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言葉の宝箱0760【国や社会のことを考えなくなったのは政治家だけじゃない。経営者も企業人も同じ】


『国士』楡周平(祥伝社文庫2020/9/20)


カレー専門店『イカリ屋』の老創業者・篠原はフランチャイズ店と団結しチェーンを日本一に押し上げた。加盟店のオーナーにはリストラなどの苦渋を味わった人が多かったが、篠原への信頼は厚く彼らは自信を取り戻していった。一方篠原は将来を見据えアメリカ進出を決断を機に自らは経営を外れ、プロ経営者の相葉に託すことにする。フランチャイズビジネスの闇を描いた。『プラチナタウン』『和僑』の山崎が登場、関連ビジネス小説。

・成功するビジネスというのはそもそもシンプルにして
誰もが思いつきそうなものである場合が実に多い P25

・余人を以て代えがたいなんて仕事は存在しない。
それが、会社ってところなんですから P210

・気にしたところでどうにもならないという環境に身を置いてしまえば
それが日常になる P230

・どうしたら儲かるかって発想は、
どうしたら騙せるか、手を抜くかという考えにつながるものです。
お客様はね、商売人の狡さに敏感です。
だから目先の利益より、いかにして喜んでもらえるか。
それだけを考えなければならないんです。
純粋にそれを追究すれば、結果はおのずとついてくる。
成功する商売の秘訣はそれ以外にない P287

・人としてあるべき姿と、会社としてあるべき姿は必ずしも一致しない。
なぜなら会社は、より高い収益を追求する宿命を負っているからだ。
取引先の経営が危ないと見れば、
債権回収に走るのは、何も銀行だけじゃない。
これまでの付き合いなどなかったかのごとく、
商品を引き上げ、生産機器を回収して、損害をいかに最小限に抑えるか。
まさに鬼と化し、人の所業とも思えぬ行為が
当然のごとく繰り広げられているのがビジネスの世界だ P296

・組織を最適化し、業績を上げ、利益を増やし、
株主により多い配当を行う。
経営者に求められるのはそれだけです P307

・プロ経営者というものの、
本質的にはサラリーマン経営者以外の何物でもないのだ。
どうせ数年で交代するんだ、自分の時代だけよければいい P333

・サラリーマンってよく羊にたとえられますけど、
それは当たっていると思うんです。
ひとりひとりは弱い。だから群れを成して生きていく。
でもね、一旦群れが危機に陥ると、この群は豹変するんです。
群れが生き残るためなら、仲間を容赦なく切り捨てる。
それも弱い羊に狙いをつけて、
悪逆非道、いかなる手段を使うことも厭わない――。
馬鹿ですよね。哀れですよね(略)
当座の危機を凌いでも、また危機に直面すれば、
残った誰かが同じ目に遭わされることになるんですよ P336

・仕事は生活の糧を得るためのものであって、
それ以上でもなければ、それ以下でもない。
そのためには、
より多くの利益を会社にもたらす仕事をしなければならない P341

・国や社会のことを考えなくなったのは、政治家だけじゃない。
経営者も企業人も同じ P349

・自分さえ無事に生涯を終えられれば、
後の世代のことなど知ったことじゃない。
それじゃあ、あまりにも無責任ってもんじゃないですか P350


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