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追憶のミーコ その8
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共用の庭は便利で、テントの試し張りをしたり、
仲間を呼んでささやかな宴会をしたりと、
よく活用させてもらった。
住民が私ひとり、という時期が多かったので、
自由に使えたのである。
魚も、この庭でよく焼いた。
といっても、高い魚は買えない。
サンマすら無理だった。
だいたいメザシとか、そのあたりである。
それも前夜に、近くのスーパーで半額で買ったものだ。
この頃は、値引き品しか買わなかった気がする。
といっても、私はさほど食べる気がない。
ミーコに食べさせたかったのだ。
「ご馳走だぞ、ちゃんと食えよ」
庭で焼きはじめると、ミーコはその前で、
出来上がるのをじっと待っていた。
と思ったのだが。
焼き上げて冷まし、皿に盛っても、ミーコは匂いを嗅ぐだけ。
あとは私をじっと見つめる。
私は、こんな安い魚は食わないのかと残念がった。
だが、違うと気がついた。
私に、すべて食べさせたかったのだろう。
「ご馳走ですよ、きちんと食べてね」と。
![](https://assets.st-note.com/img/1706259709412-FQVeU6flaI.jpg?width=1200)
こいつのためにも、売れる作家にならなきゃな。
そう思いながら、別れの年の、2006年を迎えた。
もちろん当時の私は、そんなことを知る由もない。
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