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【マンガ感想】Bread & Butter 全10巻 芦原妃名子先生


芦原妃名子先生について

1994年に少女コミックでデビューした(らしい。今wikiでみた)
有名な作品だと「砂時計」と「Piece」(小学館)

どちらも、繊細な10~20代の心の動き、どちらかというと人間の心の「陰の部分」に触れた名作である。冬の曇り空のような、どちらかというと悲しい、泣きそうな顔をこらえている、そんな主人公たちの姿が詳細に描かれている。芦原先生は人の心の動きを描く名手なのである。
どうしても「セクシー田中さん」で自殺した漫画家、原作者、というイメージがあるので先に書いておきたい。
「ドラマの改悪で自殺した漫画家」ではなく
「”日常を生きる人々”の心の機微を繊細に描写し、読者と同じ日本に登場人物が住んでいるかのような、そんな共感できる展開が秀逸な天才漫画家」なのである。

Bread & Butterは30代の働く我々のリアル


あらすじ(概要かつ適当)

元小学校教師の主人公34歳無職婚活中の柚季。
小さいころから真面目で委員長タイプ、物腰もやわらかくおっとりして見える柚季ちゃんは小学校教師も真面目に勤めていた。
だが、ある生徒がきっかけで辞職することになる。
転職活動もなあ・・・教師以外できないし・・・
34歳だし・・・・婚活しようかな?料理好きだし?

こんな感じで婚活をはじめることに。
結婚紹介所に登録しに行くが
「譲れる条件」「譲れない条件」を教えてください。きちんと具体的に!
相手に何を求めるかわからないってことは自分を理解してないってことですよ。とスタッフに呆れられる。

普通でいいんだよ・・・偏食がない、店員さんに横柄じゃない。好き嫌いがなく、ごはんを一緒に食べてくれて、おいしい!って笑いあえる。
それでいいんだよ・・・と思っていても結婚紹介所はそんなもん条件じゃない!はい。そうですよね。年収とか、体型とか、仕事とか。スペックなんだよね。
相談所ですものね・・・でもさあ・・・である。
柚季ちゃん、わかる!共感っっ!こう、雰囲気なんだよな!好きになるってさ。


上手くいかないな~そんな気持ちで、たまたま買い物に立ち寄った商店街の文房具店。文房具店なのに片隅でパンを焼き、パンを売る文房具店。
それが利益度外視のかなり本格的な材料をつかっためちゃくちゃおいしなパンなわけ。

料理できる人に憧れるわたくし

そのパンを焼いている(たまに文房具屋のレジ)をしている男性が原洋一さん。
パンを食べてうっまーーーーーーーーーーーーーーい!
「!!!!!」
洋一さんと一緒に赤ワイン飲みながら、おいしいパンを食べる。
あー美味しいご飯を一緒に食べてる、この感じいいなーと思うの。
ふと洋一さんをみて、あーこんな旦那さんいいなーと思って、ついつい「結婚しませんか?」って口にでちゃうの。で、まずはお友達からー的な展開になるんだけど。
逃げ恥のみくりさんが「あ・・・あの!結婚!!!しませんか??!!」みたいな。女性からのプロポーズってなんかそれもいいよね。

ここまでが1巻の1話。


洋一さんのパン屋の前の仕事は〇〇だった

勢いで結婚!と言葉にしてしまった柚季ちゃんなんだけど、さすがにそれは・・・でお友達から~ってなるわけさ。
んで2話以降、徐々に、徐々に。
なんで洋一さんがパン焼いてるの?とか柚季ちゃんの教師やめた理由とか色々とこー、事情もお互いわかり合っていくの。

最初に就いた仕事で挫折した30代のリアルさ

柚季ちゃんは小学校教師。
洋一さんは〇〇の仕事。
2人とも、20代のときはこの仕事を多分ずっとするんだな。と思ってた。
でも違った。柚季ちゃんは退職したし、洋一さんも休業中。
そんな2人が恋愛どっぷり~になるはずもなく。
仕事とは 生活とは 生きるとは 食べるとは
色々ね、こう考えるわけさ。芦原先生のすごいところはこれを言語化してるようでしてないの。
「小学校教師やめてからの〇〇ってどうなんなろう?」とか柚季ちゃんは言わないの。読者が、そう思うようになってるの。

2巻~LAST10巻まで

柚季ちゃんはパン屋さんを目指して洋一さんはパン屋さんの前の仕事をやり直すの。2人とも前向きなリスタートをきるわけさ。

そして何よりも。美味しそうなパンが随所にでてくるの。

何キロカロリーあるんだよ。同感・・・

時間軸が進むと、洋一さんの元カノ(純ちゃん)とか、
柚季ちゃんの教師時代の生徒さんとか、いろんな人物もからんでね。
この漫画のすごいところは、要らない展開やセリフ、人物1人もいないのよ!(セクシー田中さんもそうだけど)文房具店パン屋の常連、美奈子さんもとても深い深い人生観があってね。柚季ちゃんに「自分の言葉」で語り掛けるの。普通「モブ」とかいわれるような人物はモブじゃない。
生きている1人の人間で、365日×誕生年数の価値があるの。厳しくて優しい、芯のある、筋の通った人たちの集まりなの。

Bread&Butterは英語のイディオムで、「生計を立てるための主な職業」や「生活の糧」という意味(私の感想です)

恋愛全開!になるわけでもない30代同士の日々のリアルさと、
30代からの「天職」を追いかける2人の姿と、たまに出てくる甘い展開が重なり合ってもーこう、クロワッサンなわけよ。

お互いをわかりあっていく、その過程がとても素晴らしい。傑作です。

芦原先生の漫画は一言一句、流れ、背景も全て心に沁みる。
芦原先生が言葉をとても大事に、人物描写を大事にしている作家さんだからだと思う。
親近感が湧くリアルな等身大な大人たちを描き、彼らが本当にどこかの東京や箱根で存在してるような、そして心の揺れ動く様を表現するのがとても美しい。

五十嵐さん好き💛
純ちゃんも大好き💛💛

私の推しは純ちゃん(洋一さんの元カノ)と五十嵐さん。 働く女性に弱い。

ココハナ(集英社)サイト↓

電子でも紙でもいい。印税よ、ご遺族にとどけ。


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