジネスモデルが単一の会社では複雑な会計基準が必要なケースがほとんどないため、監査法人で培ってきた専門性を発揮する場面も限られます。
ただし、私のようにスタートアップへ行く人は「会計を深めたい」と思って転職することはあまりないと思うため、問題ないと考えています。
2-3.年収が下がる可能性がある
監査法人での職位にもよりますが、スタートアップに転職すると年収が下がる可能性があります。実際に私も1/3〜1/4くらい下がった記憶があります。
しかし最近はスタートアップ界隈の盛り上がりから転職しても年収キープ、よければアップするケースもあるようです。またスタートアップは人的リソースが限りからポジションも空いているケースが多く、実力次第で上を目指すこともできます。
さらにスタートアップでは「ストックオプション」というアップサイドが無限の報酬があります(笑)。あまりここに期待するのは危険ですが、入社時に交渉するのも良いと思います。
年収が下がるのが嫌という方は「サインアップボーナス」という入社一時金を交渉するのもアリです。別記事にまとめていますので、読んでみてください。
2-4.昇進に時間がかかる可能性がある
あまりスタートアップでは当てはまらないことが多いですが、事業会社の一般論として書きます。
事業会社(特に上場企業)では一通りのポジションが埋まっていることが多く、仮に実力があったとしても、その人が転職や昇進するなどしないと自分も上がれないことがあります。また加えてその席を巡って同僚とも競う必要があり、昇進は時間がかかることが多いようです。そのため、特定の職位に長期間留まる可能性もあり、キャリアアップを目指す上での障壁となり得ます(そんな時は転職をオススメします)。
2-5.業務がルーティン化する
これもスタートアップでは当てはまりにくため、一般論として書きます。
事業会社(特に上場企業)では良くも悪くも日常業務がルーティン化しているため「気づいたら何年も同じ業務をしていた」なんて可能性があります。自分から新しい仕事を作ったり、異動の希望を出したり、学びに行かないと、仕事のモチベーション低下につながることも考えられます。
スタートアップは人が限られている分、自分が新しい業務を作り出したり、別の業務にチャレンジする機会があります。先に書いた通り、経理にとどまらず、財務や経営企画などいろんな業務に手を出しています。
3.まとめ
最近はスタートアップに興味を持つ会計士も増えてきました。が、会計士は保守的な方が多いため昨今のスタートアップ界隈の盛り上がりに比べてまだまだ転職先として選ばれるケースは少ないように感じます。
この記事が「スタートアップに転職しようか迷ってる」「実際に行ってみたらどうなの?」という方に参考になれば幸いです!
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