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映画「ドラゴンボール」は、20作目から急に凄くなった!

今回は、映画「ドラゴンボール」シリーズについて書いてみたい。
・・いや、まず最初に言っとくと、私は「ドラゴンボール」が好きなところと嫌いなところが両方あって、具体的にいうと

<好きなところ>
・バトルシーンがサイコー!
・鳥山先生のデザインセンスがサイコー!

<嫌いなところ>
・キャラの強さインフレが収拾つかない
・たびたび死んだキャラが生き返る展開はいかがなものか
・ドラマとしては薄っぺらい

といったところかな。
まぁ、そういう意味では個人的な作品評価として
「ドラゴンボール」<「ワンピース」
という考え方なのよ(異論は認める)。

つまり、私の解釈として

<画力>
鳥山明>尾田栄一郎

<プロット構成力>
鳥山明<尾田栄一郎

ということであり、まぁ御二人とも神レベルの天才なのは間違いないわけで、あとは受け取る側の好みの問題である。
ただ、尾田先生自身はこう言ってるんだよね。

「バトルでは『ドラゴンボール』に勝てないので、そこは避けざるを得なかった」


つまり、尾田先生は「ワンピース」をバトル漫画として描いてない、ということね。
そういう意味じゃ、ジャンプ王道中の王道なのは鳥山先生の方だろう。
拳は世界共通」であり、だから国際市場的にもいまだ「ドラゴンボール」人気は極めて高い。
また、鳥山先生自身も
バトル表現を限界なくやるには、意外と映画という媒体がベストでは?
と考えたのかは知らんが、2013年以降、劇場版「ドラゴンボール」の制作にも積極的に関わるようになっていた。
・・いや、一部の噂では先生がハリウッド実写版「ドラゴンボール」を見て

「あかん。映画スタッフを信頼して任せたら、酷いことになってしまうこともあるんや・・」


と、そこでようやく目が覚めた、という説もある(笑)。

ハリウッド実写版「ドラゴンボール」

鳥山先生のモチベを再燃させたという意味では、悪評高い実写版にも一応の価値があったということだね。

・・で、晩年の鳥山先生は、アニメのお仕事で非常によく働いてたと思う。
特に、直近の劇場版2作品は「ドラゴンボール」映画シリーズの中でも群を抜いた会心の出来だったかと。

「ドラゴンボール超 ブロリー」(2018年)脚本・鳥山明
興行収入40億(世界興収135億)

「ドラゴンボール超 スーパーヒーロー」(2022年)脚本・鳥山明
興行収入25億(世界興収138億)

この2作品から東映も「世界戦略」フェーズに入ったらしく、かなり本気で海外市場を獲りにいったようだ。
もはや、「東映まんがまつり」なんてのは過去の話。
注目してほしいのは、2022年の「スーパーヒーロー」が国内興収25億と前作を下回ったのに対し、世界興収では138億で前作を上回り、なんとシリーズ最高記録を更新しちゃってるのよ。
「ドラゴンボール」の海外人気ポテンシャル、ホント侮れんよなぁ・・。
一説には、漫画の発行部数などは別とし、コンテンツとしての人気はいまだ「ドラゴンボール」が「ワンピース」を上回ってる、という話もある。
実際、私もそうじゃないかと思う。
なぜなら、

「ドラゴンボール」は「ワンピース」と違い、頭からっぽにしても楽しめるという、超純粋なエンターテイメント作品だから。


国籍問わず、人種問わず、教養問わず、あらゆる人たちに楽しんでいただくには、誰にでも理解できるシンプルさこそが一番大事だということさ。
そういう意味じゃ「ワンピース」は物語が複雑すぎて、やや人を選んじゃうよね。
やっぱ、「ドラゴンボール」最強、鳥山明最強、なんですよ。

さて、映画の方の本題に入ろう。
皆さんの中には、こういう人たちが絶対数多くいると思う。

『ドラゴンボール』は子供の頃よく見てたしファンだったが、今さら見るにはシリーズが長すぎるし、正直しんどい・・

はい、それはゴモットモですね。
今からシリーズ追いかけるのは正直しんどい。
だからこそオイシイところだけピックアップすりゃいいわけで、そういう人の為にこそ劇場版がある、といっても過言ではないんだ。

でも、映画だけでも21作品もあるぞ・・と思うかもしれんが、別に全部見る必要はあるまい。
映画21作品でホントにオイシイといえるのは、ぶっちゃけ「ブロリー」と「スーパーヒーロー」、この2作品だけである
せいぜい手を広げるとして、鳥山先生が企画に関わるようになった第18作目以降、「神と神」、「復活のF」を含めた4作品といったところか。
・・いや、できれば、もうひとつ押さえておきたい作品があるわ。
それがこれ、第17作目「最強への道」である↓↓

劇場版「ドラゴンボール 最強への道」(1996年)

これは「ドラゴンボール」の東映アニメフェア(まんがまつり)最後の作品である。
画を見ての通り、悟空がまだ小さい。
そう、これは初期「ドラゴンボール」のリメイク作品なんだ。
悟空がブルマと出会い、亀仙人と出会い、といった初期のくだりを90年代のアニメーション技術で再現してみました、という企画である。
ゆえに、「ドラゴンボール」復習編としては最高のテキストといえよう。
あと、この作品の敵キャラが「レッドリボン軍」となっており、最新作の「スーパーヒーロー」と完全に符合した物語なんだよ。

vsレッドリボン軍がメインだった「最強への道」

最新作「スーパーヒーロー」は、作品テーマが「新世代」だった。
ぶっちゃけ、正主人公の孫悟空は本作だと脇役なのよ。
そのライバル、ベジータも。
多分、このへんの事前情報があったがゆえ、本作は前作国内興収を下回ったんだと思う。
「え~っ、ベジータ出ないのぉ?」という感じで、少なくとも女性ファンはモチベが落ちたことだろう。
そういえば以前、「銀魂」の中でこういうフレーズがあったっけ・・。

このフレーズの通り、最新作「スーパーヒーロー」はオトコ狙いだったのかは知らんが、実質の主人公はピッコロなんですよ。
あと、悟空の息子・悟飯。
この師弟コンビが主人公という、ちょっとした変化球でしたわ。
そして闘う敵も、今は亡きレッドリボン軍総帥レッドの息子・マゼンタ。
あと、レッドリボン軍Dr.ゲロ(かつて人造人間17号18号やセルを作った人)の孫・Dr.ヘドである。
ようするに、かつて戦った世代の息子、孫といったところが今回のメインということね。

レッドリボン軍再興を目指すマゼンタ(右)と、それに協力するDr.ヘド(左)
今回はピッコロ&悟飯の共闘でレッドリボン軍を潰す

なんていうかな、ピッコロがホントいいのよ。
悟飯の娘のパンちゃん(3歳)に稽古つけてたりとか、パンちゃんの幼稚園の送迎にいったりとか、この人は悟飯の時といい、めっちゃ子供の面倒見がいいタイプみたい。
ぶっちゃけ、パンちゃんは実父の悟飯以上にピッコロになついてるし。

右がパンちゃん

で、ピッコロいわく、「悟飯の潜在能力は悟空以上」なんだそうだ。
ただし、まだ覚醒してない、と。
で、本作は悟飯が覚醒するくだりを描いたものなんだけど、その覚醒に至るトリガーが、前述の第17作「最強への道」における父・悟空の覚醒時と全く同じという対比構図になってるわけよ。
これは、敢えて「父と同じ流れ」を鳥山先生が演出したんだと思う。
だから是非、「スーパーヒーロー」を見る前に「最強への道」を見ておいてほしい。
これを見てる見てないで、感動の質が全く変わってくるから。

ブロリー

で、これは第20作「ブロリー」における敵役・ブロリーです。
今までの劇場版で何度も出てきてるブロリーだけど、それらは一切忘れて「無かったこと」にしてください。
ちゃんと鳥山先生が考案した第20作のブロリーこそ正統だと思うので、これを正ブロリーと解釈しましょう。
で、鳥山先生の設定では「破壊神ビルスより強い」っぽいので、あるいは「ドラゴンボール」全キャラ最強ランキング上位という可能性すら出てきたね。
今後も劇場版シリーズにおいて、キーマンとなりそう。
何より、第20作の悟空vsブロリーは歴代最高のバトル描写だったと思うよ。
何が凄いって、3DCGの超絶クオリティである。

いやいや、ここ何年かのうちに東映アニメーションの3DCGは日本最高水準に到達した感があるよね。
この急激な技術向上って、東映に一体何が起こったんだろう?
・・だけどさ、こういうド迫力映像は確かにありがたいものの、私としては東映の最もリスペクトすべき部分って、「あの鳥山先生の緻密なデッサンを忠実にアニメとして再現した2D作画力」の方なんだよ。
そういうところを考えると、またTVシリーズをイチから見返してみたくなるという誘惑にかられるんだけど・・。

こういうバイクとか、クルマとか、ロボとか、建築物とか、鳥山先生の描くデザインって見てるだけでワクワクするんだよなぁ。
いやホント、日本サブカル史上最高のセンスといっていいと思う。
で、これをちゃんと再現できた東映アニメーションの実力もかなり凄いのよ。
それに加えて、今はあの3DCG技術だろ?
つくづく思うんだが、これは歴史ある老舗、そして資本力ある最大手としての地力がなせる業よね。

ただ問題は、鳥山先生を失った今後においても「ブロリー」や「スーパーヒーロー」で見せたあのクオリティを維持できるか否か、ですよ。


今後の第22作目には、要注目である。


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