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人生のリズムを壊す大失恋という化け物

なんと本日2回目の投稿です。(はじめてかも)うるさくしてすみませんね。

ほんとうは三連休に公開したかったのだけど私も気持ちが落ち着かなくなってしまい、今に至ります。

大事な友人の新たなスタートの話しなので読んでくれたみなさん心の中でそっとエールを送ってあげてください。noteに書くことに了承を得て「成仏させてやって(笑)」と言われたので記しておきます。


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「だってずっと好きだった人の結婚式だよ、俺まじで気合い入れなきゃじゃん、喝入れて頼む」

三連休のある日の朝、大学生の頃にバイトで出会ってそこからずっと仲良くしている男友達から、そんな連絡がきた。

カレが長い片思いをしていることはずっと知っていたし、カレの好きな人がその事実をずっと知らずに居ることも知っている。

「一度もそういう素ぶり見せたことないの?」と数年前に聞いた時にカレは「全く。何があっても見せないよ、見せれないでしょ」「考えてみてよ、(私)が幼馴染に恋愛感情あるとか言われたらどうよ、嫌でしょ悲しくなるでしょ」「だから、今のままでいい。彼氏の話を聞くのもこんだけ長ければいやでも慣れる」と言っていた。

そう言われれば「まあ…混乱はするよね」としか言えなかった。でも同時に「そんなの嫌な慣れだなあ」とも。

私の場合、幼馴染たちの間ではそういう恋愛沙汰が私もみんなもなかったし、今もないからまるで想像ができないのだけど、カレの心にいるのはずっと変わらず、昔から一緒にいる幼馴染だった。

「幼馴染のことが好きってどんな感じ」と聞いたら「めちゃくちゃ幸せでめちゃくちゃきつい感じ」と返ってきたときの顔が切なくて今でも覚えている。

その子の容姿の良さというのは、カレが何度も見せてきた写真を見ればすぐに分かることだったけれど、カレが言うには、「でも(幼馴染)の良さというかすごさはやっぱり会って実際に話してみなきゃ伝えきれないんだよなあ」らしい。

「ベタ惚れじゃん」と私が笑うと「当たり前だろ、会ったら分かる、(私)は絶対仲良くなれるよ、私あの子好き!って絶対言う、うんまじで。」と熱くなるのがいつものことだった。

話しを聞くたびに、カレがほんとうにその子を大事にしていることがわかった。カレの決断すべてはあの子がどう思うかどう感じるか、それを最優先していたように思う。幼馴染に彼氏がいない時期も、カレは気持ちを伝えることはなかった。

「人の考えてることなんてわからないじゃん、ずっとそのまま気持ち伝えなくて後悔しないのか、とかそういうことを言ってあげたいけど幼馴染って距離が近い分、分かることの方がたぶん多いから、だからこそ言わないって貫いてきたんだろうなと思うと、安易に言えないや」「言わない選択を貫いてこれたのは、その子のことよく理解してるからだもんね」

こんなようなことを私はカレに言った。カレはそう、ほんとうにそうと言うように何度も頷いてた。少し半べそをかいたような顔で。

「俺は(幼馴染)のことも好きだけど、(幼馴染)の彼氏のこともかなり好きなんだよね。ぽっと出てきたくせにクソと思ったりすることもあるけど、なんか納得というか、情けない話しだけど」

「めちゃくちゃお似合いなんだわ〜〜」とカレはいつものようにヘラヘラ笑っていた。

それは痩せ我慢とかではなく溢れ出るような本心だった。カレはそういう人だった。

「俺なんて敵わないから」と卑下するのではなく「俺を越えちゃうんだもんなあ、笑うしかない」と言うところにカレの性格の良さが出ていて私はすごく好き。あなたのそういうところ、きっとみんなに愛される理由だよ。

カレはその子を褒める時は決まって彼氏のことも同じくらい褒めた。話しを聞いていると私ならそんな状況心が死んじゃう、耐えられないってこともあったし、その度にカレの幼馴染に対する気持ちの揺るがなさも知った。

カレは何度か彼女ができたけれど、結局ずっと幼馴染が心の中にいるようで、交際しても長くは続かなかった。

私はカレが別れると「その、振られた女の子側の気持ちにも感情移入してきついものがある…元カノさんのなかには(カレ)がずっと忘れられない人になってる人もいるかもしれない…ウッ」と口に出し、「責めてる?!?!」と言われるのがおもしろかった。

カレの気持ちを見守ることも、カレと付き合った女の子たちに感情移入してしまうこともどちらも本音だけど、恋愛ってそういうものなのだろう。と割り切る気持ちもある。仕方のないことは腐るほどある。

交際しているときはカレも彼女を大切にしていたし、それでも何かがあると一気に引き戻される感じだった。カレ自身も「たまに自暴自棄になる」と憂いていた。

恋愛は綺麗に同じタイミングで交わることの方がきっと少なくて自分の好きな人が自分と同じくらいの熱量で自分を好いてくれることの方が奇跡なのだろう。恋愛は大体一方通行だ。悲しいけれど。悔しいけれど。

****」

「彼氏の話しを聞くのはもう慣れたし、このままいつか結婚するんだろうなって冷静に思うけど、いざその時がきたらめちゃくちゃしんどいのかも。それか逆に吹っ切れて複雑な気持ちは一切なく祝福できるのかな」

その「いつか」ってやつが、とうとう来てしまったみたい。

幼馴染が婚約した、籍を入れたという話しを私に話してきたときは、カレは心底嬉しそうで「気持ちは吹っ切れた?」聞くことも忘れてしまうくらい、飛び跳ねるように「よかった」と繰り返し、色々な話しを聞かせてくれた。

けれど朝の電話口のカレは、その時とは違っていた。

ワクワクしたり緊張したり、そういう気持ちと一緒に怖いという気持ちも垣間見えた。「今になって実感し始めたんだ」と言うと「自分でも驚いてる」と返ってきた。

会場か、自宅か、実家か、どこから電話をかけてきたのかまではわからなかったけど、あまりにも静かな電話の向こう側を想像して、カレが落ち着こうと必死であることは伝わった。

「式の最中励ますことはできないけど、後からいくらでも付き合うよ。だから一区切りつけてきな。大丈夫今の怖さとか緊張感なんて忘れるくらいきっと楽しい式だよ。大事な人の結婚式だよ、どんな気持ちがあったって楽しめないわけがないでしょ」と言うと

カレは少し呼吸をして「うん。だね。」と短く強い返事をした。

「それと、(カレ)は自分で思ってるよりいい男だからその辺この式が終わった後でも自信なくさないように。胸張っていって来い」と言うと「うわー、レア」と笑ったあとに「いってきます!!!」と部活動のあいさつのような声で電話を切った。

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「後にも先にもない最高の式だった!」という言葉と共にLINEで送られてきた写真には幼馴染その伴侶となる人、幼馴染の3人が眩しい笑顔で映っていた。

カレの目は少し赤く滲んでいたけれど、それ以上に嬉しいという気持ちが写真越しにも伝わってきた。LINEの返信を打とうとしていると、

「27歳を目前にして俺もいよいよ人生第二章!」

と送られてきた。
人生第二章という言葉がカレらしくて笑いが漏れた。

カレの中で幼馴染を好きだった事実がじんわり溶けて消えてまたちゃんと愛せる人ができても、これからもカレのなかで幼馴染は忘れられない人、いわゆる人生のなかの1番という存在はその子なのかもしれない。

けれどそういうことは決して悪いことではなく、その人が生きていくのに必要な記憶なのだと思う。今の自分を生かしてくれる大事な要素なのだと思う。

「すごくいい顔してるじゃん」
「第二章の幕開け祝しておいしい物でも食べに行こう。ある意味ひとつの卒業式!」

と返してスマホを閉じた。

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人生のなかで大失恋っていうイベントってかなり貴重な経験だと思う。私もしたことがあるけれど、今でも大失恋しといて良かったなとひしひし感じる。

大失恋をするには大恋愛という経験を辿る必要があって、人を心から好きになるというのは簡単なことではないしある意味自分の身を削ることでもあると思っている。

大失恋をしたばかりの頃はその人を失った悲しさや虚しさ、苦しさが押し寄せて胸が押しつぶされそうになるけれど、やがて時間が経つと、その人を好きではなくなった自分と対峙する時がやってくる。これがなかなかにきつい。

単にその人が居なくなった事実より、自分のなかからその人が薄れていくのを自覚し受け入れる瞬間、この自分との決別までが失恋なのだろう。

過去の自分にさよならを言えるまでにかなりの時間を要するだろうけど、そのさよならはこれまでの全てを忘れるということではないと思う。自分の中で、ちゃんとしまって置けるようになったよということ。

だからほんとうに好きだった人を忘れる必要なんて、別にないと思っている。それに、いつどこでその人を越える人に出会うかなんて誰も予想できないのだし。大失恋は絶望の要素ではなかったと、傷が癒える頃きっと思えるはず。

大失恋は良い意味でも悪い意味でも人生を揺るがす一大イベント。人生のリズムを一気に壊す化け物。

化け物に抗い続けろと、カレのこれからの日々に精一杯のエールを。

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