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「働きがい」の意味から考える、本質的な採用ブランディング
こんにちは!
「働きがい溢れる世の中にしたい」という想いでHR企業で働いている宮野ヨシフミと申します。働きがい系シンガーソングライターとして、働く人を応援する曲を作る活動を副業でやっています。よろしくお願いします。
昨年に引き続きキャスターさん(CASTER BIZ recruiting)の採用アドベントカレンダー2020の企画に参加させていただいています。みなさんとても勉強になる記事を上げていらっしゃるので、採用に関わる方はぜひ他の記事も見てみてくださいね。
さて、これまで「働きがい」というワードは聞いたことが一度はあると思いますが、具体的に説明してと言われて説明できる人はなかなかいないのではないかと思います。僕自身、昔から働きがいが溢れる世の中にしたいと言っておきながら、前まで、なんとなくでしか「働きがい」をイメージできてはいませんでした。お恥ずかしい話です。
また、近年採用ブランディングという言葉も定着してきましたが、そこで論じられることは「結局どんなことをするか?」という方法論ばかりが注目されており、「それってあなたの会社に採用の目的に適ってるの?」というモノが溢れてしまう事態に陥っています。これまで、人材紹介・ダイレクトソーシングの分野で一貫して採用支援に携わってきた中で感じるのは、どうやら企業が発する採用のメッセージングには人々に求められているレベルのモノが少ないということです。
働きがいを求めない人はいないという真理と、会社の実態に即した採用ブランディングを行えている会社が多くない事実というのは、共通して解決できる一要素がありそうです。
そのため今回は、しばしば使われる「働きがい」ってそもそも何なの?というところから、採用のメッセージングの上流である採用ブランディングコンセプト作りを少しでも解像度を上げてご理解いただけるようお伝えしたいと思います。
「働きがい」の意味
「働きがい」という言葉を見たときに、見た目が近い言葉として「やりがい」が浮かんできます。
「やりがい」は、実用日本語表現辞典によると「事に当たる際の充足感や手応え、張り合い」という意味だそう。「やる」ことによってポジティブな心の働きが得られる要素が「やりがい」だというわけですね。
では、「働く」+「やりがい」をすると「働く際の充足感や手応え、張り合い」という意味になるのでしょう。ふむふむ、なるほど。
しかし「働く」という言葉を考えた際に、いわゆる内発的な心の動きだけで片付けられるテーマだろうかと考えると、そうでもなさそう。
「働く」には、外発的、つまり他人や場所や自分が組み込まれるシステム(構造)によっても心理が動く要素はあるだろうと思われます。自分というもの以外の外的環境の良さもキーになるということです。つまり、シンプルに表現すると「働きやすさ」と言えますね。
図にするとこうです。
働きがい=やりがい × 働きやすさ
双方が高まれば高まるほど働くエネルギーが高まることや、片方がいくらすごくても片方が0だと働くエネルギーはゼロになってしまう掛け算の関係が近いのかなと思います。
では、「やりがい」や「働きやすさ」と言っても、まだまだ抽象的な表現です。もっと分解して考えてみましょう。
「やりがい」にしても「働きやすさ」にしても、それらは内発的にしろ外発的にしろ、人が働く上で求めているもの。求めているものが具体的に何かを理解し、分類していけば自ずとこの2つに行き着くのではないだろうか。
そもそも人は何を求めているのか。人が抱えるニーズとは何なのか。それからまず考えていきたいと思います。
人の求めているものとは?
コミュニケーション心理学の世界で有名なマーシャル・B・ローゼンバーグ博士が考案した、NVC(=非暴力コミュニケーション)と呼ばれる、暴力や対立を排して人を思いやる実りある対話へと導くためのコミュニケーション手法があります。この中で、普遍的な人間のニーズが紹介されています。
このリストは、マーシャル・ローゼンバーグのオリジナルリストを元に、大勢の協力により作られました。2006 Inbal Kashtan and Miki Kashtan, BayNVC, nvc@baynvc.org, www.baynvc.org 訳:小笠原春野 改訂:安納献ほか
ご覧いただければ、確かに自分が求めていることだと思われるでしょう。ただしこれから僕らがやりたいことは、働く上で人が本来求めているものは何なのかを明らかにすることですので、「働く」に関することのみ抽出していきましょう。
枠組みを仮でグループ作る→上記リストの各項目を近い意味でグループに分類→再確認→仮グループを分解・統合・配置修正→グループ名を言語化→「やりがい」と「働きやすさ」に分類・・・
(この作業の様子は長すぎるので省きます・・。そこそこ辛かったです笑)
それでは、「やりがい」と「働きやすさ」を具体化した内容がこちらです。
「やりがい」の分類
・能力を活かせ、工夫できること
自己表現、発見、探究、創造性、能力
・適切な評価と存在証明
認めてもらうこと、知ってもらう、見てもらう、理解してもらう、安全、所属・帰属意識、そこに居る・在ること
・自由裁量と責任
自由、独立、自発性、自覚、選択
・理念やミッションの高い浸透・徹底度
流れ(フロー)、一貫性、共感、共鳴・共振、参加、高めあうこと
・社会的意義の実感
目的、刺激、希望、貢献・寄与すること
・成長実感
学び、成長、明晰さ
「働きやすさ」の分類
・見合った金銭報酬
安定、食べ物、 住まい、水、命の祝福
・十分な休息・自由な時間
活動/運動、休息/睡眠、安全 (生命の危機からの保護)、愛情
・あたたかく秩序の取れたコミュニティ
あたたかさ、うそじゃないこと 、真実味、誠実さ、秩序、協力、コミュニケーション、コミュニティー、仲間、おもいやり、配慮/気遣い、相互依存、仲間に入れてもらう、気楽さ、調和、理解すること、信頼、受け入れられること、平等、安心
・カジュアルなコミュニケーション
ふれあい、交流、喜び、ユーモア、楽しみ、気の置けなさ、親密さ
・効率性・有効性の高いシステムやマネジメント
効率性、有効性、整理整頓、頭を整理すること、尊敬、支え/サポート
・快適な職場環境
空気、空間・余裕、美、インスピレーション/直感、共生
「働きがい」を具体的に理解する
人の普遍的なニーズから、働く人たちが求めるもの(=働きがい)をまとめることに成功しました。これがその成果です。
このように、解像度高く理解することによって、応用がしやすくなります。
今回理解することができた「働きがい」の意味を、採用ブランディングに役立てて考えてみましょう。
本質的な採用ブランディングとは?
「どうやら企業が発する採用のメッセージングには人々に求められているレベルのモノが少ない」ことは冒頭でお話しました。では人々に求められているレベルとは何か?
結論からお伝えします。
「実態に即していること」と「網羅していること」だと思います。
「実態に即していること」
今やあらゆる企業の採用メッセージング(求人情報、採用広報媒体、採用系広告)を見渡すと、どれも似通った言葉や表現が溢れています。
これは、成功の再現性を求めているからです。今の就活生や転職希望者のトレンドから、求められていそうな働き方を予想したり、採用が上手くいっている企業のメッセージングを真似るなどして自社の採用メッセージングを決めている企業は多いです。一見失敗を避ける可能性が高そうですし、上司からの承認も得られやすそうですしね。
しかし、同じような言葉や表現を使う会社が多いので、比較対象に上がった際には差別化されにくく、結果的に取りこぼしを多く発生させることになってしまいます。
様々な観点で自社の特徴を具体的に理解し言語化してみましょう。
実態に即した情報は十分「自社ならでは」の情報です。
「網羅していること」
これは少し意外かもしれませんが、多くの求人情報や採用サイトなどを拝見していると情報が不足していると感じることが頻繁にあります。これはあまり実感されている採用担当者様は多くなく「十分に記載している」と認識されている方が多いのではないでしょうか。
もし面接などでたくさん質問されていれば・・・もし内定辞退される時に「コレとアレの情報が他社に比べてよくわからなかったので」と言われていれば・・・実感することは簡単でしょう。しかし普通、企業に直接たくさん質問をすることは勇気がいるのです。これは採用担当の立場からは顕在化していない問題です。
人材紹介会社でキャリアアドバイザーをしている方ならわかっていただけると思いますが、特に優秀な候補者からは求人票に載っていることもそれ以外にもアレやコレやとたくさん質問を受けますよね?当然です。それだけ、載っている情報だけでは不安だからです。
加えて事実を述べると、情報量の多い求人は応募率が高いのです。
本質的な採用メッセージの作り方
ここで前半で作った具体的な働きがい一覧の登場です。
これは人の持つ普遍的なニーズを元に作ったリスト。当然人によって差はありますが、候補者が応募判断や入社判断を行う際にこの観点で考えていると考えて大きなズレは無いでしょう。
「やりがい」
・能力を活かせ、工夫できること
・適切な評価と存在証明
・自由裁量と責任
・理念やミッションの高い浸透・徹底度
・社会的意義の実感
・成長実感
「働きやすさ」
・見合った金銭報酬
・十分な休息・自由な時間
・あたたかく秩序の取れたコミュニティ
・カジュアルなコミュニケーション
・効率性・有効性の高いシステムやマネジメント
・快適な職場環境
このリストを用いて、
自社の特徴にそれぞれ5点満点で点数をつけ、4〜5点がついた項目を重点的にメッセージングに活かしましょう(=実態に即していること)。
例)能力を活かせ、工夫できること3点、適切な評価と存在証明5点、自由裁量と責任2点・・・・・・
メッセージング項目の優先順位が決まったと思いますので、
次は、リストにある項目全てに関する詳細な情報を書き出しましょう(=網羅していること)。ポイントは、具体的な数値や事実を挙げることです。
例)成長実感4点:等級・役職ごとに集合研修を実施している。3ヶ月ごとに業績目標とコンピテンシー目標を設定し、都度上司とのFB面談を設定している。中長期のキャリア開発についてはまだ十分に設計できていないが来春には「社内FA制度」を・・・・
これらによってできた資料を元に、求人を出す際にメッセージング設計をしましょう。
ただ少しだけ厄介なのは、採用チャネルによっては情報を多く載せたくても文字数の制限があるため出せる情報量に限りがあることです。
ここで注意いただきたいのは、情報の深さは浅くしてでも、情報の広さは狭くしてはいけないということです。可能な限り上記リストの全12項目の情報を載せましょう。情報は「載っている」ことが重要です。「それぞれの情報の詳細はお会いした時に尋ねていただければ包み隠さずお話します」とも載せておけば、深く知りたいのに知れない不安は解消されるはずですから。
終わりに
いかがでしたでしょうか?
これまで8年間多くの優秀な人事、採用担当者様に勉強させていただきました。この場を借りて御礼申し上げます。
けれどもまだまだ僕も修行中の身。考察が足りていないことや経験不足もあるでしょう。
それでも、もし参考になったという方がいらっしゃればとても嬉しいです。
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働きがい溢れる世の中への一歩となれば幸いです。
改めてになりますが、採用アドベントカレンダー2020に参加させていただいています。明日は油谷大希さんです。
ぜひお楽しみに!
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