言葉の宝箱 0463【迷わん人生てもん、どこにもありまへん】
忘れられない、でも二度と味わうことのできない一皿。
京都・東本願寺近くにひっそりと佇む
鴨川食堂ではそんな記憶の中の味を再現してくれるという。
元警察官で料理人の鴨川流と娘のこいし、
トラ猫のひるねのもてなしは人生に迷える人々の背中をやさしく押し出す。心もお腹も温まる美味しいミステリ。
看板のないこの店に辿り着く手掛かりはただ一つ、
料理雑誌に掲載される<“食”捜します>の一行広告のみ。
シリーズ第2弾。6話連作短編集。
『海苔弁』
料理下手な父親が覚えた、たった一つの手料理。近体大の北野恭介は水泳界のホープ。彼は中一の夏から中三の卒業まで、父親に毎日同じ弁当を持たされたという。
『ハンバーグ』
息子の大好きなハンバーグが許せない母親の後悔。食ジャーナリストの竹田佳奈は息子の一番好きな食べ物が、実家のハンバーグであることが気に入らない。
『クリスマスケーキ』
息子を交通事故で亡くした夫婦のけじめ。和菓子屋『香甘堂』を営む坂本正幸夫妻は六年前に一人息子を亡くした。過去に踏ん切りをつける決心をしたが…。
『焼飯』
知られたくない、でも忘れられない過去がある。白崎初子は鴨川こいしと大学の同級生。初子は大企業の御曹司からプロポーズを受けているという。『中華そば』
引き継がれたものは、夢を追い続ける心。小野寺勝司は大学時代、バンド練習を北大路橋の下で行っていたが、そこにはいつも同じ屋台が出ていた。『天丼』
迷わん人生てなもん、どこにもありまへん。
「北のひとつ星」という大ヒット曲の歌い手藤川景子は帰郷を決意したが、その前にかつてご馳走してもらった天丼を食べたいという。
・わしら料理人は一回勝負ですさかいに。
食べてもろてお気に召さなんだら、次はありませんのや。
気に入ってもろたら、二回戦もありますけどな P14
・食に粗末も贅沢もありまへん P15
・同じ失敗を繰り返したらあきませんね P41
・家庭という言葉がありますわな。家族が暮らす場所。
ここには食いもんだけやのうて、人の味、っちゅうもんがありますんや。
家族に囲まれてる安らぎとか、
互いの気遣いやらが味を醸し出すんですわ P78
・母親の愛情が籠ってたら、子供はどんなもんでも旨いと感じます P84
・<家、家にあらず。継ぐをもて家とす>世阿弥の言うとおりです P134
・食べもんというのは、味だけやおへん。
感じ方が違うて当たり前やと思います P187
・男ってのはね、
食い扶持のことばかり考えていてもつまらないし、
かと言って、夢を追い続けてばかりだと、きっといつかは挫折する。
家族でも持つとなったら、
ちゃんと食っていける方法を選ばなきゃいけない。
どこかで妥協する道を探すことになるんです P193
・一生懸命続けて来たことは、
誰かがどこかで受け継いでくれるもんです P208
・子供のころは嫌いやったのに、なんや歳取ると好きになって来る。
味覚っちゅうのは、不思議なもんです P226
・迷わん人生てもん、どこにもありまへん P249
・懐かしいだけやと飽きるんやて P252
この記事が参加している募集
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?