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10年続いた踵の痛みが「3ヵ月」で完治した話
note記事4回目を執筆いたします。
横浜市神奈川区の整形外科【吉野整形外科】院長の吉野匠です。
私は整形外科医であり、特に「足の外科」を専門としています。
足の専門医は、全国でも約1,000人と言われており、とても特化した領域です。
今回は『10年続いた踵(かかと)の痛みが「3ヵ月」で完治した患者さん』の事例をお伝えしたいと思います。
どの整形外科でも「足底腱膜炎」の診断。しかし良くならない……
あるとき、北関東のある県から来院された患者さんがおられました。
私は「お住まいの地域から当院まで随分距離がありますが、なぜ来院されたのでしょうか?」と伺いました。
すると、
「踵(かかと)の痛みが10年前からあり、地元の整形外科を6か所まわったのですが一向に良くならずに困って来ました。」
ということでした。
更に話を伺うと、どの整形外科でも「足底腱膜炎」と診断、治療の流れも大体同じだったようです。
<治療の流れ>
① まずは湿布を貼って様子をみましょう
→それでも痛みは改善せず
② それでは痛み止めを出しますので、しばらく内服すれば良くなる筈です。様子をみましょう
→それでも効きません
③ しつこい痛みですね、それではステロイド注射を打ちましょうか?
→注射は大の苦手でしたが仕方がなくお願いしたところ少し効いてきたのでこれで治る、と期待したのですがその喜びもつかの間、数日で再び痛みがぶり返してしまいます
④ 注射でも治らなければをギプスで固定して、しばらく松葉づえで生活するしかないですね
→それは仕事の都合上、難しいです……
以上の流れで、次々に転院を繰り返し、踵の痛みに10年苦しめられてきたということでした。
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踵の痛みが続く「悪循環」の原因
当院については、インターネットで「足の外科」を標榜していたことで、知っていただき来院されたということでした。
さっそく荷重位でのレントゲンを撮ると、踵の痛みの原因である「足のアーチ構造のつぶれ」がみつかり、同時に踵に「踵骨棘(しょうこつきょく)」という骨の棘もありました。
これはアーチのつぶれにより足底腱膜が繰り返し踵の骨を引っ張っているために生じるものですが、骨棘自体は痛みの直接的な原因ではなく、そこへ付着している足底腱膜の炎症が痛みの原因となっているのです。
これにより、歩くたびに踵に痛みが発生していたわけです。
そして以下のような悪循環が発生していたのです。
① 歩くたびに踵が痛い
② 痛みが出ないようにと体重を外側に逃がして歩くことで足底腱膜がのびないようにする
③ それによって足底腱膜が縮まり固くなる
④ そこにふたたび体重をかけて歩くと足底腱膜がより強く引っ張られてさらに痛みが増してしまう
このような悪循環があるなかでは、湿布や痛み止めの対症療法を行っても、いずれ痛みが戻ってきてしまいます。
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痛みの悪循環を絶つための2つの提案
この悪循環を改善するために、患者さんには2つの提案を行いました。
① アーチサポート(インソール)による治療
アーチサポートというインソールを使用して、つぶれている足のアーチを下から支え、足底腱膜が引っ張られないようにしました。
② 固縮した足底腱膜のストレッチ
患者さん自身で行う、足の裏(足底腱膜)のストレッチを毎日行っていただきました。
具体的には、5本の足の指を片方の手で反らせ、それによってピンと張られた足底腱膜を反対側の手の親指で揉みほぐすというやり方です。
患者さんは提案に納得してくださり、これが最後の望みをかけた治療だという意気込みで取り組んでくださいました。
すると、10年続いた踵の痛みがわずか3ヵ月で完治したのです。
患者さんには泣いて喜んでいただきました。
この事例も前回の記事で書いた「人知れず悩む足の疾患」の一例となります。
これまで何度も記事で書いてきましたが、「足のアーチ構造」がとにかく重要なのです。
この記事を読んでくださっている方や、その周囲の方で「足の異常を感じているけど原因が分からない、診断がつかない」という方がいらっしゃれば、ぜひ足の外科に相談されることをおすすめします。
今回の記事は以上です。
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どうぞよろしくお願いします。
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吉野整形外科
院長 吉野 匠
©Yoshino-seikei