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「ダンまち」劇場版を見てると、めっちゃ考えさせられる
今、ちょっと事情があって「ダンジョンに出会いを求めるのは間違っているだろうか」5期の視聴を中断してるわけだが、
「そうだ、こういう時にこそ、まだ見てなかった『ダンまち』劇場版を見てみよう」
と思いたち、昨夜これを見たんです↓↓
劇場版「ダンジョンに出会いを求めるのは間違っているだろうか~オリオンの矢~」(2019年)
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・・何これ?
めっちゃ傑作じゃん!
正直、TVアニメの劇場版というのは期待外れのものが多いし、これもさほど期待してなかったんだが、もう完全に事前の予想を上回ってきたね。
後で知ったが、どうやらこれ、原作者の大森藤ノ先生が映画オリジナル用に書き下ろしてくれた脚本らしい。
・・そう、たまにこういうのがあるんだよ。
原作者が、めっちゃアニメに協力してくれるパターン。
いまどきの作家さんは昔の作家さんと意識がだいぶ違うというか、メディアミックス全部ひっくるめて「私の作品」という考え方をしてるんだろう。
とてもいい傾向だと思うわ~。
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この劇場版のメインヒロインは、アルテミスというTVアニメ本編では今まで出てこなかった女神。
天界ではヘスティアの親友だったらしい。
ネタバレすると、このアルテミスがモンスターに捕食されてしまい、結果として<神+モンスター>という最強最悪の融合体、それこそ世界を滅ぼせるほどの大厄災になってしまったわけね。
劇中ラストでは主人公ベルがこれと対峙し、倒すことに成功。
つまり、ベルはこの事件をもって、「神殺し」という果てしなく重い十字架を背負うことになったんだ・・。
こんな超重要なエピソード、原作者自らじゃないと絶対に書けない脚本内容だろう。
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で、この映画を見て、私は「ダンまち」の設定をこれまで誤解してたことに初めて気付いたわ。
「神」というのは、てっきり不老不死の存在だと思ってたのよ。
仮に地上で殺された形になったとしても、それはイコール「天界に還る」ということで、別に存在そのものが死ぬわけじゃないんでしょ、と。
・・ところが、この劇場版では「神は死ぬ」ということがはっきりと露呈。
で、思ったんだよね。
神でさえ普通に死ぬのなら、じゃ神と人間の違いって何?と。
ようは天界の者かそうでないかということなんだろうが、少なくとも地上では神といえど奇蹟の行使はできないし、おまけに死ぬというのなら人間ともさして変わらん存在じゃないか、と。
そう、神というのもしょせんは人間と同じ、この宇宙における「生き物」の一種ということだよね?
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そういや、「ドラゴンボール」でも神様は宇宙人みたいな存在だっけ。
精霊のようなふわっとした存在じゃなく、輪郭のはっきりした有機的生命体だった。
「ダンまち」では、アルテミスにせよヘスティアにせよ、彼女らはギリシャ神話に出てくる神々である。
そもそも、ギリシャ神話って何?
これはギリシャに古くからある民間伝承で、紀元前6世紀頃から書物化されてきたものらしい。
だから作者もはっきりしないんだが、これは誰かがおとぎ話として創作したというよりも、何らかの史実に噂として尾ひれがつき、話が盛りに盛られて最後は「神話」になった、と見るのが妥当だろう。
だからゼウスにせよポセイドンにせよハデスにせよ、きっとモデルになった人物はどこかに存在したんだよ。
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これは、「Fate/GrandOrder」に出てくるギルガメッシュ王である。
ギルガメッシュといえば「Fate」シリーズの中では屈指の人気キャラで、特に「Fate/Staynight」では作中最強の英霊として位置づけられている。
じゃなぜ、ギルガメッシュがこんなにもチート級に強く設定されてるのかというと、それは彼が全キャラの中で最も古い時代の英霊だからさ。
彼は古代メソポタミア、紀元前2600年頃の王だとされている。
紀元前2600年って、それって多分「ギリシャ神話」とほぼ同時代でしょ?
・・そう、だからギルガメッシュは「メソポタミア神話」のキャストなわけで、いうなれば「ギリシャ神話」におけるゼウスやポセイドンにも近い存在である。
そんなの、チートに決まってるじゃん?
仮に日本で考えても、「日本で史上最強は誰かを決めようぜ!」とかいって
・宮本武蔵
・塚原卜伝
・武蔵坊弁慶
・那須与一
・大山倍達
・千代の富士
・アントニオ猪木
・スサノオ
という天下一武道会を実施すりゃ、ほぼ間違いなく優勝するのはスサノオですよ。
だって、神様だもん。
仮にスサノオ相手に卍固めを極めても、そんなの「・・ギ、ギブ」とか言うわけないじゃん。
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やっぱ、神話時代の奴はチートだよ。
くぐってきた修羅場が、「熊殺し」レベルじゃないからね。
この「神話時代」というもの、神が下界に降りてきて人間と少し絡んだ時代というのはどの神話にもあるわけだが、それの大体は紀元前の出来事である。
日本でいうとスサノオ、オオクニヌシ、そして神武天皇もまた神にカウントしていいだろう。
神武東征が紀元前660年のこと。
彼が九州から東征として近畿に攻め入った時、その頃の近畿にはニギハヤヒという神がいて、その配下のナガスネヒコというのがめっちゃ強く、神武軍がそれに押されて劣勢に立つ、というくだりがあるんだわ。
これを「ダンまち」っぽくいうと、近畿は「ニギハヤヒファミリア」勢力圏だった、ということだね。
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でさ、この神話のオチがどうなるのかというと、神武軍は満身創痍ながらもニギハヤヒの本拠に辿り着き、神武⇔ニギハヤヒが同じ「神」であることを確認し合ったところまではいいんだが、なぜか、ニギハヤヒがナガスネヒコを殺して、やけにあっさり神武に恭順するのよ。
このくだり、私は昔からワケ分からなくてね。
あれほど自分に忠誠を誓い、体を張って色々頑張ってくれてたナガスネヒコを、なぜニギハヤヒは無慈悲にも殺してしまったんだ?
ナガスネヒコ、あまりにも可哀相すぎるし・・。
このニギハヤヒって奴、昔からどうも好きになれん。
まぁでも、これが日本の伝統、「国譲り」というやつさ。
①出雲の国譲り オオクニヌシがアマテラスに恭順
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②ヤマトの国譲り ニギハヤヒが神武天皇に恭順
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③江戸の国譲り 江戸幕府が朝廷に恭順
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面白いなと思うのが、③は②同様に九州(薩摩藩)をスタート地点として、ともに東征という形で「国譲り」を成功させてる、という歴史のループ構造があることだよ。
・・あ、ループ構造といえば、神功皇后(応神天皇)の時だって九州⇒近畿という東征ルートで、これはストーリーそのものが完全にループしちゃってるんだよなぁ・・。
付け加えると、①の<アマテラス+オオクニヌシ>という合併にしたって、これはいうなれば
<薩摩(アマテラス=卑弥呼の勢力圏)+長州(オオクニヌシの勢力圏)>
すなわち、古代の薩長同盟ともとれるわけです。
つまり、ここにも奇妙な歴史のループ構造があるわけさ。
ひょっとして、日本神話とは「預言の書」なのか?
あと、日本史最大の「国譲り」といえばこれです↓↓
④日本の国譲り 昭和天皇がマッカーサーに恭順
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で、これも歴史認識として興味深いのは、米国は2発の原爆を落として日本を恭順させたわけよね。
最大のポイントは、その原爆を投下した場所さ。
<広島(オオクニヌシの勢力圏)+長崎(アマテラス=卑弥呼の勢力圏)>
つまり、全ての原点である①に回帰し、そこをリセットしてしまったということ。
そして昭和天皇は「人間宣言」、「ボク神様じゃないよ~、人間だよ~」と言って「神」の座を降りた。
これにより、「神話」は完全に終焉、完結したわけよ。
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なんつーかさ、我々の住む日本という国って、つい80年ほど前までその実体は<アマテラスファミリア>だった、ということよね。
そして国民は皆、ベル君だったんですよ。
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真面目で、めっちゃ働き者のベル君ですわ。
昔から彼はちょっと天然入ってるわけで、女神が「ボク神様じゃないよ~、人間だよ~」と言っても、「またまた、神様ったら~」と言って相変わらず働き続けている。
日本というのは、いまだそういう国である。
「日本神話」ってやつは、意外と今なお継続してるのかもね・・。
さて、最後に「ダンまち」へと話を話を戻すんだけど、私はこの大森先生のことをかなり歴史(特に古代史)に造詣深い人だと薄々感じてるんですよ。
よって、この「ダンまち」という物語自体が、一種の歴史オマージュで構成されてるんじゃないかな、と。
①東征⇔ダンジョン制覇
②国譲り⇔天界の下界統治放棄、セカイの統治を人間へと禅譲
③天皇の人間宣言⇔ヘスティア、神から人間になる
⇒ヘスティアとベル、その後は「人間の夫婦」として仲睦まじく暮らしていく
私は、この物語の結末をそういう大団円の形だと予想している。
ようするに、ハッピーエンドですよ。
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