#003 / 漁港の肉子ちゃん
「普通がいちばんええのんやで」
明石家さんまさんプロデュースで話題の本作、先日観に行きました。
絶対に泣くという確信があったので、タオル地のハンカチをしっかり持参しました。
STUDIO4°C様の作品は『海獣の子供』以来2作目だった。あの繊細なタッチで描かれる西加奈子さんの世界はどのようなものか、非常に楽しみでした。
まあ案の定、マスクがびしょびしょに濡れて可哀想なくらいに号泣。
キクリンが小学5年生ということもあり、自分が小学生の頃の記憶をさらりと思い出した。
生きていると、困難やつらいこと、逃げ出したくなるようなことなど、受け入れ難いことがたくさん起こる。本当に起こるんだなあと最近特に思う。
小学生の頃、30人のクラスの中で経験した社会性、カースト、エゴ、信念。あのとき、世界の全てだったそれが、みるみる広く大きくなって、自分の存在を見失いかける。
年を重ねる度、わたしに降りかかる事象たちをどのように対処すればいいのか、わからなくなる。
自分の中にある正義や信念を、状況に照らして確かめる。そしてそれを持ち続け、貫くこと。例え、生きていく中でそれが変化していったとしても、その感覚を都度あたため直すこと。
わたしは、思い出したくない過去を黒く塗り潰しがちなのですが、塗り潰すにはあまりに鮮やかなのですね、いつも薄ら見えています。
家族に対する気持ちというのは、この世界に生きているひとりひとりが、それぞれの世界の中であたためているものだ。
家族はみんな違うし、環境も事情も都合も違う。
だからこの気持ちは、誰にも侵害されない、誰にも理解できない、誰にも見えない。
肉子ちゃんとキクリンを見ていて、自分の気持ちを大事にできるのは自分だけだと、改めて感じさせられました。
そして、わたしにとって大事な家族、彼らの気持ちを間接的に大事にすることができるのも、きっとわたしだけなのだろうと思うと、すっ、と、心が背筋を伸ばしたような感覚になりました。