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『ビッグバンからあなたまで』(シンシア・ストークス・ブラウン 著 亜紀書房 2024)読書感想文

「ビッグヒストリー」と呼ばれる教育コンテンツは、宇宙の誕生から人類の進化そして現在までの歴史を多様な学問分野の視点から総合的に学ぶ試みである。ビル・ゲイツもビッグヒストリーを絶賛し、巨額の資金を投資した。ビッグヒストリーについては、以下の記事が参考になる。

本書もビッグヒストリー関連の書籍である。著者のシンシア・ストークス・ブラウンは教育を米国の高校・大学にて、ビッグヒストリーを用いた教育を長年行ってきた学者である。本書は彼女が高校生向けに、ビッグヒストリーについて簡潔にまとめたものである。

1章でビッグヒストリーの概要について説明された後、2章~10章では各スレッショルド(138億年の物語における主要なターニングポイントのこと)の内容について説明される。その後、11章で未来について、12章ではビッグヒストリーの意味ついて書かれている。

本書の特徴の一つは、各章の終わりに「知のフロンティアにおける問い」が設けられていることだ。例えば、「ダークマターとは何か?(3章)」「農業に目を向けたことは人間がこれまで犯した最大の過ちだったのか?(9章)」などだ。「知のフロンティアにおける問い」があるおかげで、最先端研究における謎や論争点など、研究者の視点を感じることができる。

また、「○○とあなた」という項目が多くの章で設けられていることも特徴である。「細菌とあなた(6章)」や「旧石器時代とあなた(8章)」などが例である。これらは、それぞれの章の内容をなぜ学ばねばならないのか?読者とどう繋がっているのか?を考えるためのヒントを与えてくれる。

加えて、本書の中では、ジェーン・グドールジャレド・ダイアモンドなどの13人の研究者が紹介されていることも特徴である。彼らの「生き様」や研究成果はビッグヒストリーの内容に付随する良いスパイスになる。

本書では、全体を通して、分野を問わない様々な問いが散りばめられている。言い換えれば、著者から読者(高校生)への問いかけが多い。ビッグヒストリーを通して、様々なことを考えてほしい、という著者の想いが伝わってくる。この性質より、高校や大学の教養科目といった教育現場でも本書は活用できるだろう。

本書は高校生向けに書かれただけあって、コンパクトで読み易い内容だった。一方で、(『ビッグヒストリー われわれはどこから来て、どこへ行くのか』と比べて)図表の数が物足りなかったとも感じた。ただ、この点はコンパクトさとのトレードオフなので、致し方ない面もある。

他方で、参考となるURLが多数掲載されている。実際に、それらのページを参照すると、大変勉強になった。しかし、毎回URLを直打ちせねばならなかったのが少々面倒だった。参考となるネット資料はQRコードで誘導するか、リンク集をまとめた補助サイトを設けることで読者はより学びを広げられるかもしれない。

いずれにせよ、様々なネット資料や参考書を開きながら、ビッグヒストリーについて学ぶことに際して、本書は強力な軸足になることは間違いない。

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