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言葉の宝箱1309【こだわりのない奴にかぎって、他人のこだわりに文句をつけるんだよ】


『サイゴン・ティをもう一杯』(講談社文庫:昭和60年9月15日)


・花屋になるケースは、大雑把にいって三つのケースがある。
一つは、親が花屋であるケース。つまりは二代目だ。
こういう人々は、生まれたときから花を商品としてみている。
だから、
生きている花と造花の区別があまり判然としていないタイプが多い。
もう一つは、丁稚からたたきあげた職人が、
やっと自分の店をもつというケース。
こういう連中は、目標は大きな店をもつことだから、
売上の成績に対するこだわりがすさまじい。
目標のためにあまりにも精力的で、
花という生な存在に対する思い入れが、あまりにも少ない人々だ。
のこった一つは、
さまざまの理由によって偶然に花屋になっている種族(略)
花に対して不思議なこだわりや愛着をもっているという点では、
これらの連中がもっとも信用できる P16

・花屋はね、すでに刈り取られ切り取られてしまった花の死への儀式をね、ていねいにやっている仕事なんですよ P69

・こだわりのない奴にかぎって、
他人のこだわりに文句をつけるんだよ P83

・みんなふつうってことは、
みんな異常ってことにもなるわけなのよ P84

・自分のためってのがない人にとっては、
他人のためっていうのが自分のためと
同じみたいなところがあるのよね P92

・人間のやることなんて、
やさしいんだか残酷なんだか、わけが分ったもんじゃないんだからね、
そこで儀式ってのが役に立つ P131


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