yomogi

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脱衣麻雀

低俗な遊び、繁華街の路地裏のような血生臭い言葉、切ったばかりの萬子の伝、先賢の知を心得た文化人としての仕来り、風を学んだシルクのドレス、暗転。低俗な遊び、遥か遠くに聞こえていたはずの文鳥の囁き、春を鬻いだ夢現、気づいた頃にはもう遅い駆け引き紛いの恋、指に絡まるのを待つ点棒、暗転。低俗な遊び、絡線仕掛けの宝石箱、空際を埋めるために呼んだ貴方の名前、鳴くまいと残した横子、硝子越しに見える薄紫の伽藍堂、暗転。低俗な遊び、立直一発門前銅鑼銅鑼、低俗な御前、さあさあ脱げ!

    • マイ・セプテンバー

       来世があるとしたら、そのとき家族になりたい人がいる。  今世をすでに捨てている理由は、どう頑張っても今世では家族にはなれないからである。昨今の多様性の社会で、本当にいろいろなパートナーシップの形を実現しやすい世の中になってきているが、そういう類の話でもない。  自分にとっての「自分との関係性をひとことで言い表すことができる人」は、生涯を通してもごく少数に限られる。「わたしの〇〇です」と、他人に簡単に説明できる、名前のついた関係性の人。それは尊くて、特別で、何よりわかりやすい

      • #004 / 犬王

        「見届けようぜ!」 湯浅監督『犬王』、観劇。(2022年のこと)(大変遅ればせ) こんなに言語化が難しい作品は久し振りでした。 まずは、ですが、松本大洋氏のキャラデザ、絵柄が最高に好き。横顔の描き方、人物の歯、しなやかな曲線美など、要所要所で「イイ...」となった。 序盤は、アニメーションのロックフェス。その演出に体が自然に揺れたりコールアンドレスポンスに参加したくなったりと、映画を観ている感覚から離れてしまう。1曲がもう終わり?ってなるくらい、時間があっという間に過ぎ

        • やさぐれ140字日記

          心が疲れてひとりでスタバに来た。上司から借りた漫画を読みながら(田島列島)、やるせない感情を空に泳がせてみている。気づいたら目の前に、笠の広がったタイプのきのこのような髪型の人(女性か男性かもわからん)が座っていた。ふわふわしていていい。あ、ヘアバンドが見えた。女性かな。

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        • siika
          11本
        • nikki
          5本
        • review
          3本

        記事

          わたし心中宵通信

          昨日のわたしは今日のわたしとともに死ぬ。 そのための祈りのような何かを綴るだけ。 こうでなければいけないとか、正しくありたいとか、そういう自分の中の信念みたいなものがきっとある。だけどそれは、何色なのかも何でできているのかもよくわからなくて、そのくせに一丁前に硬くて大きいから、視界を遮られて俯いてしまう。解けた靴紐に気づいてしゃがみ込んだら、今度は結び方がわからないことに気づく。そのまま座り込んで動けなくなってから、数年が経つ。 わたしひとりでは、この状況を突破できない。

          わたし心中宵通信

          どっちみち

          別に、キスしてもわからんし

          どっちみち

          らんちゅう

          背の高い ショーケース越し 目が合う夏

          らんちゅう

          飛行機雲

          空の切れ目、靡くわたしの心たち

          飛行機雲

          2021-2022

          2021年は総合して、“他人の苦しみ”に苦しむ1年でした。 自分以外の人が苦しんでいる姿や、その地獄を垣間見ることで、自分もその苦しみを体験せんとばかりに、引き摺り込まれてしまうことが多かった。 やっぱり、苦しみや悲しみは伝染する。それが近しい距離であればあるほどに。 他人の苦しみはわかりっこないのに、理解しようがないのに、わかってあげなきゃ自分が解決してあげなきゃ寄り添ってあげなきゃ、とばかり考えていました。今もふと気を緩めていると、その思考のループに陥ります。 言

          2021-2022

          #003 / 漁港の肉子ちゃん

          「普通がいちばんええのんやで」 明石家さんまさんプロデュースで話題の本作、先日観に行きました。 絶対に泣くという確信があったので、タオル地のハンカチをしっかり持参しました。 STUDIO4°C様の作品は『海獣の子供』以来2作目だった。あの繊細なタッチで描かれる西加奈子さんの世界はどのようなものか、非常に楽しみでした。 まあ案の定、マスクがびしょびしょに濡れて可哀想なくらいに号泣。 キクリンが小学5年生ということもあり、自分が小学生の頃の記憶をさらりと思い出した。 生き

          #003 / 漁港の肉子ちゃん

          #002 / 海獣の子供

          「見つけてほしいから光るんだよ」 公開当初から気になっていたけれど結局劇場には足を運べず2年が経った今、やっと観させていただきました。 STUDIO4℃様の作品は、恥ずかしながらはじめてでした。 絵柄が繊細で、でも迫力があって、どこか、ぐ、と歯を食い縛っているときのような、馴染みのある力みを覚える。日常の中の、異世界のような日常、そんなアニメーションに見えました。 直感的に、“いのち”を感じる物語でした。 誰かが死んだり生まれたりという描写は多くはないのに、この壮大ない

          #002 / 海獣の子供

          pm18:47

          薄暗い西の空と浅瀬の夢 長い夜のためのラブソング 線路に沿ったフェンス越しに 昨日見た風を待つ この苦しみと一緒に これからあなたと生きるのね

          #001 / BLACK LAGOON

          「アーメン・ハレルヤ・ピーナッツバターだ」 これは、レビューというか紹介というか、好きなアニメや映画、漫画、本などについてだらだらと書かせていただく、自己満シリーズ(いつもそう)をつくりたいと思い、始めたものです。 記念すべき初回は、わたしの大好きなアニメ『BLACK LAGOON』から。 好きなアニメを5つリストアップするなら、その中に必ず入るであろう『BLACK LAGOON』、通称ブラクラ。 サブスク普及のおかげで、いつでもアニメが観られる世の中になったことにまず感

          #001 / BLACK LAGOON

          白魚になりたい

          もうすぐ米寿を迎える祖父は、隔日ほどのペースでLINEをくれる。 遠方に住む親戚一同11人が集うグループラインに、他愛もない日常の出来事から、社会情勢についてまで、幅広い内容のメッセージが通知に流れる。 まるで短いエッセイのような、そのくらいの文量で、吹き出しの中に彼の抒情を凝縮する。 わたしは祖父のLINEが大好きだ。と言うより、彼の紡ぐ言葉が大好きだ。 『ゆっくり目の電車に乗って、ゆっくり目の息をして、どうぞ行ってらっしゃい。』 いつぞやに、父がいつもより遅い電車に乗

          白魚になりたい

          無限の猿の定理

          無限の猿の定理というものを聞いた。猿にタイプライターを打たせ続ければ、シェイクスピアの戯曲が完成するという定理だ。これは、反復により猿の知能が向上するということではなく、タイプを繰り返し続ければ、彼の戯曲と全ての文字列が一致する瞬間が訪れるという、途方もなく低い確率論である。 ただ、前提として、「打たせ続ければ」という無限の時間を約束している。例え世界が終わり宇宙が消滅しても続くものとして、その可能性を信じるための根拠を「無限」と定義している。可能性は“ないとは言えない”か

          無限の猿の定理

          花を選ぶ時間

          母の誕生日に、花を買った。 いつからだったか明確には思い出せないくらいには自然に、大切な人のプレゼントには花を選ぶようになった。 はじめは、明らかにかっこつけたい自分がいた。花を贈るのって思いつくようで思いつかないし、思いついても小っ恥ずかしくてなかなか実践できないところをやり抜くのがかっこいいし、なんかおしゃれだし、かっこいい。 お気づきのように、さっきの「いつからだったか明確には思い出せないくらいには自然に」というフレーズもかっこつけている。 わたしは基本的にかっこつ

          花を選ぶ時間