『なぜ科学者は平気でウソをつくのか』(小谷太郎 著 フォレスト出版 2021)読書感想文
今のところ、研究の世界は捏造などの研究不正(ウソ)と縁を切れていない。世間を騒がすような研究不正も登場する。そのような研究不正は元々、研究業界やマスコミを歓喜させる大発見だった。
本書は、常温核融合やSTAP細胞などの科学史に刻まれた研究不正について書かれた新書である。
研究不正は一時、大発見として取り沙汰されてしまう。しかしながら、後々、論文内の不可解な記述や追試の失敗などにより、各所から疑念が浮かび上がり、ウソであることが暴かれてしまう。
本書では、大発見として発表されてから研究不正だと暴かれるまでの過程が説明されている。著者はこの過程を科学の「免疫機能」と表現している。研究不正という事例を通して、科学や研究が兼ね添えている特徴を知れる点も本書の特徴であろう。
また本書では、取り上げられている研究不正の背後にある基礎知識についても解説されている。分野の基礎知識を理解することで、なぜ不正を犯した研究者はウソをつきたくなってしまったのか、なぜ発表されたウソが大発見として取り沙汰されてしまうのか、が理解できる。
読み進めると分かるが、研究不正をしてしまった研究者には、刑事ドラマの犯人のような「そうするしかなかったんだ!!!(号泣)」といった壮絶な背景がない。なので、「なぜそんなウソをついたのだろう?」と何度も首をかしげてしまう。「もしかして、本当に平気でウソをついてしてしまっているのか!?」とも感じてしまう。
もしかしたら、どんな科学者の中にも「ウソをついて大発見を報告してしまおう」という誘惑が潜んでいるのかもしれない。