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血肉にしてこそ【死にたい夜に効く話.25冊目】『思考の整理学』外山滋比古著
なぜこうも『思考の整理学』は人気なのか。
先日寄った本屋さんでも、平積み山積み(しかもポップ付き)で並べられていた。わたしがまだ学生だった時もそんな感じで売られていた記憶がある。
ロングセラー恐るべし。
昔読んだはずなのに、内容がかなりうろ覚え。そういうわけで、本棚の奥から、大学時代に買った『思考の整理学』を引っ張り出してきた。
『思考の整理学』を一言で言ってしまうなら、「考える」ということについて書かれた本だ。
考えるということ自体についての根本的な話から、実際にどんな考え方をするといいのか具体的な方法を教えてもらえる。
そんな風に書くと堅苦しく思われてしまうかもしれないけれど、いくつもの項目に分かれていて、一項目あたりの文章の量も多くないから、案外サクッと読めてしまう。何より先生の語り口がいい。発行されてから年月が経っているけれど、「これ今の時代でも変わんないよねー」なんてことがあちこちに出てくる。
引っ張り出してきた本をパラパラめくってみれば、大学生の時の自分が引いたであろう線が、ところどころにあった。
例えば、このあたりとか。
気軽に書いてみればいい。あまり大論文を書こうと気負わないことである。力が入ると力作にならないで、上すべりした長篇に終わってしまいがちである。いいものを書きたいと思わない人はあるまいが、思えば書けるわけではない。むしろ、そういう気持ちをすてた方がうまく行く。論文でなく、報告書、レポートでも同じだ。
なんだ、意外とちゃんと読んでたのかと思って読んでみれば、あら不思議。そこに書かれていたのは、今自分が普段から当たり前にやっていることそのままだった。
よくよく思い返してみれば、今はアイデアを出すことも、文章を練ることも嫌いではないけれど、大学に入ったばかりの頃は、発想力なんてものは皆無だった。文章を書くのも苦手で、レポート一本書くのにも手こずった。
どうやら、大学時代のわたしは、律儀にも書かれていることを実践して、いつの間にか無意識でもそういった思考ができるようになっていたらしい。
「知らなかった」から「できなかった」ということはある。
考え方でもそうだ。自分にはできないと思っていても、実は知恵を少し取り入れてみるだけで、全く変われる可能性だってある。とりあえず、自分はそうだった。
学生時代に、考えるということについての知恵を、ある意味「貯金」しておいたおかげで、今が楽になっている。学生時代に読んでおくといい、というのは、確かにそうだとしか言えない。(もちろん社会人になってからだって、全く遅くない)
それにしても、「なんで売れてんだろー」と平積みされた『思考の整理学』を横目に通りすぎていた自分が、しっかり恩恵を受けていたとは…。
《参考文献》
外山滋比古『思考の整理学』筑摩書房、1986年