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サンカシャですか?

「千マイルブルース」収録作品

真夜中の4号国道。
謎のワードに興味を持ち、俺は男を追った。


サンカシャですか?

 去年の今頃、たぶん七月のことだ。
 俺は、休暇を利用して青森へ向かっていた。目的は、ない。寂れた4号線を、夜通しで走りたくなったのだ。
 花巻のコインスナックで仮眠をとり、夜中のうちに再び走り出し、盛岡を抜けたあたりだった。後方から、赤色灯とサイレン音を背にした、一台のバイクが猛烈な勢いで迫ってきた。あっという間に俺の脇に並ぶ。ゴツイ革ジャン、大きな旅荷物、ZZR1100改。俺に軽く会釈したその男は、再び加速してすっ飛んで行く。迫るパト。なにか一緒に逃げなければならないような錯覚に陥り、俺は思わずアクセルを開けてしまった。悲しいさが だ。
「前の二台、止まりなさい!」
 そら見ろ、従犯扱いだ。
 メトロノームのような点滅信号を無視し続け、俺たちは、ついにパトカーをミラーに吸い取ってしまった。すると前方に道路工事の停止信号が現れる。当然無視するかと思ったら、ZZRが減速して停まった。男がシールドを上げ、タンクを叩きながらゲラゲラと笑う。そして、明るい声で俺に問いかけてきた。
「サンカシャですか?」
「へ?」
 すると、ミラーの奥が再び赤く錯乱した。サイレンがまた迫ってくる。ZZRがリアを空転させながら発進した。

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