見出し画像

第4回 2024年のブロッコリー栽培振り返り!〜学んだことは役に立ったのか?

こんにちは、2022年に新規就農したさいこうファームの吉田です。
私たちの主力野菜はブロッコリーなのですが、2022年、2023年ともに病気が蔓延。ブロッコリー農家のつもりが、現実は散々なものでした。

「今年こそ3度目の正直」と気を取り直して、コルテバ・アグリサイエンス日本株式会社さんの協力を得ながら、ブロッコリー栽培についての学びをまとめて発信してきたのが「東大農学博士、一人前農家への研究道!!」マガジンです。

第1回▶ブロッコリーの病気について農学博士の意地のリサーチ。

第2回▶コルテバ・アグリサイエンス日本株式会社の専門家の方々へ農薬の上手な使い方について教えてもらいました。

第3回▶地元の美幌町にある網走農業改良普及センター美幌支所の方々に、オホーツクでのブロッコリー栽培管理のポイントについて伺いました。

これらの学びを踏まえて、さいこうファームなりの2024年の防除や管理方法のベースも作りました。

さて、学びを実践した2024年のブロッコリー栽培の結果について今回はご報告します。


まずは、結果発表

2024年のさいこうファームのブロッコリーは……。

過去最高の収穫量でした!!

ご協力いただいたみなさま、ありがとうございました!
収穫量でいうと、2022年の2.3倍、2023年の4倍となりました。

「これまでがひどすぎただけでは?」と言われてしまえば、ぐぅの音も出ないのですが、定植したブロッコリーの7割弱は収穫できたので、上出来なのではないかと思います。

この経験を来年につなげ、そして、他の農家さんの参考にもしていただくために、今シーズンの改良点と実際の結果について振り返ります。

今シーズンの栽培方法の変更点

これまでの3回の記事にまとめた学びを踏まえて以下の点を変更して今年のブロッコリー栽培をスタートしました。

<今年の変更点>
品種の変更
:すべての種を『おはよう』から『SK9-099』に変更。
防除の基本形を構築:栽培時期に関わらず、ベースとなる防除方法を策定し実施。 
農薬散布濃度の変更:農薬の使用濃度に幅がある場合(例:2000〜4000倍など)、濃い濃度に合わせて散布。
カルシウム剤の散布:各防除に合わせて必ずカルシウム剤(液肥)も混用して散布。
施肥の変更:遅効性の肥料(ジシアンジアミド系)をやめて通常の化成肥料に変更。これまで多めに散布していた施肥量も北海道施肥ガイドの基準値まで低減。

2024年のブロッコリー栽培振り返り

さいこうファームでは、地元のスーパーさんに定期的にブロッコリーを出荷しているため、一度にすべての種をまくのではなく、細かくステージを区切って栽培しています。
2024年は3月22日に最初の種まきを始めて、7月24日まで基本的には週に1回、19ステージに分けて種まきをしました。

3月22日は雪がまだ積もっている中の種まきでした。

ここでは序盤戦、中盤戦(前半・後半)、終盤戦の4つに区切って振り替えります。

序盤戦(1〜4ステージ:7月上旬〜中旬に収穫)

シーズン序盤戦となる1〜4ステージ。

栽培方法を大きく見直したので、どういう結果になるのか?日々ソワソワしながら、ブロッコリーの生育を見守っていました。

ブロッコリーの定植風景。コルテバ・アグリサイエンスの大橋さんも手伝いにきてくれました!

最初に収穫に入ったのは7月5日です。
初回から順調に収穫することができてとてもホッとしました。

中盤戦前半(5〜8ステージ:7月下旬〜8月上旬に収穫)

序盤戦の順調なブロッコリー収穫に安心したのもつかの間、暗雲立ち込めてきたのが5〜8ステージです。

この時期は、序盤とは打って変わって、ブロッコリーの成長が悪くなってきました。
生育のばらつきが大きく、順調に育つものもあれば、花蕾が小さなまま老化してしまうようなものも。

とはいえ、2022年、2023年に見られた病斑のようなものはあまり見られませんでした。
困った私たちは、第3回のときに相談に乗っていただいた普及員さんに見に来てもらいました。

その結果、分かった原因は……。

雑草の生えすぎ。

もちろん分かっていたことですが旺盛な雑草がブロッコリーの生育不順を引き起こしていたようです。

お見せするのが恥ずかしい、雑草生えすぎブロッコリー畑。

中盤戦後半(9〜14ステージ:8月中旬〜9月下旬に収穫)

病気ではなく雑草にやられていたことを受け止めて、気を引き締めて除草に望んだ結果が出てきたのがこのあたりです。

次第に安定して収穫できる日々が戻ってきました。

9月上旬に、近隣の先輩農家さんたちの畑で黒すす病の発生が問題になっていましたが、さいこうファームではほぼ病気が出ることなく乗り切ることができました。
さいこうファームだけ病気が出ない日が来るなんて本当に驚きです。

シーズン前にまとめた管理や防除方法を忠実に続けていたことが効果を発揮してくれていたのだと思います。

しっかり花蕾が詰まったブロッコリーができていました。
一度に1000玉以上のブロッコリーを収穫することも!

終盤戦(15〜19ステージ:9月下旬〜11月上旬に収穫)

シーズン終盤戦は寒くなっていく中での収穫です。

気温の低下につれて、定植から収穫までの時間がかかるようになってきましたが、収穫自体は順調に進んでいました。

しかし、11月に入り最低気温が常に0℃を下回るようになってきて、ブロッコリーの生育は完全に足踏み。18、19ステージの収穫は断念し、11月8日の収穫を最後に、今シーズンのブロッコリー栽培を終えることにしたのでした。

最終的には16ステージ目(7月3日播種、8月13日定植)まではほぼ収穫できて、17ステージ目(7月16日播種、8月21日定植)は半分くらい収穫できました。来年は、終盤戦に入るブロッコリーの播種と定植の間隔を週2回ぐらいのペースに縮めてみようかと考えています。

収穫最終日は周囲の木々の葉も落ちてすっかり冬模様でした。

来シーズンに向けて

営農開始3年目にして、一番安定して収穫できた2024年でしたが、いくつかの反省点もありました。以下に今シーズンの変更点とその結果と新たな反省点と対策についてまとめます。より良いブロッコリーづくりを目指してこのまとめを来シーズンに活かしていきます。

<今シーズンの変更点とその結果>
品種の変更:全ステージ『SK9-099』を使用することに問題はなさそうでした。今後も継続予定です。ただ、耐病性が高いとされる『あらくさ53号』も気になっています。(ホクレンのレポート
防除の変更:今シーズンは自作した基本防除方法に従い、各農薬の指定濃度の濃い濃度に合わせて防除を行いました。その結果シーズンを通して病気はほぼ見られませんでした。一方で、暑い時期(特に中盤戦前半)はアオムシなどの害虫を抑えきれないことがありました。これについては雑草が多すぎたことが影響している可能性も考えられるため、今後は除草対策をしながら様子をみていきます。
カルシウム剤の散布:比較試験をしていないため、散布をしない場合の様子はわかりませんが、ブロッコリーを健康な状態にする効果はあったと考え、今後も継続的に使用します。
施肥の変更:遅効性肥料から通常の化成肥料に変更し、散布量も低減しました。施肥量が減ることで花蕾の締りが悪いブロッコリーができてしまうことなどを心配していましたが、全体的には大きな問題はありませんでした。

<新たな反省点と対策>
中盤戦前半で雑草を繁茂させてしまった。
中盤戦前半までは、定植時の気温が低くほぼ雑草が生えていないため除草剤を使用していない時期に当たります。序盤戦は雑草を抑えられていましたが、中盤戦に入るころには、雑草が旺盛になる可能性が高いため、今後は特に早めの除草を心がけます。
ブロッコリーの生育のばらつきがあった。
全体的にみると順調だったブロッコリーですが、個別にみると生育にばらつきがありました。定植時点で苗の生長度合いのばらつきもありましたが、手で尿素をまく形で追肥を行っているため、追肥の均一性やタイミングにも問題がありそうです。今後は均一に追肥ができる散布機の使用や、作物が必要とする窒素を、栽培期間を通じて供給することができるユートリシャNの利用を考えています。
中盤戦以降の育苗期に深刻なアオムシ被害が発生した。
気温の上昇とともにアオムシが多発し、育苗中の苗の葉に大きな被害が出ました。育苗ハウスにネットを張る物理的防除、育苗期に使える農薬の使用などで、育苗期も害虫被害を抑える対策を実施します。
夏場の育苗期に水切れするケースがあった。
夏の暑い時期に、通常の水やり頻度では、苗がしおれてしまうことがありました。今後は育苗期の乾燥対策に効果的な資材の施用も検討します。

常に安定して収穫できるブロッコリー農家を目指して!

2024年は、シーズンを通じて安定的にブロッコリーを収穫できた年でした。

ブロッコリー栽培のポイントを教えていただいた、コルテバ・アグリサイエンス日本株式会社のみなさま、網走農業改良普及センター美幌支所のみなさま、本当にありがとうございました。

ブロッコリーの病害が特に酷かった2023年と比べると、2024年のオホーツク地方はブロッコリーを育てやすい年だったのかもしれません。それでもシーズンを通して安定して収穫できた経験は農家としての自信となっています。

まだまだ、未熟なさいこうファームですが、どのような気候条件でも常に安定して収穫できるブロッコリー農家を目指して邁進していきます。今後ともどうぞよろしくお願いします。

さぁいこう!さいこうファーム

次回はとうもろこし栽培についての学びを発信予定です!そちらもぜひご期待くださいませ。

このnoteは農薬メーカーであるコルテバ・アグリサイエンス日本株式会社さまの協力を得て作成しています!

最後まで読んでいただきありがとうございます。東京から北海道オホーツクの美幌町に新規就農した4人と1匹家族の農業、子育て、おすすめスポットなどをほぼ毎日更新しています。もしよろしければ「スキ」「フォロー」をお願いします!このマガジンはコルテバ・アグリサイエンス™日本さんの協力を得て作成しています。
(登場人物)
ぼく:東京大学で農学博士取得後、ベンチャーで8年勤務。その後、北海道で新規就農。

いいなと思ったら応援しよう!

吉田拓実|さいこうファーム OKHOTSK BIHORO
サポートとは「投げ銭」の意味です。 サポートにて100円でも200円でも頂けるとやる気に繋がります!皆様のサポートありがとうございます!!

この記事が参加している募集