追憶のミーコ その6
ミーコの寝姿を見るのが好きだった。
眺めているだけで頬が緩んでしまう。
いやそれは、「息をする者がそばにいる」という、
孤独を常とする者の喜びだったのかもしれない。
寝息を立てていても、名前を呼べば耳をこちらに向けた。
さらに呼ぶと、薄目を開けて顔を向けてくる。
「なんでもない」と言うと、また眠りに入るのだ。
時には眠りながら「お手」をしてくることもある。
これは起きているときによくする「ウインク」と、
同じくらいに好きだった。
ただ「居る」だけなのに、なんと癒されるのだろう。
私の仕事は、孤独と不安でできている。
己と向き合い、追い込み、魂を削りながら作品を創る職業だ。
誰も手伝ってくれないし、正解などもない世界である。
ひたすら文字を磨き、組み合わせ、物語を創造する。
なのに数字という、無味な文字で結果を下される。
それゆえに、ともすれば、荒む。
猫は、居るというだけで心に寄り添い、平穏をくれる。
思うに、小説家に猫はよく似合う。
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