お金儲けが目的で、心が折れた話。
2005年創業当時の事業
2005年、今はスマホですが、まだガラケーの通販の時代ですね
当初のI-neは本当に何でもEC屋さんでした。
どんな物を売っていたかと言うと、めちゃくちゃ沢山ありますが、例えば、
TVで黒豆がダイエットに良いと放送されたらその場で取引先に問い合わせしまくって黒豆のサプリメントを在庫確保し、当日中にLP作って販売開始したり
韓国のスープが美肌に良いと放送されたら、韓国商店街まで走って店の在庫全部買って追加オーダールートも確保して、すぐに商品アップしたり
(特に当時はまだまだTVの力が強く、番組で紹介されたら翌日は関連商品が完売みたいな現象が良く起こってました。)あとは、ダイエットサプリとか、スリミングジェルとか、デリケートゾーンソープとか、いわゆるお悩み系商材も飛ぶように売れました。
当時は、カタログ通販やTV、PC通販とは違い、ガラケー通販では法律スレスレの過激なキャッチコピーで販売している会社が沢山ありました。恥ずかしながらI-neの体制もその中の一社と言われても反論できない時期がありました。 リピート率よりも、とにかく一回の広告でどれだけ回収できるか?(資金もギリギリで回していたので)しか考えていなかったので、もう過激なキャッチコピー合戦で他社と競い合っていました。
売れるものを見つけるために
当時は、国内外の女性雑誌、女性ブログ、様々なランキング、他社の売れてる広告は何か?とか毎日チェックしていました。
コンビニで女性雑誌「JJ」を立ち読みして、友達にマジで気持ち悪がられたのを良く覚えています。でもその大量inputのおかげで、当時は、女性より女性のトレンドを探っていたし、モバイル通販で何が売れてるか?売れそうか?はもしかしたら日本一ディグってたんじゃないかなと思います。
夜はほぼ毎日EC界隈の先輩経営者と会食に行きました。 だんだん酔っ払ってくると「あの広告ROAS何倍でたんだよねー」など教えてもらえ、 その情報をその場で当時ECを担当していた今井に連絡して、 すぐその広告買って徹夜で入稿!(すみません。ドベンチャーのマッドブラック企業でした。)みたいなことを毎晩していました。
本当に狂った様に、毎日毎日何が売れるか?を探し続けて、これは売れる!と思ったら世界一早く行動していたと思います。この圧倒的なトレンドキャッチとスピードを強みに、I-neはどんどん売上を上げていきました。
そして設立から4年、このような行き当たりばったりのビジネスで目標にしていた年商10億円が見えてきた頃、大きな転機を迎えます。
経営の目的
少し話は変わって経営の目的の話をします。
当時僕は何のために仕事をしていたのか?
僕は、22歳大学生の時に起業しました
当初はライブドアの堀江さん、サイバーエージェントの藤田さん、楽天の三木谷さん、ZOZOの前澤さんなど、若い起業家の方々がドンドン出てきて、上場したりニュースなどにも取り上げられていました。
いわゆるベンチャーブームだったと思います。
当時、僕はバーでアルバイトをしていましたが、お客様は社長が多く、みんな高級車に乗り、高いお酒を飲み、話せばとても魅力的で、自分もこんな風になりたいと思い、何をするかはともかく、まずは起業することを決めました。
じゃあ、どんな事業で起業しようか?を考えている時に、ガラケーの通販で友人が洋服を買っているのを見て、世界中の人が、いつでもどこでも手にした携帯電話から色々なものを買い物をするイメージが湧き、
これだ!と思い、ガラケーのアパレル通販事業で起業しました。
夢ノート
当時、起業した頃に読んだ本をベースに夢ノートを書きました。
夢ノートに何を書いたかと言うと
年収いくら欲しい
こんなマンションに住む
こんな時計をつける
こんな車に乗る
自由な時間
海外旅行
etc...
起業当初の夢は、本当にお恥ずかしながら、お金と自由な時間を手に入れることでした。若かったと言うことで、笑い話で済ませてください。
そこから冒頭の話に戻りますが、とにかく稼ごうとガムシャラに働きました。
そして社員が10名年商10億円が見えてきた頃に、売上ゼロ円だった頃に書いた夢ノートの夢がほとんど叶いました。
住みたかったマンション、乗りたかった車、欲しかった時計、夜の街に出て飲み歩いて、海外旅行も沢山行けました。
じゃあ起業当初の夢が叶った僕は、どんな気持ちだったかと言うと、
今思えば、人生で一番精神的に辛かった時期でした。
夢がかなったはずなのに。
毎日夜の街で友人達とお酒を飲んでも、行きたかった国に行っても、楽しくない。欲しかった車、欲しかった時計、住みたかったマンションを手に入れても、何も満たされませんでした。
そして仕事も、自分は何のために働いているんだろうと、社長なのに、自分の会社に行くのも嫌になるぐらい、精神的に苦しみました。
なんで?必死で頑張って、起業当初の夢がやっと叶い出したのに、なんで自分は何でこんなに満たされなくて苦しいんだろう?
真剣に考えました。
そこから、何とかこの状況を打破しないとと思い、大量の本を読み漁り、多くのセミナーや勉強会に参加し、いろんな先輩経営者に悩みを相談しました。
その中で、起業前からずっとお世話になっていた、とある社長にバーで相談にのっていただいていた時です。
「創業からめちゃくちゃ頑張ってきて、最近やっとお金が稼げるようになり、少しづつ買いたかった物も買えるようになりました。でも、何というか、本当に満たされなくて、最近会社に行くのも嫌で、何のために仕事をしているのか、自分自身でも良くわからなくなってきました」
弱音を吐くぼくに、少し笑いながらその社長はこう言いました。
「洋平くん。仕事をしていて、胸が熱くなる瞬間ないんか?お金稼いで好きなもの買う以外に、仕事をしていて胸が熱くなることぐらい絶対なんかあるやろ?」
仕事をしていて、胸が熱くなる瞬間。
その場で瞬時に答えられませんでしたが、自分の中で、この言葉がとても大切な言葉な気がして、すぐに会社に戻り、今までやってきたことを思い出しながらパソコンの画面を見ていました。ECのお客様からの商品レビューも過去を遡って、全部見直しました。
その中で、あるレビューが目に止まりました。
中学生の娘さんがいるお母様からのレビューでした。
「娘は髪の毛のクセが強く、最近年頃で、学校に行くのも少し嫌がるようになってきていました。そんな時に御社のストレートアイロンが楽天ランキング上位でレビューも非常に良く、価格もお手頃だったので、駄目元で購入し、娘にプレゼントしたところ、朝の数分で髪の毛がサラサラのストレートになり、それが1日中持つので、最近は嬉しそうに学校に行っています。」
という内容でした。
僕は、このレビューを読んだとき、全身に鳥肌がたち、オフィスで1人で、声を出して泣きました。
自分は、お金を稼いで欲しいものを買って幸せを感じるんじゃなくて、自分達の作ったプロダクトでお客様の悩みが解決されたり、お客様にささやかでも幸せな体験をお送りできたと実感した時に、こんなにも自分は胸が熱くなって、幸せな気持ちになれるんだ。
経営者として、人生で1番大事なことに気づくことができた瞬間でした。
そこから、自分がどんな会社を作りたいか、真剣に考えました。
この、ささやかでも幸せな体験を大阪中に届けたいか?そうじゃない。日本中に届けたいか?そうじゃない。世界中の人に自分達のプロダクトを使ってもらい、世界中の人にささやかでも幸せな体験をお送りしたい。そしてそれに幸せを感じている世界中の社員たちが頭の中で明確に見えました。
そこから、幸せは連鎖する、僕らはその連鎖を創り出していくんだという意志を込めて、 Chain of Happiness 商品を通じて世界中を幸せにする、と言うミッションができました。
ミッションができたら、何をすべきか見えてきた
ミッションができて改めて、自分達が売ってきたプロダクトや、とってきたコミュニケーションを見つめ直すと、ミッションに合わないと強く感じました。
なので、当時の売上の半分以上を占めるプロダクトを終売しました。
ベンチャー企業の売上50%を捨てるというのはめちゃくちゃ大きな判断でしたし、
それまで一生懸命LPを制作したり、お客様対応をしてきた社員からすると、自分たちの築きあげてきたものを急に否定されたみたいな感覚を抱いたのもあって、かなり何回もぶつかりました。
終売を判断して数ヶ月立った頃、
ある取引先の社長に、「あの商品、終売したと思ってたけど、まだ売ってるんだね〜再販したの?」と言われ、おかしいな??と思い、社員を問い詰めたら、売上減少を心配した社員の一人が、ぼくに内緒でこっそり売っていた事がわかり、しかも激しめのコミュニケーションのままで売っていて、
ミッションとずれることをしたらいけない!と、また大げんかしたり、、、
当時は15名ぐらいでしたので、一人ひとりと何度も話し合って、
ミッションができたこと。そのミッションに沿った経営をしたいことを伝え、ちゃんと納得してくれました。
そこから、お客様を幸せにできるプロダクトは何か?から商品設計するようになり、そうすると、
もっと最高の品質を実現しよう
もっと最高のクリエイティブにしよう
もっと最高のコミュニケーションでお伝えしよう
というこだわりがうまれ、メイクカテゴリから再出発して、先日紹介したBOTANISTなど、様々なブランドを創出することができるようになりました。
結果、顧客目線の弱い、いきあたりばったりのビジネスよりも、
当然ながら大きくヒットして、急成長できました。
Chain of Happiness 商品を通じて世界中を幸せにする
もしかしたら青臭い言葉に聞こえるかもしれませんが、僕も社員一同も本気でこれを実現しようと日々仕事に取り組んでいます。
年2回開催している社員総会ではお客様の喜びの声をまとめて動画にして流すのですが、届けることができたHappinessを実感して、感動して泣く社員もいるぐらいです。
振り返ると、創業当初は考え方もビジネスも、胸を張ってお伝えできるようなものではありませんでしたが、それでも、あの頃の失敗があったからこそ、経営者として思いっ切り頭を打ったからこそ、今のミッションが自分にも社員にも強烈に腹落ちできているんじゃないかなと思います。
今回は、ミッションの誕生エピソードをお伝えしました。
ミッションができて10年が経ち、今はまたミッションが更に磨き上げられ、新たに創りたい世界も更に明確になってきましたが、それはまた違う記事でご説明できればと思います。
長文お付き合いいただきありがとうございました!