古事記をラノベとして読む
多神教である日本の神々の頂点は、アマテラスという女神だといわれている。
基本、彼女は天界にいて下界に降りてくることはない。
ただ、彼女にはスサノオという素行不良の弟がいて、こいつが不祥事を起こした上に天界からバックレて下界に逃げ込むという予想外の事態になったんだ。
基本アホではあるが、力だけはアマテラスにも匹敵するというスサノオ。
これは確実に下界がメチャクチャになると思いきや、意外にもスサノオは下界の民を助ける勇者みたいな立ち位置になっていくのね。
特に有名なのが、蛇のモンスター・ヤマタノオロチとの対決だろう。
彼がオロチを倒すと、なぜかドロップアイテムとして剣が出てきた。
これが有名な草薙の剣、言わずと知れた三種の神器のひとつである。
こういう一連の流れ、どう考えてもRPG、もしくはラノベだよね。
古事記って、実はラノベだったのか・・・?
やがてスサノオはオロチの生贄になるはずだった女との間に子供を作り、そしてその血脈の中からオオクニヌシという勇者が誕生することになった。
ちなみに、このオオクニヌシの強みとなる能力は何かというと、女にモテること(笑)。
そう、ハーレム属性なんだ。
彼はこの属性を武器にして、下界を支配するに至った。
おいおい、どんな勇者やねん(笑)。
まあそれはいいとして、問題はそこからである。
下界のその様子をずっと監視してた最高神アマテラスが、遂に動き出したんだ。
彼女は同僚であるタケミカヅチというメチャクチャ強い軍神を呼び出して、「下界の支配権を奪い取ってきてくれ」と依頼。
そしてタケミカヅチはそれを了解し、下界に降り立ったのね。
で、彼はオオクニヌシを訪ねた。
そこでちょっとした駆け引きがあったものの、オオクニヌシにしてみれば自分は神と人間の混血、相手は100%純血の神、こりゃ勝てんわと考えたんだろう。
結局、オオクニヌシは全面戦争をすることなく支配権をアマテラス側に引き渡した。
これが俗にいう「国譲り」伝説である。
オオクニヌシって勇者のくせにチキンじゃね?というのが私の率直な感想だったが・・・。
そうやってオオクニヌシから下界の支配権を奪ったアマテラスは、溺愛してる自分の孫・ニニギにその支配権を与えたんだ。
やがてニニギは下界に降り立った。
その場所は今でいう宮崎県だったといわれている。
彼らの一族は、しばらくそこで平和に暮らしたらしい。
ところがニニギの曾孫の代になって、一族みんな急に気がついたんだよ。
あれ?俺たち平和すぎじゃね?
俺たち国の支配権もらったはずなのに、全然支配してなくね?
てか、ここ九州だし、めっちゃ端だし、やっぱ本州行かなくちゃ支配したことにならなくね?
つーか曾爺さんって、何でこんなヘンピな場所に降りたのか理解不能じゃね?
ドジっ子だね、うける~。
という流れから「神武東征」が始まったのさ。
とりあえず近畿を東征の目標に設定した神武一行だったが、その当時の近畿では原住民たちがニギハヤヒと称する神を崇拝してる様子。
原住民軍のリーダーはナガスネヒコという男で、神武軍は彼に相当手を焼いたようだ。
苦戦しつつも何とか敵本拠地に乗り込み、遂に神武はラスボスであるニギハヤヒと対面。
神武「俺、神なんだけど」
ニギ「俺もだよ」
神武「これ証拠ね」
ニギ「俺の証拠はこれ」
神武「うわー、本物だー」
ニギ「お前のも本物だー」
ナガスネヒコ「こんなの認めん!」
ニギ「じゃ、死ね(なぜかナガスネヒコを殺害)」
神武「・・・」
ニギ「俺をあんたの家来にしてよ」
神武「いいよー」
というのが神武東征の最終回ネタバレなんだが、個人的にはナガスネヒコが不憫でならない。
まさか、このクライマックスにきて前章「国譲り」が伏線だったと判明するなんて予想できなかった。
よりによってラスボスが中ボスを殺し、主人公はただそれを傍観してるだけという究極の大どんでん返し。
これ、ラノベとしては予測できないという意味で秀逸なのかもしれない。
個人的にはラノベ版古事記のアニメ化を希望してるので、今のうちキャスト担当を決めておきたいと思う。
【古事記】
・原作/太安万侶
・制作/シャフト
・監督/新房昭之
<配役>
・アマテラス/坂本真綾
・スサノオ/松岡禎丞
・ヤマタノオロチ/中田譲治
・生贄の女/花澤香菜
・オオクニヌシ/中村悠一
・オオクニヌシのハーレム要員①/早見沙織
・オオクニヌシのハーレム要員②/東山奈央
・オオクニヌシのハーレム要員③/水瀬いのり
・オオクニヌシのハーレム要員④/高橋李依
・タケミカヅチ/諏訪部順一
・二ニギ/釘宮理恵
・神武天皇/梶裕貴
・ナガスネヒコ/津田健次郎
・ニギハヤヒ/神谷浩史
<音楽>
・梶浦由記
OP曲/坂本真綾
ED曲/早見沙織、東山奈央、水瀬いのり、高橋李依
という冗談はおいといて、話を元に戻すね。
気になるのが上記のニギハヤヒという謎の神なんだが、結局彼は本当に神武の家来になるのよ。
やがてその子孫が物部氏となり、王権の軍事を司る要職に就いた。
うむ、この寛大さこそが日本の神の大きな特徴といえよう。
よく考えるとオオクニヌシの国譲りの時にしても、アマテラスは国津神の為に出雲大社を建立してたっけ。
普通にワールドスタンダードだと、侵略した側は旧王朝の痕跡を根こそぎ消すもんじゃない?
特に古代中国なんて、一族郎党女子供に至るまで全員殺すのがお約束さ。
日本の神は甘い?
そうかもしれんが、私は好きである。
手ごわい敵だった奴が最後には味方になるパターンって、普通にエンタメの王道じゃん?
悟空に敵対してたベジータ、ルフィに敵対してたニコロビン、上条当麻に敵対してた一方通行、みんな今となっては欠かせない戦力じゃないか。
さすが日本の神様、古代からすでにエンタメを理解してたんだね。