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山崎与次兵衛アーカイブ:三輪眞弘

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これまでWebページ、Blog記事などの形で20年に亘って公開してきた三輪眞弘さんについての文章をアーカイブ。
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記事一覧

モノローグ・オペラ「新しい時代」の再演に接して(後半)

(承前) 0.はじめに 以前私はこの作品を含む「新しい時代」の系列の作品群について「ミイラ取りがミイラになる」危険について記したことがある。この作品に先行し、かつ四人のキーボード奏者がフォルマント合成の原理によって「言葉の影」を浮かび上がらせるという側面を共有する「言葉の影 またはアレルヤ」ともども、少年Aの事件やオウム真理教の事件との関わりについてはしばしば言及されてきたのだが、「ノンフィクション作曲」であったり、架空の教団の典礼音楽という体裁を取ることは、そこに批判

「新調性主義」を巡っての断想

(…) 本当は「「時の逆流」および時間の「感受」のシミュレータとしての「音楽」に関するメモ」でその射程を示したコンピュータによる音楽作品のMIDIデータ分析と、そのそもそものきっかけとなった「新調性主義」との関連付け(但し両者が最初から本質的に関連していて、「新調性主義」の派性としてMIDIデータ分析が位置づけられるわけではなく、その結びつきには少なからず偶然が関与していて、寧ろそれ故に確認の必要に迫られていると言うべきなのかも知れませんが…)を改めて確認し、整理しようと思

人工知能と音楽の未来・梗概と補遺

0.はじめに以下は、今年(2018年)の3月24日にロームシアター京都で行われた三輪さんとの対談「人工知能と音楽の未来」の梗概と若干の補遺である。対談はロームシアター主催の「「いま」を考えるトークシリーズ」の第4回として企画されたもので、主催者による要約は別に公開される(注)ので、ここでの目的は寧ろ、対談という枠組で、その場の状況に応じて展開された内容の再現というよりは、枠組の持つ様々な制約から避け難く生じた単純化に対して最低限の補正を試み、そこでは主題的に掘り下げることが

モノローグ・オペラ「新しい時代」の再演に接して(前半)

モノローグ・オペラ「新しい時代」 作曲・脚本・音楽監督:三輪眞弘 演出・映像:前田真二郎 フォルマント音声合成:佐近田展康 14歳の少年信者:さかいれいしう 儀式を司る4人の巫女(キーボード):岩野ちあき、木下瑞、日笠弓、盛岡佳子 信者1(映像オペレーター):古舘健 信者2(音響オペレーター):ウエヤマトモコ 信者3(ミキシングオペレーター):大石桂誉 2017年12月9日(土)、愛知県芸術劇場小ホール このところ三輪さんの旧作の再演が続いていて、私もそのうち「歌えよ

「赤ずきんちゃん伴奏器」「東の唄」の再演を聴いて

2016年11月6日 アーツ千代田3331 2階体育館 「メディアパフォーマンスとは何か?IAMAS20周年から考える」 三輪眞弘:メゾソプラノとコンピュータ制御による自動ピアノのための「赤ずきんちゃん伴奏器」(1988) ソプラノ:太田真紀 三輪眞弘:2台のピアノと1人のピアニストのための「東の唄」(1922) ピアノ:寒川晶子 テクニカル・サポート:松本祐一 音響エンジニア:ウエヤマトモコ ステージ・マネージャ;後藤天 司会:松井茂 三輪さんの「赤ずきんちゃん伴奏

「スポーツ劇」を観て

2016年3月11日 KAAT神奈川芸術劇場・大スタジオ KAAT×地点「スポーツ劇」 制作:KAAT神奈川芸術劇場・地点 原作:エルフリーデ・イェリネク 演出・構成:三浦基 音楽監督:三輪眞弘 (合唱隊:朝日山裕子・礒崎祥吾・宇澤とも子・大畑和樹・大道朋奈・後藤天・鈴木修平・相馬陽一郎・田嶋奈々子・野澤美希・圜羽山圜・村田結・柳内佑介・米津知実) 劇団「地点」の「スポーツ劇」の横浜公演に立ち会った感想を以下にまとめておく。 まず、普段足を運ぶ演劇といえば専ら能と狂言と

「歌えよ、そしてパチャママに祈れ!」再演を聴いて

2016年2月5日 渋谷区文化総合センター大和田伝承ホール 「トーキョー・アンサナブル・ファクトリー vol.6 イタリアと日本の作曲家の真摯な挑戦」 三輪眞弘:「歌えよ、そしてパチャママに祈れ!-ボリビアの唄に寄せるふたつの物語-」 指揮:阿部加奈子 アンサンブル:Tokyo Ensemnable Factory 三輪さんの「歌えよ、そしてパチャママに祈れ!」の25年ぶりの再演に 立ち会った感想を以下にまとめておく。 いつもの事だが、以下は演奏会に立ち会った私的な記

「火の鎌鼬」再演を聴いて

2015年10月12日 JTアートホールアフィニス:「男声合唱団クール・ゼフィール第9回演奏会」 湯浅譲二:男声合唱のための「芭蕉の俳句による四季」 三輪眞弘:女声傍観者達と5人の男声歌手のための「火の鎌鼬」  (藤井貞和「ひとのきえさり」より) 鈴木治行:「Hexagon」for 6 male singers 松平頼暁:A Person has let the "Kerry" out of the bottle  (男声合唱+女声合唱版・初演、詩:松井茂) 指揮:西川竜

サラマンカホールでフォルマント兄弟編曲によるペルゴレージ「悲しみの聖母」を聴く

G.B.ペルゴレージ「悲しみの聖母」第1曲(ソプラノ・アルト重唱・オルガン伴奏) MIDIアコーディオン歌唱:岡野勇仁(アルト:中音マリア) ソプラノ:さかいれいしう オルガン:今村初子 編曲:フォルマント兄弟(三輪眞弘+佐近田展康) 三輪眞弘:独唱曲「訪れよ、わが友よ」&「新しい時代」 ソプラノ:さかいれいしう オルガン:今村初子 「電子音響音楽祭」(フェスティバル・ディレクター:三輪眞弘) "テクノロジーと「作曲」の未来", JSSA/JSEMスペシャルコンサート

「万葉集の一節を主題とする変奏曲」再演を聴いて

サントリーサマーフェスティバル2015 TRANSMUSIC特別公演 2015年8月26日サントリーホール ブルーローズ(小ホール) 西村朗<ヴィシュヌの臍>ピアノと室内オーケストラのための(2010) ピアノ:碇山典子 指揮:野平一郎 東京シンフォニエッタ 中川俊郎「室内交響曲第1番」(2011/2015)[改訂初演] 指揮:野平一郎 東京シンフォニエッタ 伊左治直「南海の始まりへの旅」(2012/2015)[改訂初演] ギター:鈴木大介 指揮:野平一郎 東京シンフォ

MIDIアコーディオンによるペルゴレージ「スターバト・マーテル」歌唱の試みについて

G.B.ペルゴレージ「スターバト・マーテル」第1曲(ソプラノ・アルト重唱・ピアノ伴奏) MIDIアコーディオン歌唱:岡野勇仁 ソプラノ:さかいれいしう ピアノ:岩井亜希子 編曲:フォルマント兄弟(三輪眞弘+佐近田展康) 「サウンドパフォーマンス・プラットフォーム 」 2015年3月12日(木) 愛知県芸術劇場小ホール MIDIアコーディオンによる人工歌唱のための「兄弟式国際ボタン音素変換標準規格」に基づく 人工音声と人間の重唱によるペルゴレージ「スターバト・マーテル」の

「POC#20」にて三輪眞弘ピアノ作品を聴いて

POC(Portraits of Composers) 第20回公演 細川俊夫/三輪眞弘 ピアノ作品集 2015年1月25日両国門天ホール ピアノ:大井浩明 三輪眞弘「3つの小品」(1976, 世界初演) 三輪眞弘「レット・イット・ビー アジア旅行」(1990) 三輪眞弘「虹機械第2番「7つの照射」」(2008) 三輪眞弘「虹機械 公案-001」(2015, 委嘱新作・世界初演) POC(Portraits of Composers)は大井浩明さんが数年に渉って行なってき

「TRANSMUSIC 2014」について

サントリー芸術財団コンサート TRANSMUSIC 2014 2014年11月8日いずみホール クラーレンス・バルロ「ナイルの一月」室内オーケストラのための 指揮:野平一郎 管弦楽:いずみシンフォニエッタ大阪 三輪眞弘「ひとのきえさり、藤井貞和の詞による序奏と朗読」シンギング・マシン、アイントンと9人の演奏者のための(2013) シンギング・マシン、アイントン:マーティン・リッチズ、管楽5重奏と4人のドレミパイプ奏者:いずみシンフォニエッタ大阪  フォルマント兄弟 歌謡

「59049年カウンター」世界初演を聴いて

2人の詠人、10人の桁人と音具を奏でる傍観者達のための「59049年カウンター」(詞:藤井貞和) LSTチーム詠人:松平敬(バリトン・レインスティック) MSTチーム詠人:高橋淳(テノール・レインスティック) 桁人および悪魔:横浜都市文化ラボ桁人チーム(桁人・シェイカー、悪魔・桁人移動シミュレータ) アンサンブル(傍観者): 斎藤和志・齋藤光晴(ピッコロ・フルート) 大石将紀・江川良子・冨岡祐子(ソプラノサクソフォーン・アルトサクソフォーン・テノールサクソフォーン) 飯野和