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siika

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#短編小説

ガーベラ

靄が掛かった、琴線のような夏のこと。薄暗いこのワンルームに、ぱたりと落ちるふたりの言葉。僕の心を掴んで離さない瞬間は、必ずしも劇的ではない。今朝、窓際のガーベラの水を取り替えていないことを思い出した。もとの居場所から引き剥がされて、他者から何かを与えてもらわないと自らの命さえ守ることができないそれを、僕の匙加減で生かし、慈しんでいる。もっと存分に、鮮やかにあれよと、僕の匙加減で押しつけ、愛している

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pm18:47

薄暗い西の空と浅瀬の夢
長い夜のためのラブソング
線路に沿ったフェンス越しに
昨日見た風を待つ
この苦しみと一緒に
これからあなたと生きるのね