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RAGE  自由社会が撲殺される日

RAGE  自由社会が撲殺される日

寛容の代わりに非寛容が、言葉の代わりに暴力が世界のルールになるのは、ほぼ確実になっている。

アメリカの大統領選でいえば、ついこのあいだまで、やや勝ち誇ってさえいた民主党のブルーの輝きが急に褪せて、完全な五分、今日(10月30日)の朝のニュースでは激戦州だけに焦点を与えると、トランプ勝利の形勢ということでした。
もっとも伯仲した状況を反映して猫の目のようにメディアの分析と予測が変わる今回の大統領選

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混迷社会と日本語(2020)

混迷社会と日本語(2020)

ギリシャは税金がないので、大変に良い国だ、という話が流行ったことがある。

もちろん、冗談だが、ただの冗談ではなくて、実際にエーゲ海の島に移住する連合王国人が続出した。

どういうことかというと、ギリシャの税務署は、たいへんな非効率で、なにしろ、誰の書類がどこにあるのか、誰にも判らない。

マジメな人…話では日本の女の人ということになっている…が、あまりに何年も税金を支払えという挨拶がないので、つ

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マスキュリストたち

マスキュリストたち

正面から民主制を否定するという大胆さで、独裁肯定者としてのトランプ=ヴァンス=マスクの三者会盟ばかり注目されているが、この3人の反民主主義カルテルにはマスキュリズム(Masculism)という大きな原動力が秘匿されている。

日本語では普及している語彙かどうか心許ないので、マスキュリズムという言葉について説明します。

マスキュリズムは、1993年に出版された
The Myth of Male P

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裂けた星条旗 トランプを生みだしたもの (2018)

裂けた星条旗 トランプを生みだしたもの (2018)

フィッシャー・ブラックやショールズたちがデリバティブの理論をつくりあげたときには、彼らは、まさか、自分たちの「それまでは群衆心理のふらふら歩きにすぎなかった」経済に初めて数学理論の裏付けを与えた仕事が、将来、自由主義と民主社会を破壊するとは思っていなかっただろう。
それどころか、Terri Duhonたち、すぐれた数学の才能をもった若い一群のひとびとが確率微分方程式をツールとした数学の手法を用いて

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プラスティックミート文明

プラスティックミート文明

(2015年5月15日)

すべてはマクドナルドから始まった、と言ってもよい。
失敗しては職を転々とする絵に描いたような52歳の人生の失敗者レイ・クロックは、乾坤一擲、5種類のミルクシェイクを同時につくることが出来るという触れ込みのマルチミキサーをレストランに売り込むためにアメリカ中を旅して歩く。
どうも、この商売も、うまくいかないよーだなー、もうわしの人生おしまいでは、と思いながら、へろへろよれ

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フクシマへ 最終回 

フクシマへ 最終回 

夢を視た。

目の前のもともとは原っぱだったはずの落葉松の森に囲まれた広大な囲繞地には黒い水が溢れて、何千という人が溺れている。
口々になにか叫んでいるのに、それはたしかに日本語なのに、なにを言っているのか判らない。
見開いた目や、睨み付けてくる目をみれば、なにごとか圭一を非難しているのは判るが、
なにを言っているのかが判らない。

なにが悪かったのか、あれ以上のことが出来たのか、
なにを非難され

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神学者Lloyd Geeringが考えていること

神学者Lloyd Geeringが考えていること

「言葉も進化してきたのだ」と言う。
「言葉が進化したことによって、神も進化してきたということができる」
「人間の言葉はつまり神の言葉だからね。言葉が進化すると、神も進化する」
と話していて、聴いていると、まるで大庭亀夫の茶飲み話を聴いているようです。

99歳になったLloyd Geeringは believe in という表現を例に挙げて、自分が子供の頃 は、I believe in the d

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幽霊たち

幽霊たち

夏になると怪談が、あそこでもここでも話されるのは、日本の奇習であるとおもう。
初め知ったときには、怖いのと涼しいのと、なんの関係があるのか、さっぱりわからなくて面食らった。
幽霊が出てきて、納涼であるという。
ノーリョー?
怖いとノーリョーするんですか?と間延びしたことを、こちらが訊くので、聞かれたほうも、なんとなく間延びした顔になっている。
いまでもほんとうは、いったいどういう因果関係になってい

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いつもの朝に

いつもの朝に

怒りんぼベーカリー、という。

主人らしい女の人が、いつも不機嫌な顔で、およそ朝のベーカリー向きでない厳しい態度を保持しているからで、特に店の名前がGrumpy Bakeryというわけではありません。

キューバン・サンドイッチが滅法うまいので、ときどき買って、店でトーストしてもらって、浜辺で食べます。
コーヒーは、このあたりにはおいしいコーヒーを淹れてくれる店がないので、自分たちで淹れていく。

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文明への郷愁について

文明への郷愁について

アプト式列車に乗りたかったとおもうことがある。
スイッチバックであれば、もっといい。

その頃のイメージではスイスの山を越えるのだったが、日本でいえば、大井川線でもいい、碓井でも構わない。

ギリギリと音を立てて軋む歯車の車輪の音を訊きながら、竹の箸を使って、駅弁に舌鼓を打つ。
ほんとに舌鼓を打つと、西洋なら誰も一緒に食事に行ってくれなくなってしまうが、碓井ならいいわけで、想像すると釜飯の、益子焼

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