変わった
ぼくにとっての生きがいは“旅”に出ることだった。
暇さえあれば、衝動に身を任せて、国内外問わずどこにでも旅をしていた。
旅に出たから得た学び、自信、勇気、トークのネタは山ほどある。
きっとこれからも旅はそれなりにしていくのだと思う。
でも、ぼくの中で少し変化が訪れた。
正月早々、ぼくは友人とともに旅に出た。
それぞれが年末まで頑張ってきたので、慰安的な意味合いがあったと思う。
ただその中でも、普通に旅に出るのでは面白くない。
ということで、友人には目的地を知らせずに東京駅で待ち合わせることにした。
友人は優しいので、その提案に全乗っかりしてくれた。
東京駅から宇都宮に移動し餃子を食べ、日光で初詣をし、栃木と福島の県境にある秘境の温泉で一泊。
翌日は東京方面に帰るのが癪なので、そのまま福島方面に抜け、会津若松で喜多方ラーメンを食べ、そこから新幹線駅のある郡山に移動し、新幹線で帰京した。
そんな弾丸旅行であった。
抜群に楽しかった。そんな旅を許容してくれる友人は本当に大切にしなければと思うし、何ひとつ嫌なことが無かった。
しかし翌日、歯茎が腫れてしまった。
疲労が溜まっていたのだと思う。少なくとも身体の慰安にはなっていなかった。
(旅を先導したぼくがこうなのだから、共に旅をした友人の疲労をちょっと想像してしまう)
心は満たされた。でも身体にはブレーキがかかった。
30歳になって、旅の仕方は少し考えなければいけない。
ただ自分の中で旅の価値観がちょっと変わったのは“疲労感”のせいだけではない。
今回の旅の経緯を話す機会があった。
旅自体はものすごい楽しい時間だったし、素敵な思い出になった。
しかし旅の話が全て“体験”の話になってしまったのだ。“経験”の話にならなかった。
旅を経て、自分がどう変わったのか。
多分それがぼくの中で旅をする意味であり、“体験”だけでは満足できないのだと思う。
そして自分を変える方法が果たして旅しかないのか、という部分がぼくの中で新たに生まれてきた。
自分の何かを変えるための旅はこれからもするとは思う。
でも、自分を変えるチャンスは自分の身の回りにも結構転がっているんじゃないかとも思う。
近くて、小さくて、それでいてキラキラしている瞬間やモノ。
それに気づけるようになりたい。
美味しいレストランに行かずとも、松屋やサイゼリヤで十分。誰と食べるか。そういうことなんだなあ。