【詩】閉ざされた円環の向こう側から
閉ざされた円環の向こう側から
未知なる情報がやってくる
隔てられた層を超えて
異次元からさしこまれる匙は
「匙」という全体像を知られることのないまま
正体不明のXとして空の彼方から現れる
点は線になり
線は巨大な銀色の物体Xとなって世界を震撼させ
ゆっくりと動きながら徐々に小さくなり
消失点の向こう側へと消えてゆくだろう
わたしたちはその全容を知ることができない
こちら側にいるわたしたちは誰も
異次元から不意にさしこまれる物体Xを
「匙」として認識することはできないのだ
情報としてわたしの中へ流入するもの
いや、情報となる前の発光現象
内的宇宙の中に突如として
圧倒的な光の束が流れ込んでくる
わたしは何を知っており
何を知らないのか
記憶の深海を音もなくよぎっていく魚影たちは
音のない世界で何を語りかけているのだろう
わたしの中にやってくる未知の情報は
無限の宇宙につながっている
円環の外からわたしの中に
無限の宇宙が流れ込んでくる
ウロボロス
しかしそれは完全性という名の牢獄ではなく
未知に向かって開かれ、創造性を孕んだ動的な世界だ
閉じているのにどこかでゆるやかにつながっている
知っている言葉の限りを尽くしても表現しつくせない世界
わたしはアンテナとしてここに在り
未知の情報を受信する器
見えぬものを世界のおもてに顕すため
また伝えるために
わたしは言葉という不自由な道具で顕し続ける
誰に伝わらないとしても
ひとは自分の知っていることを伝えるために
言葉を使おうとする
しかし、わたしは知らないことを形づくるために
言葉を使おうとしている
すでに何度も組み立てられてきた文字列ではなく
新たに文字列を再構成したいという情熱
いわく言いがたいものを表現したいという情熱
その情熱に駆り立てられて
閉じた円環の向こう側を見つめている
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