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「Personal MBA ― 学び続けるプロフェッショナルの必携書」(ジョシュ・カウフマン著)を読んでみた

今年は「帰属から独立へ」がテーマの年になると思い、自分の裁量で物事を進めるために参考になりそうな書籍を読んでいます。

近年、MBA(経営学修士)への関心がビジネスマンのみならず学生の間でも高まっています。

これは、ビジネススキルや経営知識が従来の企業経営にとどまらず、スタートアップや非営利分野、さらには個人のキャリア形成においても重要視されているためです。

特にグローバル化やデジタルトランスフォーメーションが進む中、柔軟な思考や問題解決能力が求められ、これらを体系的に学べるMBAプログラムが注目されています。

これらの思考や能力は日常生活においても十分役立つように思います。

noteを活用してコンテンツビジネスを展開しようと考えているかたにも参考になると思います。

本書の概要

本書は、ビジネススクールで学ぶMBAのエッセンスを、より実践的かつ体系的にまとめた一冊です。

著者は企業研修や個人指導の経験を通じて「ビジネスの原理原則」を洗い出し、それらを誰にでも学びやすい形へと再構築しました。

本書は、MBA取得のために莫大な費用と時間を費やさずとも、ビジネスで成果を上げるための基本概念と実践的なフレームワークを身につけられるよう工夫されています。

さらに本書は、ビジネス経験の有無に関わらず読み進めやすい点が特長です。

単なる知識の羅列ではなく、心理学・マーケティング・経営管理など、多岐にわたるトピックを「ビジネスを動かす構成要素」に落とし込んで解説しているため、初学者にも理解しやすく、経験豊富なプロフェッショナルが学び直す際にも応用が利くようになっています。

具体例や実践的なアドバイスが多いため、読後すぐに「自分の仕事や生活に応用できる」感覚を得られるのも魅力です。


本書で取り上げられるテーマは、大きく分けて「ビジネスの基礎概念」と「ビジネスを機能させるための重要要素」です。

たとえば「人間が求めるものを理解し、提供できる製品やサービスを設計すること」「利益を生み出すしくみを構築すること」などが含まれます。

著者はビジネスにおける最重要事項を、下記のような5つのコア・プロセスとしてまとめています。

  1. 価値創造(Value Creation)
    顧客が望むものは何か、それをどのように提供すればよいかを考える段階です。
    製品やサービスの企画立案はもちろん、その価値を適切に設定することが求められます。

  2. マーケティング(Marketing)
    どのように顧客に価値を知ってもらい、興味を引き、実際に購入や利用に結びつけるかのプロセスです。
    セグメンテーション、ターゲティング、ブランディングなど、多面的な要素が組み込まれます。

  3. 販売(Sales)
    個別の相手を説得し、購入や契約を獲得する段階です。
    ここでは、相手の心理を理解してクロージングに導くためのコミュニケーション技術が重要になります。

  4. 価値提供(Value Delivery)
    実際に製品やサービスを届け、顧客が満足できるかどうかを管理します。
    ロジスティクス(物流)、カスタマーサポートなどの領域が含まれ、リピート顧客を獲得するための要ともいえます。

  5. ファイナンス(Finance)
    利益やキャッシュフローを正しく把握し、長期的に持続可能な事業運営を実現する部分です。
    コスト構造の把握や財務指標の読みかたも重要な要素となります。

著者はこれらのプロセスを統合的に考えることで、ビジネスを成功へと導く道筋を明確にするよう促しています。

また本書の特徴として、心理学・行動経済学・認知科学などの研究成果を紹介しながら「人は何をもって買うかを決定し、どう行動するのか」について多角的に解説している点が挙げられます。

「行動経済学の視点から見ると、顧客の意思決定には非合理的な要素が介在しやすい」といったインサイト(洞察)は、単なる商品設計やマーケティングの枠に留まらず、私たち自身の日常生活や意思決定にも応用できます。


本書の活用法

1.価値創造(Value Creation)の具体的な活用例

(1)家事・育児での「価値創造」

家事や育児といった家庭内の活動にも、「価値創造」の視点を取り入れることができます。

たとえば毎日のお弁当づくりを考えてみましょう。

お弁当は「ただ栄養を摂取するだけ」ではなく、「食べる楽しみ」や「見た目の美しさ」、あるいは「忙しい中でも手軽に食べられる利便性」といった付加価値を提供できます。

家族が欲しているのは、単なる「食事」だけではなく、「安心感」「健康」「時間の節約」など、さまざまな要素が組み合わさった価値です。

そこで、メニューを作成する際に栄養バランスや彩り、時間短縮テクニックを意識すると、家族にとってより魅力的なお弁当になるでしょう。

こうした工夫は、ビジネスの「価値創造」と同じように、「相手の求める価値を深く理解し、それに対応する方法を考える」プロセスそのものです。

(2) 趣味や特技の「商品化」

自分の趣味や得意分野を活かして周囲の人に喜んでもらう機会を作るのも、「価値創造」の一種です。

たとえば写真撮影が得意な場合、ただ趣味として撮りためるだけでなく、友人や知り合いのイベントで写真係を買って出るなど、「相手のニーズに合った形でサービスを提供」してあげると、感謝されると同時に自分のスキルをさらに磨くことができます。

そこから「どのように撮影して欲しいか」「どんな場面を残したいか」というニーズを引き出して応えることで、ビジネスの価値創造と同様のプロセスを経験できます。

将来的に「有償で撮影する」という形でビジネスにつながる可能性もありますし、純粋に人の役に立ちたいという気持ちを満たす場としても有効です。

2.マーケティング(Marketing)の具体的な活用例

(1)自分の得意分野やサービスを「周囲に知ってもらう」

マーケティングは、「自社(自分)の提供価値を多くの人に知ってもらい、興味を喚起するプロセス」です。

これは日常生活のあらゆるシーンでも応用可能です。

たとえば、あなたが料理やデザイン、DIYなど得意なことを持っている場合、それをいかに周囲の人にアピールするかを意識してみると、思わぬ需要が見つかるかもしれません。

具体的には、SNSやブログ、個人サイト、趣味のコミュニティを活用して、自分が作った作品を見せたり、役立つ情報を発信したりすることで、あなた自身の市場認知を高められます。

ビジネスでいえば「セグメンテーションとターゲティング」にあたるプロセスとして、「どんな人に向けて、どんな価値をアピールしたいか」を明確にすることが大切です。

結果として、似た興味・関心を持つ人たちと繋がるきっかけが増え、場合によっては副業や新たな仕事のオファーにつながる可能性もあります。

(2)友人や家族とのイベント計画への応用

マーケティングの根本は、「相手が求めていることを正しく理解し、最適な提案をする」ことです。

友人や家族向けのイベントを企画する際にも、この考えかたは役立ちます。

たとえば、パーティーを開くとき、「誰を呼ぶか(ターゲティング)」「どんなテーマや料理が喜ばれるか(提供する価値)」「どんな手段で誘うか(プロモーションチャネル)」を明確にすると、より多くの人に参加してもらえて、満足度も高まりやすくなります。

具体的には、イベントのコンセプトを決める段階で「子連れでも参加しやすい食事やレイアウトを用意する」「料理が得意な人に手伝ってもらう」「SNSの告知やメッセージによるリマインドで参加者を集める」といった工夫をすると、相手のニーズをしっかり満たすイベントに仕上がるでしょう。

これらはビジネスにおけるマーケティングのプロセスと全く同じで、「誰に何を伝え、どのように行動してもらうか」を設計することで、成果(参加率や満足度)を最大化できます。

3.販売(Sales)の具体的な活用例

(1)新しいアイデアや提案を通すための「セールス」

日常生活でも、何か新しいアイデアや企画を人に受け入れてもらいたい場面があります。

たとえば職場での新提案、サークル活動のイベント企画、家族での旅行計画などが好例でしょう。

こうしたとき、単に「こうしたい」と主張するのではなく、相手にとってのメリットやデメリットをわかりやすく提示し、「説得する」というアプローチはビジネスにおける「セールス」と重なります。

家族旅行のケースを考えると、「なぜその旅行先が良いのか」「どんな楽しみかたができ、どんな思い出が残るか」といったポイントを整理してプレゼンすると、相手の興味を高め、最終的に賛成を得やすくなります。

これはセールスにおける「顧客の心理を理解し、適切な情報を提供する」プロセスと似ています。

(2)子どもや家族とのコミュニケーションでの「セールス」

セールスは物を売ることだけではありません。

たとえば子どもに勉強や家事を手伝ってもらうときも、ただ命令するだけではなく「その行動を起こしたくなるように動機づける」ことが大切です。

「勉強を頑張るとこんな未来が待っている」「家事を覚えると自立に役立つ」といったベネフィット(効果)を伝えながら、子ども自身が納得できる形で提案していきます。

このコミュニケーションの流れは、ビジネスにおける「クロージング」の一種と考えることができます。

「相手にとっての価値」を具体的に提示し、行動を後押しすることで、家族間のコミュニケーションもスムーズに進むでしょう。

4.価値提供(Value Delivery)の具体的な活用例

(1)約束や予定の管理、アフターフォローを重視する

「価値提供」は、セールス後に顧客(受け手)に対して実際に製品・サービスを届け、満足を得てもらうプロセスを指します。

日常生活では、たとえば「誰かに頼まれた作業や手伝いを時間通りにきちんと仕上げる」「イベントの後もフォローの連絡をする」といった行動が該当します。

たとえば友人に手作りの菓子を渡す約束をしたなら、必ず期日通りに仕上げ、丁寧に渡すことまで行ってはじめて「価値」をしっかりと提供したと言えます。

さらに、お菓子の味の感想を聞いたり、改善点を受け取ったりすることで、「次回へのブラッシュアップ」にもつながります。

ビジネスと同様、最初の約束(セールス)は入り口に過ぎず、「ちゃんと期待を上回る形で応えられるか」がリピートや評価につながります。

(2)コミュニティ活動やボランティアでの「継続サポート」

地域のコミュニティ活動やボランティアなど、社会貢献の分野でも「価値提供」は重要です。

一度きりのイベント参加や支援ではなく、相手が本当に困っていることや求めていることを継続的にサポートしようとするとき、適切な連絡体制やフォローアップが求められます。

たとえば定期的にご年配のかたの買い物を手伝う場合、「ただ商品を買ってくる」だけではなく、「今本当に必要なものは何か、ライフスタイルや体調の変化はどうか」をヒアリングすることで、より最適なサポートが可能になるでしょう。

結果として、相手からの信頼度も増し、活動の継続性や満足度も高まります。

これはビジネスでいう「カスタマーサポート」や「アフターサービス」の一環であり、誠実かつ継続的な対応が本当の「価値提供」と言えます。

5. ファイナンス(Finance)の具体的な活用例

(1)家計簿と資産運用の「見える化」

ファイナンスが意味するのは、企業活動において利益やコスト、キャッシュフローをどう管理していくかということですが、これは個人レベルの家計管理にも直結します。

日常生活では、たとえば「家計簿をつける」ことが最初の一歩となります。

きちんと記録を残し、支出の傾向を把握することで、どこに無駄遣いがあるのか、どのタイミングでキャッシュが不足しやすいのかを客観的に分析できます。

さらに、貯蓄や投資を行うときは、自分がどれだけの余剰資金を運用できるのか、緊急用にどのくらいのキャッシュを確保しておくかなどを計画的に設定することが重要です。

具体的には、収入の一定割合を先取り貯蓄し、投資商品もリスク許容度に応じて複数の種類に分散しておくといった方法が考えられます。

これらは企業の資金繰りや投資計画における「キャッシュフロー管理」や「リスク分散」と同じ発想で、個人の家計を安定的に維持・成長させるうえでも欠かせない要素です。

(2)大きな支出(車・住宅)の購入計画

ファイナンスを家庭で実践するもう一つの例として、「大きな支出の計画」を挙げられます。

車や住宅、あるいは子どもの学費など、まとまったお金が必要となるイベントに備える際には、企業が新規プロジェクトに投資するかどうかを検討するのと同じように、費用対効果や将来的なリターンを考慮して意思決定することが大切です。

たとえば車を購入する場合、「ローンを組むと利子負担がどれくらいになるか」「維持費(保険、駐車場、修理費、ガソリン代など)は年間どれくらいかかるか」を試算し、総支出を把握することで、無理のない支払い計画を立てることができます。

住宅であれば、固定資産税やリフォーム費用、万一のトラブルへの備えなど、長期的な視点でキャッシュフローを試算する必要があります。

このように、長期視点でリスクとリターンを分析する思考法こそ、ファイナンスのエッセンスであり、日常生活での重要な指針になります。

6.小括

「価値創造」「マーケティング」「セールス」「価値提供」「ファイナンス」という5つのプロセスは、ビジネスの現場だけで活きるものではなく、その思考法や手法は私たちの身近な暮らしにも幅広く応用できます。

日常生活のあらゆる場面で、相手のニーズを理解し、自分ができることを魅力的に提案し、きちんと約束を果たすプロセスそのものが、まさに本書で示されるコア・プロセスに対応しています。

これらを意識して行動すれば、家族や友人、同僚とのコミュニケーションが円滑になり、信頼関係も築きやすくなるはずです。

そうした積み重ねが、人生全体の質を向上させる大きな一歩になるでしょう。

わたしの感想

本書は、名前のとおり「MBA相当の知識を手軽に学べる」という実利的な側面が大きな魅力です。

加えて、著者が「ビジネスとはそもそも何か」という根源的な問いに答えようとする姿勢が、読者にとっても重要な学びの機会を提供していると感じました。

ビジネスはお金儲けの手段でありつつも、人間の欲求や社会との関わりを抜きにしては成立しません

本書では、その点を多角的な視点(心理学や行動経済学など)から理解しようと試みています。

また、実際に読んでみると「すぐに使えるヒント」が詰まっているのはもちろんのこと、あらゆる仕事や活動を「価値創造のプロセス」としてとらえ直すきっかけにもなりました。

たとえば、ただ「お金を稼ぐため」に働くだけでなく、「自分が提供できる価値は何か」「どうすれば相手の満足につながるか」を考えることは、結果的に仕事の質とモチベーションを高めてくれます。

総じて、MBAレベルの体系的な知識を得られるだけでなく、「日常のあらゆる場面でこのエッセンスをどう活かすか」という点について思いを至らせることができるため、多くの読者にとって「思考のフレームワーク」を獲得する良い機会になると思います。

これからビジネスの学びを深めたいかた、あるいは自分の活動を一歩高めたいと考えているかたにとって、本書は心強いガイドブックとして活用できるのではないでしょうか。




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耀興
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