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未来が定まっていない以上、すべての絶望は勘違いである
休職中です。
タイトルは、とある小説の中の一文です。
登場人物の1人が発するセリフ。
名言だと思います。
登場人物は、ある理由により、自殺志願者を助ける役目を負った、男3人、女1人の4人組。
元ヤクザの親分、会社経営者の中年男、家事手伝いの女性、浪人生。
年齢も職業も背景もバラバラの即席グループが、何とかして自殺しそうな人を未然に食い止めようと奮闘する話。
期限は7週間。つまり49日。
止めなければならない自殺志願者は100人。
なぜ自殺しようとする人が見分けられるかって?
対象者だけがブレて見えるような、そういう暗視ゴーグルがあるのです。(という設定)
もちろん、彼らが阻止しようとする自殺志願者が多数登場するので、それぞれの苦悩や心の闇、さまざまな背景の描写もあります。
ほとんどの対象者は、絶望的な状況で、心を病んでしまっています。
重いテーマであるはずなのに、救助隊のジェネレーションギャップがギャグのようになったり、救助のためにドタバタしたり、軽いコメディタッチな要素もあり、エンタメとして楽しめます。
終盤、そのうちの1人が言います。
「今まで頑張ってきて、一つ気がついたことがあるんだが」
「何です?」
「この世に絶望している連中の心の中さ。
死のうとしている奴らが恐れるのは未来だ。
この先、いいことなんか何もないと思い込んでる。
だがな、誰も予言者じゃねぇ。
ノストラダムスの大予言だって見事に外れたんだ。
つまり、俺が言いたいのはーー」
ここで、視線を泳がし、言葉を探します。
その後のセリフが以下。
「未来が定まっていない以上、すべての絶望は勘違いである」
心に残る言葉
いろいろな本を読んでも、記憶に残る言葉というのは、実はそれほど多くありません。
自己啓発本の類なら、良い言葉はたくさん出てくるはずなのに、その場限りで忘れてしまうことも多いですよね。
やはり、その時のシチュエーション、心情、常々思っていたこと、あるいは無意識で何か引っかかっていたこと、などと、その時に読んだり聞いたりした言葉が、タイミング良く合った場合に、ストンと心のどこかにハマるんでしょうね。
別に、「目からウロコ」とか「頭を殴られたような衝撃」とかいう大げさな表現じゃなくても、なぜか心に残る、記憶に残っている、という言葉ってないですか?
「未来は定まっていない」
「すべての絶望は」
「勘違いである」
近い未来どころか、1時間先、5分先でも、何が起こるか分かりません。
こういう文脈では、たいてい自然災害とか、事故に遭うとか、あまり良くないアクシデントで語られることが多いでしょうが、何気なく見たテレビやニュース記事、一冊の本、1本の電話、誰かの一言などで、その後の人生が変わることだってあり得ます。
この小説には、こういう言葉も登場します。
「死んでから後悔しても遅い」
怒濤の救助作戦の結末は、どうなったでしょうか。
100人救助に成功したのかどうなのか。
成功したら、どうなるのか。
こういうテーマの小説なのに、読後感は爽やかです。