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現実に帰るのでココを去ります|掌編小説 #シロクマ文芸部
三月に入った。
もうやめようかなと思った。
これまで1年間続けてきたけど、
最近は書いても書いても気持ちが空しくなるだけ。
頑張って自分の内面までさらけ出したエッセイ。
かなり面白いと自信を持って投稿したショートショート。
レポーターになりきって書き上げた旅行記。
どれもこれも大した反応もなく、秒でその他大勢の記事にすり替えられる。
こんなこと、続けていて意味あるのか?
誰にもまともに読まれないオレの文章なんて世の中には役に立たないし。
そもそもこの世界自体が仮想空間。現実のオレには何も影響ない。
3月は別れの季節。
辞めるタイミングとしては最適だ。
オレの他にも似た境遇で辞める人も続出するだろう。
あーもう辞めてやる!こんなもん辞めてやるぞ!
もう最後だし、「現実に帰るのでココを去ります」と題して、思いの丈を書きまくってやる。そうだ、書いて書いて書きまくる。
どうせ誰も読まれないし共感されないし個人攻撃じゃないから迷惑もかからんだろ。
月末をもってアカウントごと消してやる。
よし、今月をもってオレはこの舞台から去る。
さて、どんな内容のことを書こうか。
ん?いざ書こうとしたら、何にも思い浮かばない。
そりゃあそうだ。
ほとんどスキなんて付かなかったし、コメントやフォローなんて皆無だ。
ただオレの書きたいものを書いて投稿しただけ。
完全に自己満の世界。
そう考えると空しさだけが残る。
その気持ちをえんえんと書いて終わりにするか。
思い出したが、オレが書いたショートショートで、一人だけコメントが入っていたな。
たしかこんな内容だったような。
「にゃろまるさんのショートショート、メチャクチャ好きです!これからの作品も楽しみにしています!」
惚れてまうやろー
いかん!
こんなコメントだけで惚れるとかありえないし、痛すぎる。
相手は女のようだったが、現実は女とは限らないし。
モテない男はこういったことだけで騙されるんだろうな。
でも、このコメントは正直嬉しかったな。
たった一度だけのコメントだけど。
結局コメント返ししなかったからな。
オレって薄情な男だな。
感謝もしないで何様なんだ。
かなりのフォロワーがいた女だった。
フォロワー皆無のオレなんかにコメントしてくれるなんて。
惚れてまうやろー
やはりな。
若干好きになっていたかもしれん。
いや、きっと好きだったんだ。
でもオレはもうすぐ辞める。
せめてその女にコメント返ししよう。
オレが夕飯を食べながらスマホをいじっていたら、母ちゃんが覗いてきた。
「タケシ、noteやってたの?あら?そのアカウント、母ちゃんなんだよ!凄いでしょ、マン垢よ!インフルエンサー!」
お前かーーーい!!
でも母ちゃんでよかった。
だって、母ちゃんが世界一好きだから。
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(1,111文字)
#シロクマ文芸部 に参加します。
企画内容
「三月に」から始まる
小説・詩歌・エッセイなどを
自由に書いてみませんか?
みんなで読み合うお遊び企画です。
締切は3/2(日)23:59。
記事には #シロクマ文芸部 をつけてください。
他の参加作品1つ以上に
コメントするのがご参加条件です。
※コメントは過去のお題の作品でもOK!
この話はフィクションですので、noteを辞める予定はないですし、スキやコメント、フォローで惚れたりしませんので、これまでどおり付き合っていただければ幸甚です😂
読んでいただきありがとうございました🍀